↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7億円で、潰れかけのクラブを買いました ~数字しか見えない俺は、誰も数えない選手を集める~  作者: 猫の飼い主
第三章 値段 ―― 安いからです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/164

第35話 【地元】潮見工の一ノ瀬、獲ったらしい【育成契約】

【B.ONE】潮見ブルーホエールズ 応援スレ Part57


301 名無しの潮見サポ

補強、二つ出たな


302 名無しの潮見サポ

>>301 リー・ジュノ?

……誰?


303 名無しの潮見サポ

>>302 調べた

韓国人、24歳、アジア枠

KBLで戦力外→東南アジアのリーグ

平均20点


304 名無しの他クラブサポ

おじゃま

東南アジアのリーグの20点は、Bだと8点くらいだぞ

たぶんもっと下


305 名無しの潮見サポ

>>304 それは、まあ、そうだろうな


306 名無しのにわか

すいません

アジア枠ってなんですか


307 名無しの解説役

>>306 指定の国と地域の選手は、外国籍としてカウントしない制度

つまりオンザコートの縛りを受けない

日本人と同じ扱いで、いつでもコートに出せる


308 名無しのにわか

>>307 じゃあ強い外国人を無限に取れるんですか


309 名無しの解説役

>>308 そんなうまい話はない

枠は1つだけだし、指定国に選手が無限にいるわけでもない

あと正直、この枠に本気で金かけてるクラブ、ほぼ無いんだよ

金あるクラブは普通に外国籍を3枚買えばいいからな


310 名無しの潮見サポ

>>309 つまり誰も探してない枠ってこと?


311 名無しの解説役

>>310 まあ、そういうことになるな

……あれ


312 名無しの潮見サポ

>>311 「あれ」ってなんだよ怖い


313 名無しの古参

出た

解説役の「あれ」


314 名無しの潮見サポ

それより本題

一ノ瀬な


315 名無しの潮見サポ

>>314 潮見工の一ノ瀬?

……あー、あの子か


316 名無しの潮見サポ

知ってる知ってる

県大会で40点取って負けたやつだろ

バケモンだよあれ、跳び方が高校生じゃない


317 名無しの潮見サポ

>>316 でもドラフト漏れたじゃん

全チームスルーだぞ

理由、分かるだろ


318 名無しの潮見サポ

>>317 あー……

最後、味方に詰め寄ったやつな

あれ現地で見てた

正直、引いた


319 名無しの他クラブサポ

うちのスカウトも見てたらしいけど

評価「身体S、頭とメンタルD」だったと聞いた

チーム壊すタイプ、って書かれてたって


320 名無しの潮見サポ

>>319 それ拾うのかよ潮見

金ないのに問題児って、いちばんやっちゃいけないやつだろ


321 名無しの潮見サポ

番場の後ろで悪影響とか勘弁してくれ


322 名無しの潮見サポ

ちょっと待て

うちの息子、潮見工なんだけど


323 名無しの潮見サポ

>>322 なんだよ急に


324 名無しの潮見サポ

>>323 いや、あそこのバスケ部な

部員、7人だぞ


325 名無しの潮見サポ

>>324 え


326 名無しの潮見サポ

>>324 7人?

5対5できねえじゃん


327 名無しの潮見サポ

>>326 できねえよ

だから練習、ずっと3対4だって息子が言ってた

顧問も物理の先生で、バスケ素人


328 名無しの潮見サポ

は?

じゃあ一ノ瀬、交代いないってこと?


329 名無しの潮見サポ

>>328 いないな

7人しかいねえんだから、そりゃ出ずっぱりだろ


330 名無しの解説役

……ちょっと調べてくる


331 名無しの解説役

戻った

県大会の記録、遡れるだけ全部見た

一ノ瀬、3年間の公式戦、全部40分出場

1分も休んでない


332 名無しの潮見サポ

>>331 は?


333 名無しの潮見サポ

>>331 3年間?

1分も?


334 名無しの解説役

1分もだ

そして毎試合30点以上取ってる

40分走って、30点取って、それでも負ける

その繰り返しを3年


335 名無しの潮見サポ

……あの


336 名無しの潮見サポ

>>335 なんだよ


337 名無しの潮見サポ

>>336 いや

最後にキレたやつ、あれさ

40分走ったあとの、残り30秒だったんだよな


338 名無しの潮見サポ

>>337 やめろ


339 名無しの潮見サポ

>>337 やめろって

俺、あれ見て「性格に難あり」って書き込んだんだよ、去年の夏

消したい


340 名無しの古参

消さなくていい

俺も同じこと思ったからな


341 名無しの古参

ただ、一つだけ言わせろ

俺たちは、あの10秒を見た

40分は、見てない


342 名無しの潮見サポ

>>341 古参、それずるいって

毎回それやるじゃん


343 名無しの潮見サポ

つーか誰が見つけたんだよ

全チーム見逃してるんだぞ


344 名無しの潮見サポ

>>343 それがな

番場が、潮見工に見に行ったらしい


345 名無しの潮見サポ

>>344 は?

番場が?


346 名無しの潮見サポ

>>345 うちの息子が見てた

番場が体育館に来て、2時間、後輩たちに教えて帰ったって

一ノ瀬には一言も喋らなかったらしい


347 名無しの潮見サポ

>>346 なんだそれ


348 名無しの潮見サポ

>>346 意味わからんけど、めちゃくちゃ番場じゃん


349 名無しの潮見サポ

番場が動いたのか

そりゃそうだよな

生え抜きが地元の子を見つける、いちばん自然な話だわ


350 名無しの潮見サポ

つーか、これ聞いたんだけど

一ノ瀬、就職決まってたらしいぞ

県外の自動車工場


351 名無しの潮見サポ

>>350 蹴ったのか


352 名無しの潮見サポ

>>351 蹴ったんだろ

育成契約で来るって発表出てるし


353 名無しの潮見サポ

……親、どう思ってるんだろうな

うち、造船所無くなってから、県外の工場に就職できるってのは、けっこうデカいんだよ


354 名無しの潮見サポ

>>353 やめろ

そういう話するな


355 名無しの潮見サポ

>>353 いや、でも

それ蹴って、最下位のクラブの育成契約って

月給いくらだよ


356 名無しの古参

だからさ


357 名無しの古参

その分、俺らが行ってやるんだよ、体育館に


358 名無しの潮見サポ

>>357 古参……


359 名無しの潮見サポ

>>357 くっそ

そういうこと言うなよ


360 名無しの潮見サポ

分かった

今週末、行く

焼きいも食う


361 名無しの潮見サポ

つーか、まだ2勝29敗な


362 名無しの潮見サポ

>>361 やめろ


363 名無しの潮見サポ

焼き肉の話していい?


364 名無しの潮見サポ

>>363 まだ早い



その夜、Part57はいつもより長く続いた。


誰も、要実の名前を出していない。


一ノ瀬を見つけたのは番場だ、ということになっていた。生え抜きが地元の子を見つけた。それはこの町の全員にとって、いちばん自然で、いちばん気持ちのいい話だった。


そして――部員が七人だという情報は、最初から、この町にあった。


息子が通っている親が知っていた。顧問が物理の先生だと、みんな知っていた。誰も、それをあの十秒と繋げなかっただけだ。


情報は隠れていなかった。


ただ、誰も数えなかった。



契約書はその日の午前に交わされていた。


一ノ瀬樹。十八歳。育成契約。背番号三十二。


高校の卒業は三月だ。正式な合流は夏になる。


特別指定を使えば、この子は来月から出られた。四十点を取った地元の高校生が、今シーズンの残りに出る。客は間違いなく入る。


要は使わなかった。


つまりこのシーズン、一ノ瀬は一分も試合に出ない。来季もたぶん出ない。


要が買ったのは三年後だった。



夕方、要は二階の通路から練習場を見ていた。


一ノ瀬が来ていた。学生服の上着だけ脱いで、シャツのまま、コートの端に立っている。


番場が、ボールを一つ、その足元に転がした。


要には会話が聞こえなかった。


一ノ瀬が何か言った。番場が答えた。短かった。


一ノ瀬が、もう一度、何か聞いた。


番場は少し黙った。


そして、二言か三言、答えた。


一ノ瀬が立ち尽くしていた。


(……聞こえなくていい)


要はそう思った。



――番場さん。


一ノ瀬は聞いていた。


「なんで、残ったんですか」


番場はボールを拾った。


そして、しばらく、それを見ていた。


「……知らねえよ」


「え」


「気がついたら、十六年経ってた」



一ノ瀬は何も言えなかった。


番場はそのボールを一ノ瀬に投げた。


胸に、ぼす、と当たった。


「お前も、そうなる」



そして番場は、コートの奥へ歩いていった。


一ノ瀬は、そのボールをついた。


体育館に、音が一つだけ返ってきた。番場は、振り返らなかった。

――最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

続きが気になったら、ブックマークしていただけると嬉しいです。

ページ下の★評価も、続きを書く力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。