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第97話

前回の決闘の後日談。

 アルテミシア城、エミリアの執務室

 エミリアは現在、自身の机の上でうつ伏せになっていた。


「どうしたの、姉さん?凄く落ち込んでいるみたいだけど?」


「昨夜の決闘の件でアルベルトお兄様とアルフォードお兄様に凄くどやされて、小規模とは言え環境破壊をやらかした事で始末書を書かされ、更にドレスをボロボロにした事でティティアにもどやされる事になったのよ。そりゃあ私だって色々悪かったとは思ってるわよ。でも、凄く凹む事には変わりないじゃない」


「あ~、それでエミリアも無断で決闘した事で3日間謹慎しながら書類整理、新しいドレスが出来上がるまで冒険者活動も休業って話になっちゃったんだっけ?」


「それで俺もしばらくエミリアの補佐をする羽目になった。まぁ、こればかりは仕方ない」


「まぁまぁ、3日なんて直ぐなんだから、気持ちを切り替えて、書類を片付けていこう!」


「…そうね。取り敢えず、これを片付けておかないと…」


 エミリアもそう言いながら顔を上げて、書類整理に取り掛かるのだった。




 夜、エミリアの自室

 仕事を終えたエミリアは、テーブルで一息付いていた。


「ふぅ、漸く一息付ける」


「失礼します、エミリア様」


 と、エミリアのスカートの中を覗こうとしているリオンの顔を、エミリアはヒールで踏み抜き、リオンの顔面をめり込ませる。


「ちゃんとノックしてから入りなさい…!後、何私のスカートの中を覗こうとしているの…!?」


「いえいえ、お仕えする姫様のパンツを確かめるのもメイドの務めですので」


 エミリアも足をどけて、リオンも立って姿勢を正した。


「エミリア様、先日のパーティーの入城記録を持ってきました」


 と、リオンは書類をエミリアに手渡す。


「ありがとう」


「後、エミリア様の言ってた銀髪の女性ですが、受付を担当していた者は知らないと。いえ、正確には居た筈だけど、何故か思い出せないと言った具合でした」


「大方、身に着けていたアクセサリーの中に、認識阻害の魔道具もあって、それを受付に対して使う事で、自分と一緒にいた人間の事も探られない様にしたと言う事ね」


「つまりエミリア様は、その女性の侵入を手引きした者がいるとお考えなのですか?」


「あの日、多くの貴族が来場する都合上、城周辺には多くの警備兵が配置されていた。更にあの時、ジルティナはドレスを着ておめかしをした上で堂々と会場に居座っていた。来場していた貴族の中に彼女の侵入を手引きした者がいるとしか考えられない。それも偽造の身分証まで手配出来る程の。…誰かの同伴で入って来たのは確かね。そこら辺を特定させない辺り、本当に抜け目ない」


 エミリアは書類をテーブルに置いてリオンに向き直る。


「ご苦労様。もう下がって良いわよ」


「かしこまりました。…では、ご褒美として、そのおっぱいを…!」


 エミリアは有無を言わさず、リオンを部屋から叩き出した。




 それから時は流れ、エミリアも晴れて謹慎が解けて、ティティアからも新しいドレスを受け取っていた。


「はい、新しいドレスです」


「ありがとうね。これで私も冒険者活動を再開出来るわ」


「全く、一体どういう戦闘をしたら、ドレスがあんなボロボロになるんですか!?」


「本当にごめんって。私もそれ程の強敵と戦ってたって事だから」


「そりゃあ、そこまでの相手なら仕方ありませんが、あんまりやらかさないで下さいね!」


「分かってる、分かってるから!でもこれで私も今後の活動が出来る様になったわ」


「エミリア様、もしかして夏休みの予定でも入っているんですか?」


「えぇ、実は来月に公務で王族総出で出張する事になってるのよ。それで私も、第1王女兼Sランク冒険者として、このドレスを着ておきたいのよ」


「王族総出で?留守中の政務についてはどうなるんですか?」


「そこら辺は抜かりないわ。文官や財務官とかの腕前だって確かだし、信頼もしてる。しばらく私達がいなくても、ちゃんと政務は回せるわ」


「けど、王族全員である以上は警護の騎士くらいは必要でしょう?」


「第1騎士団は勿論の事、アラタ達だって連れていくわよ、私の恋人とパーティーメンバーである以上は」


「アルフォード1番隊隊長率いる第1騎士団だけでなく、勇者の血族の彼氏に第1王女お控えのAランク冒険者達。ここまでやれば、警備は万全ですね、そりゃあ」


「そう言う事。それじゃあ、ドレスありがとう。もう帰って良いわよ」


「はい。それじゃあ、失礼します」


 そう言ってティティアはその場から去っていった。


「…さて、先ずは溜まってる書類を粗方片付けておかないと。そしたら出張の為の荷造りね」


 そう言ったエミリアも執務室の机に戻り、書類整理を再開するのだった。




 夜、エミリアの自室

 エミリアは現在、出張の為の荷造りをやっている最中だった。


「王族全員で出張だなんて、それ程の行事があるって事?」


「えぇ。今年は各国の王達による定例会議があるからね。各国の王族が評議会に来日し、近況を報告し合って、前の議会から今までに起きた問題についての対応策も出すの。まぁ、議会については、代表の王達だけで執り行われるし、同行して来た人達については、会議場の外での交流が主な行動になっている。これも今後の公務の為に必要な事だからね」


「成程ね~。要するに、それぞれの国で近況報告するだけでなく、腹の内を探り合い、後ろめたい事があるかどうかも見定める、お互い笑顔で足を踏んづけ合う腹黒会議って訳ね?」


「言い方!後、フィーナが思ってる様な人達ばかりじゃないから安心しなさい!」


「は~い!…って事は、うちの国王様も"天の笛"の事を喋る気でいるの?」


「流石にそれはないわよ。"天の笛"の事は信憑性が低い事案である事に変わりはないし。何より、最悪の場合、各王城内部あるいは王族の中に組織の人間がいる可能性も否めない。だからこそ、情報漏洩を避ける為に、奴らの撲滅に協力的な人間だけに留めておかなくちゃならない。ここら辺の話、前にちゃんとした事あったでしょう?」


「分かってるわよ、それくらい。そんじゃあアタシも、為政者達のグダグダ会議を見守らせてもらいましょうか~」


「だから言い方!そして、フィーナが考えてる様な事はないんだってば!」


 こうして、エミリアも入念なチェックをしながら、荷造りを進めるのだった。




 そして時は流れて8月頭、アルテミシア王族は会議場へ向かう為に駅に来ていた。


「アルフォード、お前達も護衛、よろしく頼むぞ」


「お任せ下さい、アルベルト様!」


「アラタもありがとうね、来てくれて」


「いや、これくらいはお安い御用だ。王族の護衛も、Sランク冒険者の立派な務めだ」


「姉さんのパーティーメンバーである僕達は良いとして、レオニーも来るんだ?」


「そりゃあ、アタシも王族お控えの暗部だからな。見えない所にも手を回せる様にしておかないと」


「で、何でお前達までいるんだ?」


 と、アルフォードも近くのシャーリーとネムに声を掛ける。


「嫌だな~アルフォード君。幼馴染なんだから、釣れない事言わないでよ~」


「そうですよ!私達だって皆の護衛を手伝いますよ!」


「…はぁ~。くれぐれも問題だけは起こさないでくれよ」


「家族皆でお出かけ!私もこの日を待ち遠しくしてました!」


「うふふ。そうね、ユフィ。お父様とお母様も、中々外での時間を作ってくれないものね」


「耳が痛いな…。では、我々もそろそろ列車に乗るぞ」


 こうして、オズワルドの号令の下、一同は魔導列車に乗り込んで行く。


「わーい!旅行の始まりで~す!」


「ちょっ、ユフィ!気を付けないと転ぶわよ!」


「総員、列車に乗り次第、配置に着け!」


『はっ!』


「アタシらも行きますか」


「そうだね」


 そして皆を乗せた列車は、駅を出発していった。

 さて、今年の大規模会議はどうなるのかは、今後の展開次第である。

王達の会議へ!

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