第145話 二つ足りない
三月からの十二試合で、潮見は四つ勝った。
四十六試合で二十二勝。そこから二十六勝まで来た。
残りは二試合だった。
プレーオフに出られるのは、二十五クラブのうち十六だった。五つの地区の上から二つずつで十。残りから成績の順に六つ。
潮見は十七位にいた。地区では四番目で、残りの六つの枠の一つ外だった。
最後の一枠との差は一ゲーム。二年前は二十四位だった。その二十四位が最後の一枠の一つ下まで来ていた。
「計算だけ、しておきます」
和久井蒼が言った。
「残り二試合を全部勝っても、最後の一枠のクラブが二つ勝てば、届きません。あちらの残りも二つで、どちらも下位が相手です」
「……」
「今週末には、たぶん、決まります」
和久井はそれをいつもの声で言った。届かないという計算を、届く計算と同じ声で言った。数字はどちらも同じ重さで扱う。それがこの人だった。
その週末に決まった。
最後の一枠のクラブが二連勝した。
潮見は二試合を残して、十六から数字の上で消えた。
翌日の練習はいつも通りだった。
選手は落ち込んでいなかった。二年前、このクラブは二十四位だった。去年は十九位だった。今年は十七位だ。
上がっている。それは全員が分かっていた。落ちるところから上がってきた者は、上がっていることの手ざわりを順位表より先に知っている。
コーチ室で要実は郷田学と二人になった。
郷田はしばらく紙を見ていた。それからこう言った。
「悔しいな」
要は顔を上げた。
「……はい」
「おかしいだろ」
郷田は言った。
「二年前、俺は十勝で終わった。二十四位だ。あんとき、悔しくなかった。悔しがる資格がねえと思ってた。駒が無えんだから、当たり前だってな」
郷田は紙を裏返した。
「今年は、悔しい」
郷田は言った。
「二つだ。二つ足りなかった。……足りなかった、って言えるところまで来ちまった」
足りなかったと言えること。それは届く手前まで来たということだった。二十四位のときは、何が足りないのかも言えなかった。全部足りなかったからだ。今年は二つだった。二つと数えられるところまで来ていた。
要はその言葉をしばらく聞いていた。
「郷田さん」
「なんだ」
「来年は、届きます」
「知ってる」
郷田は言った。
「だから、悔しいんだよ」
今季、潮見はあるクラブに二度負けている。
B.ONEの上位のクラブだった。去年の夏、要が東欧まで見に行った選手を、倍の額で攫っていったところだった。
エミル・ノヴァクは二度とも出ていた。二十分以上コートにいた。要が値をつけて、そのせいで値がついた選手が、要より上のコートで二十分立っていた。
一度目のあと、要のところに通訳を通して短い伝言が来た。
まだあなたのところとは、やっていない気がする。
意味は要にも分かった。二度当たって、二度とも潮見はノヴァクの前に立てていなかった。ノヴァクの言う"やっていない"は、そういう意味だった。同じコートにまだ立てていない。あの日、体育館の裏で握った手とは、まだ当たっていなかった。
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