第35話 【地元】潮見工の一ノ瀬、獲ったらしい【育成契約】
【B.ONE】潮見ブルーホエールズ 応援スレ Part57
301 名無しの潮見サポ
補強、二つ出たな
302 名無しの潮見サポ
>>301 リー・ジュノ?
……誰?
303 名無しの潮見サポ
>>302 調べた
韓国人、24歳、アジア枠
KBLで戦力外→東南アジアのリーグ
平均20点
304 名無しの他クラブサポ
おじゃま
東南アジアのリーグの20点は、Bだと8点くらいだぞ
たぶんもっと下
305 名無しの潮見サポ
>>304 それは、まあ、そうだろうな
306 名無しのにわか
すいません
アジア枠ってなんですか
307 名無しの解説役
>>306 指定の国と地域の選手は、外国籍としてカウントしない制度
つまりオンザコートの縛りを受けない
日本人と同じ扱いで、いつでもコートに出せる
308 名無しのにわか
>>307 じゃあ強い外国人を無限に取れるんですか
309 名無しの解説役
>>308 そんなうまい話はない
枠は1つだけだし、指定国に選手が無限にいるわけでもない
あと正直、この枠に本気で金かけてるクラブ、ほぼ無いんだよ
金あるクラブは普通に外国籍を3枚買えばいいからな
310 名無しの潮見サポ
>>309 つまり誰も探してない枠ってこと?
311 名無しの解説役
>>310 まあ、そういうことになるな
……あれ
312 名無しの潮見サポ
>>311 「あれ」ってなんだよ怖い
313 名無しの古参
出た
解説役の「あれ」
314 名無しの潮見サポ
それより本題
一ノ瀬な
315 名無しの潮見サポ
>>314 潮見工の一ノ瀬?
……あー、あの子か
316 名無しの潮見サポ
知ってる知ってる
県大会で40点取って負けたやつだろ
バケモンだよあれ、跳び方が高校生じゃない
317 名無しの潮見サポ
>>316 でもドラフト漏れたじゃん
全チームスルーだぞ
理由、分かるだろ
318 名無しの潮見サポ
>>317 あー……
最後、味方に詰め寄ったやつな
あれ現地で見てた
正直、引いた
319 名無しの他クラブサポ
うちのスカウトも見てたらしいけど
評価「身体S、頭とメンタルD」だったと聞いた
チーム壊すタイプ、って書かれてたって
320 名無しの潮見サポ
>>319 それ拾うのかよ潮見
金ないのに問題児って、いちばんやっちゃいけないやつだろ
321 名無しの潮見サポ
番場の後ろで悪影響とか勘弁してくれ
322 名無しの潮見サポ
ちょっと待て
うちの息子、潮見工なんだけど
323 名無しの潮見サポ
>>322 なんだよ急に
324 名無しの潮見サポ
>>323 いや、あそこのバスケ部な
部員、7人だぞ
325 名無しの潮見サポ
>>324 え
326 名無しの潮見サポ
>>324 7人?
5対5できねえじゃん
327 名無しの潮見サポ
>>326 できねえよ
だから練習、ずっと3対4だって息子が言ってた
顧問も物理の先生で、バスケ素人
328 名無しの潮見サポ
は?
じゃあ一ノ瀬、交代いないってこと?
329 名無しの潮見サポ
>>328 いないな
7人しかいねえんだから、そりゃ出ずっぱりだろ
330 名無しの解説役
……ちょっと調べてくる
331 名無しの解説役
戻った
県大会の記録、遡れるだけ全部見た
一ノ瀬、3年間の公式戦、全部40分出場
1分も休んでない
332 名無しの潮見サポ
>>331 は?
333 名無しの潮見サポ
>>331 3年間?
1分も?
334 名無しの解説役
1分もだ
そして毎試合30点以上取ってる
40分走って、30点取って、それでも負ける
その繰り返しを3年
335 名無しの潮見サポ
……あの
336 名無しの潮見サポ
>>335 なんだよ
337 名無しの潮見サポ
>>336 いや
最後にキレたやつ、あれさ
40分走ったあとの、残り30秒だったんだよな
338 名無しの潮見サポ
>>337 やめろ
339 名無しの潮見サポ
>>337 やめろって
俺、あれ見て「性格に難あり」って書き込んだんだよ、去年の夏
消したい
340 名無しの古参
消さなくていい
俺も同じこと思ったからな
341 名無しの古参
ただ、一つだけ言わせろ
俺たちは、あの10秒を見た
40分は、見てない
342 名無しの潮見サポ
>>341 古参、それずるいって
毎回それやるじゃん
343 名無しの潮見サポ
つーか誰が見つけたんだよ
全チーム見逃してるんだぞ
344 名無しの潮見サポ
>>343 それがな
番場が、潮見工に見に行ったらしい
345 名無しの潮見サポ
>>344 は?
番場が?
346 名無しの潮見サポ
>>345 うちの息子が見てた
番場が体育館に来て、2時間、後輩たちに教えて帰ったって
一ノ瀬には一言も喋らなかったらしい
347 名無しの潮見サポ
>>346 なんだそれ
348 名無しの潮見サポ
>>346 意味わからんけど、めちゃくちゃ番場じゃん
349 名無しの潮見サポ
番場が動いたのか
そりゃそうだよな
生え抜きが地元の子を見つける、いちばん自然な話だわ
350 名無しの潮見サポ
つーか、これ聞いたんだけど
一ノ瀬、就職決まってたらしいぞ
県外の自動車工場
351 名無しの潮見サポ
>>350 蹴ったのか
352 名無しの潮見サポ
>>351 蹴ったんだろ
育成契約で来るって発表出てるし
353 名無しの潮見サポ
……親、どう思ってるんだろうな
うち、造船所無くなってから、県外の工場に就職できるってのは、けっこうデカいんだよ
354 名無しの潮見サポ
>>353 やめろ
そういう話するな
355 名無しの潮見サポ
>>353 いや、でも
それ蹴って、最下位のクラブの育成契約って
月給いくらだよ
356 名無しの古参
だからさ
357 名無しの古参
その分、俺らが行ってやるんだよ、体育館に
358 名無しの潮見サポ
>>357 古参……
359 名無しの潮見サポ
>>357 くっそ
そういうこと言うなよ
360 名無しの潮見サポ
分かった
今週末、行く
焼きいも食う
361 名無しの潮見サポ
つーか、まだ2勝29敗な
362 名無しの潮見サポ
>>361 やめろ
363 名無しの潮見サポ
焼き肉の話していい?
364 名無しの潮見サポ
>>363 まだ早い
その夜、Part57はいつもより長く続いた。
誰も、要実の名前を出していない。
一ノ瀬を見つけたのは番場だ、ということになっていた。生え抜きが地元の子を見つけた。それはこの町の全員にとって、いちばん自然で、いちばん気持ちのいい話だった。
そして――部員が七人だという情報は、最初から、この町にあった。
息子が通っている親が知っていた。顧問が物理の先生だと、みんな知っていた。誰も、それをあの十秒と繋げなかっただけだ。
情報は隠れていなかった。
ただ、誰も数えなかった。
契約書はその日の午前に交わされていた。
一ノ瀬樹。十八歳。育成契約。背番号三十二。
高校の卒業は三月だ。正式な合流は夏になる。
特別指定を使えば、この子は来月から出られた。四十点を取った地元の高校生が、今シーズンの残りに出る。客は間違いなく入る。
要は使わなかった。
つまりこのシーズン、一ノ瀬は一分も試合に出ない。来季もたぶん出ない。
要が買ったのは三年後だった。
夕方、要は二階の通路から練習場を見ていた。
一ノ瀬が来ていた。学生服の上着だけ脱いで、シャツのまま、コートの端に立っている。
番場が、ボールを一つ、その足元に転がした。
要には会話が聞こえなかった。
一ノ瀬が何か言った。番場が答えた。短かった。
一ノ瀬が、もう一度、何か聞いた。
番場は少し黙った。
そして、二言か三言、答えた。
一ノ瀬が立ち尽くしていた。
(……聞こえなくていい)
要はそう思った。
――番場さん。
一ノ瀬は聞いていた。
「なんで、残ったんですか」
番場はボールを拾った。
そして、しばらく、それを見ていた。
「……知らねえよ」
「え」
「気がついたら、十六年経ってた」
一ノ瀬は何も言えなかった。
番場はそのボールを一ノ瀬に投げた。
胸に、ぼす、と当たった。
「お前も、そうなる」
そして番場は、コートの奥へ歩いていった。
一ノ瀬は、そのボールをついた。
体育館に、音が一つだけ返ってきた。番場は、振り返らなかった。
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