第98話
新章突入。
タケル達は旅の道中に立ち寄った国にて、一息の休息を取っていた。
そして宿の一室にて、タケルとアンリエットは2人切りで話していた。
「思ったんだけどさ、国同士での話し合いって、ちゃんとやってるの?」
「えぇ、まぁ。有事の際の協力以外にも、近隣の情報の共有に技術提供に異文化交流、後、縁談に戦時中における会談等をやってますよ」
「やっぱり不安だな…」
「と、言いますと?」
「いや、僕達が魔王を倒した後の事を考えるとさ、どうしても不安になっちゃうんだよ。資源の問題とか、悪徳貴族の悪巧みとか、文化や種族の違いとかで発生する口論とか」
「あっ…」
「だからさ、そこら辺の問題の対応策の為に、何年かに一度で良いから、大規模な会議を開くべきだと思うんだよ。勿論、中立的な国の人が議長を務めて、あらゆる問題点や妥協案を炙り出して、そしてそれぞれの納得のいく形で話をまとめて、今後の国の運営に役立てる。そうして行けば、全ての国がちゃんと手を取り合って行ける筈だよ」
「…そうですね。それについては私も失念しておりました。分かりました。私の方でも城に戻ったら、そこら辺をちゃんとお父様に進言しておきます」
「助かるよ」
その場面を最後に、エミリアは列車の座席で目を覚ます。
「…500年前の記憶。成程、タケルとアンリエットの心配から、あの会議が設立された訳ね」
「どうやら、今回のアンリエットの記憶はそれみたいだな」
「何の話だ、アラタ?」
「エミリアは去年の夏から、前世であるアンリエットの記憶を夢で見る様になったとの事で…」
「あら、そうなの?まさか私達の娘が、500年前の勇者を支えた姫の生まれ変わりだなんて」
「俺の方も、500年前の勇者タケルの生まれ変わりとの事で。俺だって聞かされた時は驚きましたよ」
「皆さ~ん!外見て下さい!もうすぐ着きそうですよ~!」
と、ユフィの声につられて窓の外に目を向けると、目的地が見えてきたのだった。
「あれが中立国、ファルマータ共和国か…」
「えぇ、国同士の諍いでも中立の立場で仲裁、国家間での裁判等でも必ずこの国に声を掛ける程の信頼が置かれている。そして、評議会の会議の場としても長く信頼されている国よ」
「ファルマータが見えてきた!皆、そろそろ下車の準備をしてくれ!」
『はっ!』
「エミリアちゃん、カイト君、お姉ちゃん達も色々付き合ってあげるからね!」
「ほら、フィーナ!貴方も早く鞄の中に戻って!」
「は~い!」
こうして一同は、ファルマータに降り立つ事となった。
ファルマータに降り立った一同は、会議場の手配した馬車に乗って、会議場へ向かうのだった。
そして辿り着いたのは、共和国の中心であるファルマータ宮殿だった。
「あの場所に各国の王族が集まるのか…」
「王族が主体となって統治する王国と違って、共和国は民主制によって成り立っているからね。だから常に国民の意見に耳を傾ける政治であるこの国が会議の場として選ばれるのよ」
「そろそろ到着だ。皆、下車の準備を」
宮殿に着いた事で一同は馬車から降りて、宮殿内部へ足を進めるのだった。
「宮殿の中に入ったら、自分達の部屋の確認を済ませておくぞ。そしたら、代表者である父上は会議場、他の者達は憩いの場を中心に過ごす事になる」
「会議は代表者だけで良いの?王族全員でこの国に来てるのに?」
「憩いの場だって大事な事よ。会議で国の情勢や起きた事件の整理等をやっている間、同行していた者同士でも他愛ない話題で情報交換もやっておくのよ。いくら王族でも細かい話題まで手が届きにくいからね」
「そう言う事ですので、お互いお茶でも飲みながら言葉を交わしていきましょう」
と、声のした方を振り向くと、そこにメリアとゼシカとデューク、そしてフィルビアの騎士達がいた。
「フィルビアの皆さん、もう来てたんですか?」
「えぇ、30分程前に」
「これはこれはメリア女王、お久しぶりです」
「そちらこそ、お変わりない様で」
「皆さん、荷物をまだ部屋に置いてないんでしょう?後ほど、憩いの場でお集まり致しましょう」
ゼシカもこう言った為、一同も一度アルテミシア用の部屋に行っておくのだった。
荷物を一旦部屋に置いたエミリア達も憩いの場に向かっていた。
そこには既にゼシカを始めとする多くの来客が集まっていた。
「エミリア王女、お前達に会うのは交流会以来だな!」
「えぇ、そうですね。でも、私もあの時より更に強くなってますよ、ゼイン王子」
「俺とミーシャだって、更に磨きが掛かっているぞ」
「もう、フリードお兄様ったら!」
ゼシカはミコノが目を逸らして顔を伏せている事に気付く。
「あら、どうしましたかミコノ王女?何か気まずそうな空気を出してますが?」
「別に何でもいいでしょう…」
「もしかして、この中で胸の大きさが最下位なのを気にしているんですか?」
「やかましいわ!アンタも綺麗な顔してサラッと毒を吐くんじゃないわよ、ゼシカ王女!」
「ちょっ、姉さん落ち着いて!」
と、暴れ出すミコノをイクトが抑える。
そしてゼインはエミリアの持っている剣が変わっている事に気付く。
「…ん?エミリア王女、その剣、前見た時とは違う物の様だが?」
「あっ、これは…」
「成程。それが例の聖剣エクスカリバーですか」
「知ってるのか、ゼシカ王女?」
「えぇ。そちらの星空の勇者の持つ聖剣デュランダル同様伝説の武具の1つです」
「マジか!?エミリア王女、俺達の知らない所で凄い物を手に入れてたんだな!」
「アンタら、ガチの最強カップルになったって事!?」
「姉さん、声大きいって」
「えぇ。って言っても、私もアラタも、まだまだ上へ登り続けるつもりだけどね」
「あらあら。私達の見てない所で、凄い物を手に入れてた様ですね」
と、エミリア達に声を掛ける者達だっていた。
「サーシャ王女!やっぱり貴方のお父様も会議に出るのね!」
「えぇ、一応」
「うちの王様だって参加するよ!」
「リーンさん、ファンさん!って事はアレックス陛下も?」
「うん!数々の功績が認められて、うちの国も公認になったからね」
「それは我々も喜ばしい事です」
「平助さんとフレアさんも!」
「魔族領も公認になっているから、当然の事だ」
「あらあら。これはこれは随分と賑やかな事でして」
と、黒の修道女風のドレスを着た金髪でつり目の女性が現れる。
「お初の方々の為に、私も名乗らせて頂きます。私はフォルソス皇国第1王女、レティシア・フォン・フォルソスです。初めましての方も、以後、よろしくお願いいたします」
レティシアがカーテシーでお辞儀をする中、カイトがエミリアに耳打ちする。
「姉さん、フォルソスって…」
「えぇ、前にトウヤから聞いた宗教国家よ」
「エミリア王女とお付の剣士様、何かございましたの?」
「あっ、いえ、何も!」
「さて、同行者については、憩いの場以外にも過ごし方は色々ありますし、私も顔見せを済ませた以上、私も一度お暇させて貰います。それでは皆さん、ごきげんよう」
と、レティシアは憩いの場を静かに去っていき、その後ろ姿をゼシカは見つめていた。
「…ねぇ、レオニーさん」
「何だ?」
「あの方、何だか胡散臭く感じません?」
「それはアタシも考えてた事だが…」
「あの国は色々と黒い噂を聞きますし、証拠を押さえたら、城ごと爆破して花火を上げていいのではないでしょうか?」
「何綺麗な顔して、どっかの宇宙の帝王みてぇな事言ってやがんだ?そしてお付も何頷いているんだ?そっちもイケメンから悪人丸出しのブサイク面に強化変身する側近みたく思えてきたんだが?」
「成程、変身…。私も極寒の戦姫も後2段階変身出来る様にして、更にそこから黄金色に…」
「おい、やめろ」
ファルマータ宮殿、廊下
レティシアは1人で考え事をしながら歩いていた。
「今宵もこの時がやって来ましたか…。しかし、アルテミシア側には本当に驚かされました。陽光の姫君エミリア・フォン・アルテミシアはSランク冒険者になっただけでなく、かの聖剣エクスカリバーを手に入れ、既に聖剣デュランダルを手に入れている星空の勇者アラタ・ホシミヤとも仲睦まじく交際しているとは。しかも2人共かの組織からも一目置かれる程の強さを有している。さて、我々フォルソスも、流石に危うくなるかもしれませんね…」
レティシアもそう言いながら、宮殿の奥へと消えて行った。
こうしている間にも、会議の開始の時は迫っていくのであった。
ファルマータ編開幕。




