第91話
今回も小休止。
アルテミシア学園、図書室
カイト達が本を読み漁っている所に、生徒会を終えたエミリアが来た。
「皆お疲れ様。それで、そっちの成果はどう?」
「歴史に関する文献や書物を漁ってみたけど、伝説の武具の情報が曖昧で」
「アタシらの方でも読み漁ってみたけど、一応それらしい物の名前はあった」
「武勇伝や英雄譚にもちゃんと伝説の武具の存在は明記されている。でも、詳しい情報までは書かれていない」
「成程。シュヴァリエ・ルミナスの様な異世界から持ち込まれた力だけでなく、エクスカリバーやデュランダルの様な神話やおとぎ話に出てくる武具もあると言う事ね」
「"天の笛"が世界間混入にまで手を出したのは、力が手に入りやすくする為だろうね。そっちの方が伝説の武具よりリスクが少なく済むし」
「あ~、本当に悩ましい限りだよ!問題が段々と増えちゃってるし!」
「これらについては、1つ1つ落ち着きながら対処していきましょう。城やギルドだってちゃんと協力してくれるんだし」
「あっ、うん、そうだね!ちゃんと焦らずやっていこう!」
そしてエミリア達は、調べ物ついでに勉強もやっておくのだった。
"天の笛"本部、ジルティナの部屋
ジルティナはケールに調査依頼を出していた。
「…と言う訳で、向こうにエクスカリバーとデュランダルがある以上、エミリア王女一行の脅威判定がかなり引き上げられました。ですので、貴方の方でも伝説の武具の調査をお願いします」
「了解したわ。それと、隊長もそろそろあれを引っ張り出した方が良いんじゃないの?」
と、ケールは部屋の奥に置かれている物に目を向ける。
「確かに、去年のフィルビアの一件までは、あれを使わなくて済む範囲の事でしたし、私もそろそろあれを戦場に取り出す必要が出来ましたね。次からは手元に置いて表に出る様にします」
「まぁ、そりゃそうよね。じゃあ、私はこれで」
と、ケールも仕事の為に退室する事に。
「…私もいい加減、あの時の雪辱を晴らせる様にしないとね」
その言葉の後、ケールは自身の影の中に潜って外に出るのだった。
アルテミシア学園、生徒会室
現在、生徒会では、来月の1年生の臨海学校について話し合っていた。
「さて、今年もこの時期がやって来た訳ですが、場所については例年通りジャワイアン海岸。そして日程についても、変更なしで良いでしょう。引率についても、各担当方が担当する事にもなります。では、今日の会議は以上となります」
そして会議がお開きとなり、エミリアも教室に戻ろうとすると、急に通信水晶に着信が入り、エミリアも人気が無い所へ移って回線を開くと、それはアルベルトからだった。
<すまん、エミリア。今良いか?>
「お兄様?一体どうしたのですか?」
<実は今度の土曜日に、公務の為の出張に行ってほしいんだが…>
「えぇ!?私、この前、エクスカリバーの件で出張したばかりなんですよ!?」
<本当にすまん!実はその日、俺も軍議が入ってしまって、父上と母上も政務で手が離せないんだ!そろそろユフィにも公務での訪問の現場を見せておく必要があるものだから、頼む!忙しい俺達に代わって、ユフィの付き添いをやってくれ!>
「…はぁ~。分かりました。そう言う事でしたら、引き受けます」
<助かる!お前の方でも、多分カイト達も連れて行くんだろう?一応、ユフィの方でも城からの付き添いが付いてくる事になるから、一緒によろしくやってくれ。じゃあ、詳しい日程については、後で教える。それじゃあ、俺もこれから兵の詰め所に行くから!>
そう言ってアルベルトとの通信が切れる事となった。
「…そりゃそうか。ユフィも王族である以上、政務を手伝える様になっておく必要があるわよね。カイト達にも声をかけておかないと」
こうして、エミリアも教室に戻り次第、カイト達に出張の事を伝え、一緒に来てもらう事となった。
土曜日、アルテミシア王国、駅前
エミリア達は出入口でユフィを待っていた。
「今回はユーフィリア様に外交の勉強をさせるのが目的だって話だよね?」
「えぇ。王族である以上、それは避けては通れない道だから」
「それで、これから訪問する場所って何処になるの?」
「アルテミシア王国の北西に位置する小規模都市。そこで近況報告を受けるの。そこならお互い気が知れてるし、ユフィの見学としては申し分ないわよ」
「お姉様~!」
と、ユフィがエミリアに抱きついて来る。
「っと、久しぶりねユフィ。元気してた?」
「はい!それは勿論!」
「それじゃあ、これから向かう先でも粗相の無い様にね?」
「はい!」
「それはそうとユフィ。貴方、この1年で髪も伸びてきたわね?」
と、エミリアはユフィの背中の上辺りまで伸びた髪を撫でる。
「えへへ。実は私も、お姉様と同じ髪型を目指してみようと思って」
「そうなの?」
「はい!私の憧れのお姉様ですから!」
「そこまで妹が私の事を好きでいてくれるのは、姉としても嬉しく思うわ」
「お姉様にそう言ってもらえると、私も嬉しいです!」
「ユーフィリア様~!」
と、そこに1人のメイドが駆けつけて来る。
「1人で先に行かないで下さいよ~!御身に何かあったら、私も怒られるんですから~!」
「あっ、ごめんなさい。お姉様に会いたかったものだから、つい」
「貴方がお兄様の言ってた、ユフィの付き添いね?」
「はい。本日は私もご一緒させて頂きます」
「それじゃあ、そろそろ列車に乗りましょうか」
そう言ってエミリア達は魔導列車に乗って、目的地へ向かうのだった。
こうして、北西にある街の領主との報告会を終え、屋敷の玄関に向かっている所だった。
「この街の方も、これといった変わり様がなくて安心したわ。で、ちゃんと勉強になったかしら、ユフィ?」
「はい!それは勿論!」
「そう、良かった」
その時、ハルトマリーがエミリアに耳打ちして来た。
「…エミリア、一応こっちでも此処の資料室に入れて貰って調べたけど、伝説の武具について、此処でもこれといった成果は無かったよ」
「そう、そっちもご苦労様」
そして外に出た所で、ユフィが手を叩いて音を鳴らす。
「お姉様!こうして遠くの街に出てるのですし、お城へのお土産でも買って参りましょう!私も中々外に出れなくて退屈していたので!」
「仕方ないわね。それじゃあ、買い物でもして帰りましょうか」
「わーい!行きましょう行きましょう!」
こうして、ユフィはエミリアの手を取って引っ張って走り、カイト達もそれを慌てて追いかけるのだった。
"天の笛"本部、団長の部屋
ジルティナは団長と今後の話し合いをしていた。
「さて、陽光の姫君がエクスカリバーを手にして、星空の勇者の下にも既にデュランダルもある。これで我が組織が最も警戒しなければならない2人が完全なる脅威となった。ジルティナ、お前も次の出撃からはあれを常に持って行く様にしろ」
「はっ!」
「しかしジルティナ、お前を拾った時はまだ齢10歳の大した力もない少年兵だったのに、それから15年、あらゆる任務や融合魔法の実験に耐え続け、あれも入手し、今や双性者隊長にして、我が組織の主力の1人ときたものだ。お前の成長と執念は私も感心しているよ」
「えぇ。私も最初はこの世界に絶望していましたが、この組織のお陰で生まれ変わりました。この腐った世界を正す為に、私も力を尽くす所存です」
「そうか、期待しているぞ」
「はっ!では、失礼します」
そう言ってジルティナは退室し、自室へ向かうのだった。
(…そう、この世界を私の望む形へ作り直す。その為の力も得た!)
ジルティナの脳裏に、これまでの過去の記憶が蘇るのだった。
ジルティナの過去が語られる。




