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7億円で、潰れかけのクラブを買いました ~数字しか見えない俺は、誰も数えない選手を集める~  作者: 猫の飼い主
第八章 市場 ―― 全員、降りてます

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101/166

第101話 【朗報】うちら、二年ずっとハンデ戦してた?【外国籍】

九月下旬。開幕。


体育館の裏で、要は選手が出ていくのを見ていた。マーカス・レイは、最後から二番目だった。膝に、テープが二重に巻いてある。宮里がそこを一度だけ手で押さえた。レイは何も言わずに通路へ出た。



第一クォーターの最初の交代だった。


郷田が三人の名前を呼んだ。


ダリオ・サントス。マーカス・レイ。李濬浩。


三人が同時にコートに立った。



相手のベンチが動いた。


要にはその動きの意味が分かった。去年まで、潮見と当たるクラブは、ゴール下のサントス一枚に二人を当てておけばよかった。潮見の外には脅威がいない。中を潰して、外へ回して、また中へ回す。その往復で潮見は崩れてきた。二年間、ずっとだった。


今日は、その一枚が、消えていた。


レイがゴール下に立ち、サントスが一歩外へ出る。相手が中へ入ろうとすると、二人が同時にそこにいる。外へ回すと、李濬浩が走って戻っている。



第二クォーターの半ばに、要が気づいたことが一つあった。


東悠真が二人ぶん走っていなかった。


去年まで、外の穴を埋めていたのは東だった。中が抜かれれば東が戻り、外が空けば東が出る。第四クォーターの東の足が止まるのを、要は二年、見てきた。


今日の東は自分の相手の前に立っているだけでよかった。それだけで足りていた。



点差は第二クォーターに開いた。


そして、そこから縮まらなかった。


派手な逆転はなかった。ブザーの前の一本もなかった。相手が追い上げようとするたびに、内と外のどちらかで止まる。十二点差が、十四点になり、十点になり、また十三点になる。


そういう試合を、潮見はこの二年、一度もしたことがなかった。



最終スコアは七十八対六十五だった。


三千二百人が入っていた。屋台は売り切れていた。試合後のコートで、一ノ瀬樹が子どもを並ばせて、かけっこの列を作っていた。宇野匠がその隣で笛を持っていた。


番場剛は、ベンチから立って、コートの五人を見ていた。十八年目の男は何も言わなかった。



【B.ONE】潮見ブルーホエールズ 応援スレ Part83


201 名無しの潮見サポ

開幕勝ち

しかも内容がいい


202 名無しの潮見サポ

なんか今日、殴られてる時間がなかったな

いつもの「中入られて外空いて終わり」が来なかった


203 名無しの通りすがり(にわか)

バスケ詳しくないんだけど

今日って何が違ったの? 選手一人増えただけ?


204 名無しの他クラブサポ

>>203 一人増えたのがでかいのよ

外国籍は同時に2枚、プラスでアジア枠が1枚

合計3人までコートに立てる

うちらは普通に3人立ててる


205 名無しの通りすがり(にわか)

>>204 え、潮見は?


206 名無しの他クラブサポ

>>205 サントスとリー・ジュノの2枚だけ

外国籍の枠が1つ、ずっと空いてた


207 名無しの潮見サポ

……え


208 名無しの潮見サポ

待って

じゃあうち、二年間ずっと

相手3人のところに2人で出てたってこと?


209 名無しの古参

そうだよ


210 名無しの潮見サポ

そうだよ、じゃねえよ

なんで誰も言わないんだ


211 名無しの古参

言ってたよ、ずっと

誰も聞かなかっただけだ


212 名無しの潮見サポ

郷田の采配が悪いって言ってたやつ


213 名無しの潮見サポ

>>212 俺だわ

ごめん


214 名無しの潮見サポ

去年ガルーダに24点差でやられたやつ

あれも枚数か


215 名無しの古参

あれは枚数だけじゃないが

枚数がなきゃ話にならんのも本当だ


216 名無しの潮見サポ

二年ハンデ戦して18勝してたのか、うち


217 名無しの他クラブサポ

それは普通に、監督が有能では


218 名無しの潮見サポ

で、その空いてた枠を今さら埋めたのは誰なんだ


219 名無しの古参

そこは出てこねえよ

いつも通りだ


220 名無しの潮見サポ

どうでもいい報告だが、屋台に唐揚げが増えてた


221 名無しの潮見サポ

>>220 気づいたか


222 名無しの潮見サポ

開幕勝ちの唐揚げはうまい

覚えとけ



その夜、事務室に浜口が来た。


「三千二百でした」


「はい」


「開幕にしては、いい数字です。去年の開幕は、二千七百でしたから」


要はうなずいた。


四千二百と、三千二百。千人ぶんの隙間がそこにあった。


勝ち星はその隙間を一人も埋めない。



「浜口さん。明日、商店街に行きます」


「屋台の話ですか」


「いえ」


要は言った。


「協賛の話です。……去年の三百二十七件を、来月までに、倍にします」


浜口が少し驚いた顔をした。


「倍って。……要さん、あれ、一軒ずつ回って集めた数ですよ。一人でやったら、シーズンが終わります」


「はい。ですから、一人ではやりません」


要は、机の引き出しから、古い名簿を出した。大洋重工が撤退した年の協賛企業の一覧だった。


その一枚目のいちばん下に、担当者の名前が印刷されていた。


蔵本、と読めた。

――最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

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