特別編 りんの生い立ち
りんが何故徳内村まで流れてきたのか、何故蘭語に堪能なのか。
それには、悲しい過去がありました
りんに長崎から手紙が来たと、ふでが持って来た
差し出し人の名前を確認すると、りんの顔が曇った
それを見逃す、ふでではなかった
手紙の内容は毎度の事ながら、ジョーンズが出島に戻ってくる、と言う真偽不明の噂だった
りんは、長崎時代の事を思い出す
りんは泣いて居た。
悔しいのか、悲しいのか自分でも分からない。
可愛いがってくれた、父が去ってしばらくのことだった。
母の辰に連れられて、ある家の門をくぐった。
長崎の豪商の妾宅だった。
浪人の娘だった辰だが、ジョーンズとの生活で覚えた贅沢をもう捨てられなかった。
正妻を亡くし、身の回りの世話をする女が欲しい男に、美貌の辰が現れた。
半分善意だったのかもしれない。
そんな事は、幼いりんには関係の無い事だった。
早くここを出たい、口に出さなくてもそんな態度が伝わって居たのだろう。
商人は、蘭方医が女中を探している事をりんに告げた。
りんが数えで十の時だった。
蘭方医の大月良庵の家で、りんは久しぶりに解放されたきもちになった。
良庵は、出島で生きて行くのなら必要だろうと蘭語を教えてくれた。
そんな時、幼馴染の通詞の子と会い、自分の父がどうやらオランダ人では無く、スコットランドと言う国の出らしいと知る。
ある日良庵から、
「りんさえ良ければ、蘭語の分かる者を探している商人がいる。」
「遠いとこだけど行くかい?」
と聞かれた。
良庵と分かれるのは悲しいが、それよりも辰と別れたかった。
良庵にも、母親から離れたがっているのを、感じとられて居たのだろう。
まだ幼いが、賢いりんを惜しんで良庵は貸すだけだよと、商人に伝えた。
それから、半年後北前船で箱館に向かうりんの姿があった。
りんが数えで十三の時だった。
障子の外からゆいの声
「入りますよ」
りんは、その声で我に返った
入ってきたゆい、キリリとした口調で
「ふで殿から、何やら様子がおかしいと聞いてきました」
声とは裏腹に、心配げに、りんを見る
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