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第89話

いざ、伝説の剣の下へ!

 とある湖の中央に刺さった剣をタケルが引く抜こうとしたが、結局ビクともしなかった。


「…やっぱり僕はこの剣に認められなかったか」


「そんな…!魔王を倒す事が出来るかもしれない力なのに!」


「仕方ないよ。この剣も、自分を持つに相応しくないと判断している以上は。それに、本当に必要なのは力じゃない。ちゃんと折れず曲がらず信念を貫き通せる心だ。だから例え力が手に入らなくても、強い覚悟と信念で補っていこう」


「そうね。剣が手に入らなかった以上仕方ないか」


「タケル様の意見も尤もです。足りない分は私達の力で補いましょう」


 そう言って去っていくタケル達の背を見た剣も、薄っすらと光り輝いていた。

 その場面を最後に、エミリアは列車の席で目覚めた。


「…500年前の夢。今回は丁度伝説の剣に関する話か」


「起きたか。早く支度を。列車を降りたらしばらく歩く事になるからな」


 そして魔導列車は現在、荒野の中を走っていた。




 そして魔導列車を降りたエミリア達は、近くの村まで足を運んでいた。


「で、今回のメンバーは、俺、エミリア、カイト、ハルトマリー、スバルだけか」


「仕方ないわよ。レオニーは暗部の仕事の手伝い、ネムは補習、シャーリーお姉ちゃんはその付き添い、その他の人達だって都合が悪くてこうなっちゃったんだから」


「しかし伝説の剣か…。他にも見つかるとはな」


「えっ、どういう事ですか?」


「あぁ、言ってなかったか。俺が使ってるこの剣も、デュランダルと言う聖剣なんだ」


「えぇっ!?アラタさん、聖剣使ってたの!?」


「確かあれは5年前、俺がAランクだった頃に見つけたんだっけな。この剣はとんでもない硬さを誇り、大岩をも両断する代物だ。本当、この剣には助けられてる」


「へぇー、そうだったんだ」


「あっ、村が見えてきた。それじゃあ、聞き込みをするわよ」


 エミリア達が村に入ると、すぐさまラフィニアと出くわす事となる。


「あら、エミリア様達?」


「ラフィニア様?一体どうして此処に?」


「私は巡礼で来たのだけど、貴方達は?」


「私達はこの地にあると言われる伝説の剣の調査に来たのですけど…」


「あぁ、成程。私もその話を聞いたわ。詳しい話は村長さんに聞いてきなさい。奥に見える丘の上にある家よ」


「ありがとうございます。では、失礼します」


 エミリア達は一礼して村長の家まで足を進めていった。


「…まさか彼女達まで来るだなんて。ウェイン君達に知らせないと」




 そしてエミリア達は村長に教えてもらった、村を出て北にある湖に向かう事に。


「湖の中央の島にある伝説の剣か~。一体どんなのなんだろう?」


「村長さんの話だと、その剣は資格ある者じゃないと、引き抜く事が出来ないって話でしょ?」


「けど、連中だって簡単に引き下がるとは思えない。他の誰かの手に渡るくらいなら、何かしらの手を打って来る筈よ。向こうの予防策が出来る前に、私達も先手を打っておきましょう」


 そう言いながら湖に辿り着いた一行は、船を使って中央の島に上陸する。


「さて、この島の何処に剣があるのやら…」


「確か中央にある祠にあるって話だから、そこに言ってみましょう」


 そう言って中央に向けて足を運ぶ中、アラタは1人港に目を向けていた。


(少し離れた位置に船がもう1隻。まさか俺達以外に島に来ている奴が…?)


 そして辿り着いた祠にて、そこには1本の輝きを放つ剣が岩に突き刺さっていた。


「もしかして、あれが噂の伝説の剣!?」


「凄い…!見てるだけで普通じゃないって分かる…!」


 ハルトマリーとスバルが驚いている中、エミリアは納得した顔を見せ、それにアラタとカイトも気付く。


「姉さん?」


「エミリア、まさか…」


「えぇ、あれも500年前の記憶にあった物よ。かつてタケルが引き抜くのに失敗し、そのまま放置する事になった剣。まさかこんな形で見る事になるだなんて」


「成程。かつての勇者ですら引き抜けなかった剣なら、"天の笛"だって無理な筈…」


 その時、カイトのブレスレットが輝き、エミリアも魔力を感じてすぐさまバリアを張る。

 そして着弾した火炎弾が晴れたタイミングでバリアを消し、発生源に目を向けると、そこにはウェイン達がいた。


「ウェイン…!」


「どうも、エミリア王女、お久しぶりです。あの時はよくも俺をはめてくれましたね?」


「どうも~カイト君~!元気してる~?」


「フェミン…!僕としては会いたくなかったけど…!」


「どもども、お初にお目にかかります~!僕は川島総一郎。別の世界から来ました~!」


「転移者…!」


「こっちもうちのパトロンから情報を貰ってやって来てみれば、まさかお前らに出くわすなんて…」


「それはこちらの台詞よ。もしかして貴方達も、あの剣を狙って?」


「そう言う事~!あれは私達が貰うから、貴方達は痛い目に会う前に帰ってくれない?」


「お断りよ。伝説の剣の力を悪用させる訳にはいかないわ」


「まぁ、君らならそう言うよね~。お互い引き下がる気はないって分かった事だし、始めようか?」


「皆、戦闘態勢を!何としても剣を守るわよ!」


 そう言って両者共に戦闘態勢に入る。


「さぁ、戦争の幕開けだ!」


 総一郎も目を見開いて宣言した。


「先ずは俺が出る!お前らも後に続け!」


 そう言って飛び出したアラタの足元から生えた手がアラタの足を掴む。

 そこから次々と地面から何体もの人形が生えて来て、アラタを取り押さえる。


「しまっ…!」


「一番厄介な星空の勇者(ナイト・ブレイブ)は、亜空間に行って貰いますよ~」


 そう言った総一郎が投げつけた結晶により、アラタはその場から消えた。


「これで彼はしばらくの間、亜空間で魔導人形達と遊ぶ事になりました。しかも全て倒したとしても、一定時間が経たないと出られない仕様。当てが無い以上、君達は苦戦する事間違い無しだよ~」


「舐められたものね。私達だってそこまで弱くないわよ!」


 スバルが3人に加護を与え、エミリアが総一郎に、カイトがウェインに向けて剣を振り、2人も防ぐ。

 ハルトマリーが火炎弾を放つが、フェミンが魔力弾をぶつけて相殺する。


「スバルは全体をよく見ながら支援を!2人も目の前の敵に集中して!」


『分かった!』


 カイトとウェインがつば競り合いをしながら横移動。

 そしてウェインが弾き飛ばし、カイトもバック転からの着地。

 カイトもすぐさま低い姿勢からの跳躍で斬り付け、ウェインもそれを防ぐ。


「ウェイン、まさか君が敵だったなんて、僕も信じたくなかったよ!」


「こっちだって、この組織の力を借りてまで成しえたいものがある!例え道を踏み外そうともな!」


 ウェインは剣を受け流してカイトの腹に膝を入れ、そのまま胸倉を掴んで投げ飛ばす。

 そして横たわるカイトに剣を振り下ろすが、カイトも寸手で避け、ウェインの腹を斬り付ける。


「ぐっ…!」


「入った!でも浅い!見るからに君も凡人みたいだな」


 ハルトマリーの弾幕をフェミンがバリアで防ぎ、煙で視界が覆われた所で止み、フェミンが煙に紛れて魔力弾を放つが、ハルトマリーも魔力探知を使って避ける。


「何だ、大した事ねぇじゃねえか。えぇ、これなら簡単に避けれ…」


 と、その時、魔力弾が軌道を変え、ハルトマリーの背中に当たる。


「かはっ!?」


「ホーミング弾だよ~。当たるまで追いかけて来るから避けても無駄だよ~」


 そしてフェミンも次々とホーミング弾を飛ばし、ハルトマリーも魔力シールドを出して防ぐ。


「こっちも取れる行動は防御しかない!やりにくいったらありゃしない!」


 総一郎が振るった剣をエミリアが避けて突きを繰り出し、そのまま連撃で下がらせる。

 そして炎と土の十字斬りで斬り付け、総一郎もそれを防ぐ。

 エミリアが足払いで総一郎のバランスを崩させ、回転斬りを繰り出す。

 総一郎が防いで後退するが、負けじと刀身を巨大化させて振り下ろし、エミリアも光を纏った剣で迎え撃つ。

 と、その時、総一郎がニヤリと笑うと、彼の剣がバラけてエミリアも空振り。

 破片が剣の形となって周囲を飛び交う。


「ソードビット。遠隔操作が出来る剣も生み出せるんだよね~、これが」


 無数の剣が一斉に襲い掛かり、エミリアもオーラを解放して防御するが、何発か被弾してしまう。

 エミリアが膝を着き、オーラが消え、そこに総一郎がその身体を持ち上げる。


「結構頑張ってたみたいだけど、ここまでだったみたいだね~。じゃあね、偽物の王女様!」


 総一郎がエミリアを蹴り飛ばし、その身体を斬り上げ、エミリアも血を流しながら転がっていく。

 そして横たわる身体を何かに寄りかかりながら起こしていく。


「エミリア!」


「おっと、そうはさせないよ~!」


 と、フェミンがスバルに魔導人形を差し向けて妨害する。


(…不味いわね。こっちも血を流してしまっている。急いで止血しないと…)


 と、その時、エミリアの視界の端が光り出し、目を向けると、何と寄りかかっていたのは伝説の剣だった。


「っ!?一体何が!?」


 と、驚いているエミリアだが、その視界が真っ白に飲まれていく。




 エミリアが目を開けると、そこは辺り一面真っ白に覆われた空間だった。


「此処は…?っ!?傷が無くなってる!?」


 エミリアが身体が何とも無くなってるのを確認すると、目の前に金髪で白いドレスの神々しい女性が降りてくる。


「此処は、精神の世界。今、貴方の精神だけをこの場に呼びました」


「貴方は…?」


「私は、貴方方が女神と呼ぶ存在です」


「っ!?女神様!?」


「エミリア、いえ、スレイ。私は天界から貴方の事をずっと見ていました。本物のエミリアの死を見て、シェーラに取引を持ち掛けられ、決して私利私欲の為ではなく、国の今後の為を考え自分がエミリアとして生きる道を選び、王族の家族の暖かさによって、一度ひねくれた心も正され、そして両方の家族からの愛を再確認し、心を許せる仲間達にも出会い、愛する人にも出会えた。王女としても人間としても1人の女性としても強くなった今の貴方を見初め、貴方が触れた剣を通じて、貴方の精神だけをこの場に呼んだのです」


「成程…。って、ちょっと待って。500年前、タケルはあの剣が抜けなかったから諦める事になった筈よね?」


「あの時の彼は、現代社会で生きてきた弊害か、強すぎる力に恐れを抱いていましたからね。そのせいで、心の奥底でこの剣を恐れ、拒絶反応で剣を抜く事が出来なかったのです」


「タケルは認められなかったんじゃなくて、自分から拒絶してたって言うの?」


「でもエミリア、貴方は彼と違って、あの剣の力を恐れる事も、振り回される事も、ましてや力に飲まれて暴走する事もない、強い精神を育む事に成功しています。その上で改めて貴方に問います。エミリア、貴方は剣の力で何を成しえますか?勇猛果敢なる王として軍勢を率いて戦う蛮勇の将となりますか?その高潔なる精神で以て悪を裁く正義の天秤となりますか?それとも、力、知、心で以て人々の上に立ち、先導する絶対なる君主となりますか?」


「…私は、元々は一般階級に生まれ、そして王族としての第二の人生を歩む事になり、上と下両方の景色を見て育ってきた。それによって、私らしい王女の在り方として、皆が何物にも縛られず、自由に生きる事が出来る国を作っていこうと思った。例えそれがどれ程過酷な道でも、どれだけ難しかったとしても、絶対に成しえてみたい。例えどんな存在が立ち塞がろうと、どんな壁に当たろうと、この信念を貫き通したい。だからお願い!私に力を頂戴!この胸に宿った信念を貫く事が出来る力を!皆の心を縛る鎖を断ち切る事が出来る力を!皆の未来を守る事が出来る力を!」


「…良いでしょう。その答えを出せる貴方なら、あの聖剣を引き抜く事が出来る筈です。でも忘れないで下さい。貴方の辿る道筋が、どれ程の困難が立ち塞がるのかと言う事を」


「心配しないで。私は独りで戦っている訳じゃない。私には頼れる仲間と、家族と、愛する人がいるから」


 そう言いながら笑顔を見せるエミリアに女神も微笑み、エミリアの意識は現実に引き戻されていった。




 意識を取り戻したエミリアはすぐさま剣を引き抜き、総一郎に向けて剣を構える。


「剣を抜いた!?」


「まさかエミリアが剣に選ばれた!?」


「へぇー、成程。でも抜けたとして、その傷じゃあ…っ!?」


 と、その時、剣が刺さっていた岩から鞘が飛び出し、エミリアも手に取る。

 その瞬間、エミリアの傷が一瞬で消えていった。


「馬鹿な!?あの深手の傷が一瞬で治るだなんて!?」


「これが、この鞘の力。手にした者に不老不死の加護を与え、その者を不死身にする」


「っ!?まさか、その剣と鞘の正体は…!」


 何かに気づいた総一郎はソードビットを飛ばすが、エミリアは剣を輝かせて、広範囲の光の斬撃を飛ばし、全てのソードビットを消し飛ばす。

 そして身体強化で一気に間合いを詰め、総一郎を斬り捨てる。


「畜生…!まさかそんなとんでもない剣を手にするだなんて…!」


「この剣は、決して折れずこぼれず、千の松明を集めた様な輝きを放ち、あらゆるものを両断する聖剣。そしてこの剣と鞘、2つの力を手にした者は無敵の強さを誇る。この剣は最強の聖剣。その名は、聖剣エクスカリバー!」


 そんな中、ウェインとフェミンも総一郎の所まで吹き飛ばされ、スバルも魔導人形を破壊した後で、アラタも亜空間から脱出して来た。


「状況が悪くなった!このままじゃあ分が悪い!撤退だ!」


「そうするしかない様だな…!」


 総一郎が悔しそうな顔をしながら転移結晶(テレポートクリスタル)を使い、3人は撤退していった。

 それを見届けたカイト達も、エミリアの下へ駆け寄る。


「やったね、エミリア!」


「凄いよ、その剣を手にするだなんて!」


「エクスカリバー、だっけ?凄まじい力だった!」


「エミリア、一体何があったんだ?」


「それは帰りながら話しましょうか」


 そう言ってエミリア達は、一旦島を出る事となった。




 "天の笛"本部

 ジルティナもラフィニアとの通信も開きながら、3人の報告を聞いていた。


「件の伝説の剣がエミリア王女の手に渡り、やむなく撤退したと…」


「申し訳ありません…!」


「仕方ないよ~。まさかあのエクスカリバーだったなんて~」


「仕方ない人達ですね。そもそも伝説の剣も我々が手に出来るか分からなかったですし。陽光の姫君(シャイニープリンセス)がエクスカリバー、星空の勇者(ナイト・ブレイブ)がデュランダルを手にしたと言う事ですか。取り敢えず、貴方達3人には療養と謹慎を言い渡しておきます」


 そう言ってジルティナは通信を切ってその場を去って行った。


「…不味い事になりましたね。こちらも警戒を強めなければ」




 夕方、エミリア達も魔導列車の中で、エクスカリバーの話をしながら一息付いていた。


「成程、女神様が…」


「まさかタケルの方が剣を拒否していただなんて」


「しかし、これで2本の聖剣がこの場に揃ったのは事実。まさかお前まで聖剣を手にするだなんてな」


「褒めてくれてありがとう、アラタ。…けど、今回の件で、このドレス破れちゃったわね。後でティティアに怒られるわね」


「そうだよね。彼女も力作だって言ってたし」


「ちゃんと謝って直して貰おうか」


「そうね。ただ、普通に直して貰えるだけで済めばいいけど」


「あ~、彼女の事だから素材をより良い物にするとか、デザインを一新するとか言いそう」


「こっちも何とか修繕だけで済ませる様にしておかないと」


 こうして、エミリア達も他愛ない話をしながら帰路に着いて行く。

 新たに手に入れた力と共に、エミリアは前へ進んでいく事となった。

2本の聖剣、此処に集う!

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