本間家の要望
矢張り、本間家は箱館・小樽の限定開港に気付いていたようです
しかし、要求はそれだけでは終わりそうにありません
本間家の番頭との面会の前、島本屋と高田屋は打ち合わせをした
まず間違いなく、箱館と小樽の件だろう
相手の要求をどこまで聞くか、両者の合意はできた
指定の料亭に行くと、本間家の番頭は先に到着していた
面談の座敷の襖を開けると、本間家の番頭は深く礼をしながら口上を述べた
「本来であれば、当主が伺い挨拶すべき事ですが失礼致します。」
「ご存知の通り、当主は御用がありますので酒田を離れるわけには参りません。」
「本日は代理として、本店番頭を務めます吉助がお相手願います。」
いきなり、丁寧な挨拶
むしろこっちの方が怖い
高田屋、島本屋それぞれ挨拶を済まして
島本屋
「して、今日は何のご用で?」
番頭
「箱館と小樽の支店を、株仲間に加えていただきたく。」
島本屋
(うちと高田屋が小樽では支店が組合に入っているのも知っているのか)
「急な申し出で驚いております。」
「本間様ほどのお店が、何故わざわざ辺鄙な港の組合にお入りくださるのか?」
番頭
「ご謙遜が過ぎます。」
「近頃のご発展ぶりは、私も目に入れて参りました。」
島本屋
(調べはついているという事か)
「お言葉は光栄ですが、仲間入りという事ですと、私と高田屋の二人だけでは決めかねます。」
「改めて、願書などをお出し願いできますか。」
番頭
「ありがとうございます。」
と言って懐から願書を出す
「これをお納めください。」
島本屋
「非礼ながら、ここであらためてもよろしいですか?」
番頭
「ご随意に。」
高田屋と、島本屋頭を寄せて願書を確認する
ほぼ、予測の通りだった
目で合意して、番頭に向き合う
「ご意向、確かに承りました。」
「早速、株仲間に伝えます。」
番頭
「どうぞ、よしなに。」
やれ終わったかと思った時
番頭
「これは島本屋様にも関係がありますが、高田屋様に一つお願いがあります。」
「酒田まで、定期船を走らせていただけないでしょうか?」
高田屋、島本屋の目に緊張がはしった
番頭
「ご両者の船に、西洋性の羅針盤、六分儀など備えられたとか。」
「これは、冬の間の航行の準備かと。」
「もし酒田までお願いできれば、風除け地含めた海図を提供させていただきます。」
番頭
「当面は夏の間の、月一回の往復で始めさせていただければ。」
島本屋
(ここまで調べられたら、拒否はできないな)
高田屋
「……」
「それでは、詳しい話は船頭の頭同士でお願いします。」
箱館・小樽に向けて、日本指折りの豪商が動いた
それは、世界に向けて日本全体が動き始めた事を意味した
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