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第92話

ジルティナの過去が語られる。

 18年前、ヤードガン帝国

 この国では、日々小国との小競り合いが絶えず、紛争地域と化していた。

 それ故に、人々は戦争の被害に怯え、生活も皆ギリギリの状態であり、食い扶持を稼ぐ為に、少年兵が駆り出される事も珍しく無かった。

 そんな中、7歳の黒髪の少年が敵兵に殺されそうになってる所を担当教官が助ける。


「き、教官…。ありがとうござ…」


「馬鹿者!自分と相手の力を見誤れば、それが死に繋がる!ちゃんと自分を鍛えて、戦術を勉強して、背中を預けられる戦友を作れ!」


「す、すみません…」


「もういい!とっとと休んで、次の訓練に備えておけ!良いな、ジル!」


 怒鳴り散らした教官が去っていき、ジルもトボトボと去っていく。

 そして辿り着いた廃屋の民家にて、7歳の銀髪ショートヘアーの少女が出迎えた。


「お帰りなさい、ジル!」


「ただいま、ティナ」


「で、お仕事どうだった?」


「今回も駄目だった。考えなしに突っ込んだ事で教官に怒られた」


「そっかぁ…。でも、大丈夫だよ!きっと次なら上手くいくから!」


「ハハッ…。ありがとう、ティナが慰めてくれるお陰で僕も頑張れるよ」


「フフッ、どういたしまして。さっ、今は一緒にパンを食べよう!」


 こうして2人は木箱を挟んで、配給されたパンを食べるのだった。


「…ねぇジル、この国が平和になったら何やりたい?」


「えっ?何急に?」


「私ね、何時か色んな国に行って、色んな物を見てみたいんだ~!セフィア王国でスポーツ観戦でしょ?メルティ王国でアイドルをやってみたいな~!ブレジアン王国で武術、フィルビア王国で魔法の勉強もやってみるのもいいかも!で、長く住むならアルテミシア王国が良い!あそこって、色んな人達が仲良く暮らしてるんでしょう?そこでなら、今みたいに戦争に怯える心配もなく、楽しく暮らせるよね!?」


「でも、この国から戦争が無くなるなんて有り得ないよ。ただでさえ、皆ギリギリな状態なんだし…」


「だったら、ジルが戦争を終わらせてよ!ジルが皆を守れるくらい強くなって、色んな戦場を直ぐ止める事が出来るくらいに!ね?そうでしょう?」


「…そうだね。そこまで言うなら、僕も強くなる!ちゃんと訓練頑張って、戦術も勉強して、1人でもいっぱい成果を出せる様な兵士になってみせる!そして戦争も終わらせる!」


「そしたら、一緒に旅に出て、アルテミシア王国で一緒に暮らそう!約束!」


「うん、約束!」


 と、ジルとティナは指切りを交わすのだった。




 それから3年、ジルはメキメキと力を付けて、多くの実績を残せる様になり、少年兵達の注目の的となった。

 そしていつもの様に戦場から帰ったジルは、ティナの下へ帰って来ていた。


「お帰りなさい、ジル!」


「ただいま、ティナ。今日は肉を貰って来たよ!」


「わーい!ご馳走だ~!」


 そしていつもの様に木箱を挟んで、2人はステーキにかぶりつくのだった。


「それで、どう?そろそろ戦争終わりそう?」


「そうだね。僕達もかなりの戦果を出しているし、周りもこれ以上の戦いは不毛に思ってくれて、停戦協定にまで持ち込む事が出来たって教官も言ってた」


「そうなんだ~!それじゃあそれじゃあ、そろそろ約束の旅が出来そうだね!」


「そうだね。でも、僕達世間知らずだし、悪い大人にカモられそうで怖いな…」


「大丈夫!その時はジルが守ってくれるんでしょう?私も料理や家事をやってあげるから!」


「ハハッ、それは良いね。その時は僕も是非…」


 と、その時、遠くから爆音が響いて、2人も何かと思って表に出る。

 そしたら、町の周辺に火の海が回っており、そこに1人の少年が駆けつける。


「ジル、ティナ!お前ら無事だったのか!早く逃げろ!」


「一体何が…?」


「市民の暴動だ!長い戦争で彼らの不満も溜まっていて、今回の停戦の話で、それが爆発した!巻き込まれた市民達だって、皆簡単に割り切ってくれる訳じゃないからな!お前らも早く逃げ…!」


 と、その時、少年が暴徒に背後から刺され、それに恐怖したジルもティナの手を取って逃げ出す。


「ティナ、こっちに!」


「う、うん!」


 そして2人は、丘の上で燃え盛る町を見下ろす。


「酷い…!」


「大丈夫だ、ティナ!僕が絶対に守…!」


 と、その時、予想してなかった騒動で注意力が散漫になったジルが背後の暴徒に石で殴られ、ジルも頭から血を流してその場に倒れる。


「ジル!?ジル!しっかりして、ジル!」


 ジルに呼びかけるティナを別の暴徒がナイフで背中を刺し、ティナもジルの傍に倒れる。


(クソ!僕がティナを守るんだ!動け、僕の身体、動けよ…!)


 そして多くの暴徒に囲まれたジルは、意識を手放すのだった。




 そしてジルが目を覚ますと、そこは何処かの施設であり、自身もベッドの上で寝かせられている事が分かった。


「…此処は?」


「我が組織の医療施設だ」


 と、ベッドの隣に1人の人物が控えていた。


「貴方は…?」


「私はこの組織の長を務めている者だ。君達も運が良かった。たまたま視察に来ていた我々のお陰で一命を取り留める事が出来たのだから」


「そうだ、ティナ!一緒にいた女の子は!?」


 団長の視線の先を見ると、そこには包帯まみれの痛々しい姿のティナがベッドに寝かせられていた。


「我々が来た時には既に手遅れだった。2人共、日常生活もままならないだろう」


「そんな…!」


「だが、彼女の心だけでもと言うなら方法はない事はない」


「それは一体…?」


「実はとある魔法の実験をやろうと思ってな。それを君達に手伝ってほしい」


「分かりました!ティナが助かるなら、僕は何だってします!」


「融合魔法と呼ばれる、複数の生命を混ぜ合わせる魔法だ。それによって再構築された肉体なら、今後の生活を送る事が可能となる。それを君達2人を素体にして行う。人格については知らんが、それでも協力してくれるか?」


「私は…いいよ…」


「ティナ…!」


「私だって…、ジルに未来を…、生きて欲しいから…。だから…、この身体…、あげるね…。ねぇジル…、私の分まで…、生きて…。そして…、ジルも…、ジルの…、幸せの為に…、生き…て…ね…」


 と、その言葉を最後に、ティナが深い眠りに着くのだった。


「…受けます、その実験…!」


「では、今後も組織の為に働いてくれる事になるが、構わないか?」


「構いません…!ティナをこんな目に合わせたこの世界、絶対に作り直してやりますよ!」


「いいだろう。では、融合魔法の実験といこうか」


 こうして、ジルはティナと融合し、彼女の容姿をそのまま引き継ぐ事となった。


「…ティナの姿になった。それにティナの記憶や感情が流れ込んでくる…。これが融合魔法…」


「おめでとう、ジル。君のお陰でティナも救われた」


「今の私はジルでもティナでもない。今の私の名はジルティナ!この腐った世界を作り直す者だ!」




 それからジルティナは、ジルの戦闘経験とティナの魔法の才能を合わせた戦法で戦場に出て、戦果を挙げて行った。

 そしてジルティナの方も、何人もの使えそうな能力を持った人間達を自身と融合させていった。

 それは身体のパーツも吸収して、10歳ながら端正な顔立ちの下に、Dカップの巨乳と巨尻と細いくびれを持つ、メリハリのあるプロポーションとなり、それも当然、長い年月と共に成長させる事となった。

 それから1年、その実験成果と戦果によって、遂に"天の笛"の主力へと昇り詰めるのだった。

 それによって団長は、ジルティナにある提案を出す事に。


「私の部隊の設立ですか?」


「そうだ。お前の様に融合によって新たなる力に目覚め、色々と好ましい活躍を見せてくれる者達も現れる事になるだろう。そこでお前には、初の融合体で、我が組織の主力でもある為、その部隊の隊長をやってもらう。名前はもう決まっている。2つの性別を混ぜ合わせ、それによって引き出される潜在能力、その力で戦闘や諜報等であらゆる活躍を見せる者達。その名は、双性者(ジェミメイル)!引き受けてくれるな?」


「はっ!仰せのままに!」




 そして現在、ジルティナは自室の机に座って、一息付いていた。


「…あれから15年、私とティナを追い詰めたこの世界への復讐の為に、私の人生を組織に捧げ、そしてとうとうここまで来た。この力があれば、そしてこの魔剣があれば、君を苦しめたこの世界を作り直す事だって出来る。待っててね、ティナ。世界を作り直したら、君の叶えたかった夢、私が代わりに実現させてあげるから」


 と、ジルティナも鏡を手にしながら語りかける。


「…そうだな。折角ティナから譲り受けたこの容姿も、こんな風に綺麗にさせたんだ。髪も伸ばしてみるのもありかもしれないな。後、おしゃれな服で着飾っておこうか。で、芸能人、スポーツ選手、冒険者の三刀流で生活するのも良いな。いや、学者と教師も入れての五刀流か?それでゆくゆくは、ティナが夢見ていたアルテミシア王国に住居を構えておこうか」


 そう言いながらジルティナも微笑みを見せるのだった。

 ジルティナもまた被害者であり、復讐を果たすまで、彼女も止まるつもりはないのである。

こうして、彼女の復讐劇は始まった。

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