第88話
誕生日の後日談。
アルテミシア学園、女子寮エミリアの部屋
エミリア達が誕生日パーティーの後片付けをしている最中の事である。
「あっ、忘れてた。エミリア、今日アラタさんから指輪を貰ったでしょ?好感度も更に上がった事だし、いい加減仮面も完全に馴染んだんじゃない?」
「えっ、あっ、そう言えばそうだった。でも、まだ外れるのは感じるし、念の為…」
と、エミリアは鏡を持って来て、皆の前で仮面を外してみた。
「…ン~、髪の色は黒いままだけど、瞳の色は青くなったわね」
「あれ?声がエミリアのままだ」
「あっ、本当だわ。って事は、もうスレイとしての要素は髪の色だけになっちゃってるって事よね?」
「まぁ、そうだろうな。しかし、指輪以上の段階となると…」
「そりゃあ、もう、2人の熱~いキスでしょう?これ、純愛物語の定番よ!」
「あぁ、確かにその展開、前世でもよく見てきました」
「でしょでしょ!?と言う訳だから、そろそろ2人で愛のベーゼを…」
「フィーナ、貴方も揶揄わないの!」
と、スレイはフィーナを叩き落とし、仮面を被り直す。
「アラタ、貴方もあまり気にしなくていいからね!」
「あぁ、分かってる」
と、エミリアとアラタは顔を赤らめ、視線を逸らしながら応答する事となった。
何処かの未開拓地の洞窟
雨の中、運良くそこを見つけたラフィニアは、その場で休息を取っていた。
「ふぅ、聖女としての巡礼の旅も、本当に苦労するわね。こんな辺境にまで足を運ばなくちゃならないんだから。…それにしても、この5日間禁欲状態だったせいで溜め過ぎちゃった。胸も重くて動きづらくて苦しいわ」
と、ラフィニアは自身のその胸の谷間どころか、7割以上はだけさせる程、大きくなり過ぎてしまった胸に手を添えてため息をつく。
「これ以上溜め過ぎちゃったら私も身動きが取れなくなってしまうわ。早く抜こうにもおかずが…」
と、その時、洞窟の奥の方で小石が転がる音が聞こえた為振り向くと、そこには1人の少女がいた。
「あら、可愛らしいお嬢さん。丁度いい所におかずが…。それじゃあ、私に付き合って貰おうかしら」
そして洞窟の中でしばらく反響音が響いた後、ラフィニアの胸の大きさも戻り、その場に白い水溜りの上に横たわる、白い液体まみれの少女が気を失っていた。
「ふぅ、助かったわ。さて、折角だし、この子に"案内"をしてもらおうかしら」
そう言ってラフィニアは少女の額に手を添えて魔力を流し、起き上がった少女は焦点の合わない目を向ける。
「おはよう、お嬢ちゃん、お陰で助かったわ。あっ、貴方はまだ処女のままだし、"薬"も飲ませてあるから安心して。で、此処で会ったのも何かの縁だし、私を近くの村まで案内して貰える?後、着いたら此処での事は忘れるのよ」
そして少女も頷き、雨が上がった外へ向けて歩き出し、ラフィニアもその後を付いて行く。
「さて、未開拓地の村へ"巡礼"と行きましょうか」
そう言いながらラフィニアも、怪しい笑みを浮かべて村へ向かうのだった。
アルテミシア学園、廊下
生徒会会議を終えたエミリアが歩いていると、そこに2つの段ボールを抱えたミアが歩いてくる。
「うんしょ、うんしょ…」
「ちょっ、ミアちゃん先生、大丈夫ですか!?」
「あっ、エミリアちゃん?実は新しく入った教材を運んでいる最中で、本当に重くて重くて」
「…はぁ~、手伝いますよ」
「本当!?助かるわ!」
と言う訳でエミリアも段ボールを1つ持って、共に職員室に行く事に。
「で、どうですか?この学園で教師を始めて、此処での生活に慣れてきましたか?」
「えぇ、大分慣れてきたわ。他の教師達も親身になってくれるし、生徒達も皆いい子で助かってるわ」
「そりゃそうですよ。ミアちゃん先生、可愛らしい顔立ちに大人って感じの抜群のプロポーション、そして人当たりが良くて、誰に対しても距離感が近い性格してるから、皆もミアちゃんと言う愛称で呼ぶ程、学内の人気も高いんですよ?」
「私は別にそんなつもりはないんだけど、嫌われてないならいい方よ」
「まぁそうですよね。先生の担当である国語についても、本当に教え方が上手いですし」
「うふふ、ありがとう」
「…っと、もう職員室に着きましたよ」
そして2人は職員室に入り、段ボールを奥のロッカーの上に置く。
「ありがとうね、エミリアちゃん。本当に助かっちゃった」
「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ」
「そう言えば、ウェイン君も結構気の利くいい子だったわね。転校しちゃったのは残念だったわ」
「(ギクッ!)えっ、あっ、あぁ、ウェイン!?そ、そうですね~。確かに彼は生徒会に抜擢されるくらいでしたし、私も残念に思ってます」
「所でエミリアちゃん、ウェイン君が何処の学校に行ったのか知ってる?機会があれば会いに行きたいんだけど…」
「いっ、いえ、実は私達生徒会も聞いてなくて…」
「そうなの?本当残念ね」
「そ、そうですね~。アハハ…。じゃあ私はこれで失礼します」
そう言ってエミリアは職員室を退室していった。
「…何とか誤魔化せたわ。取り敢えず、逮捕だろうと、討伐だろうと、学園にバレない様にしないと…」
"天の笛"本部、修練所
ウェインが休憩している所に、総一郎とフェミンが声を掛けてくる。
「お疲れ様、ウェイン君。今日も精が出るね~」
「お前らか…。一体何の用だ?」
「やだな~。これから一緒に仕事していく仲なんだし、仲良くやろうよ~」
「そうだな。今後同じ場所で仕事する事があればな」
「そんな釣れない事言わないでよ~。僕らも君の頑張り、高く評価してるんだからさ~」
「そうだよ~。普通の人間としては、君はかなりの実力者でもあるんだからさ~。真面目で実直で、仕事に対しても誠実ってのもかなりの高評価だよ~」
「双性者については、隊長のジルティナさんが真面目な軍人である事と、全員腕が立つ事以外は、基本的に変態集団である事に変わりはないからね~」
「だからこそ、その変態達の手をあまり借りたくないから、俺達みたいな奴らも成果を上げる為に力を付けているんだろうが」
「それもそうだねぇ。まぁそれについては、僕ら転移者と…」
「私ら転生者だって同じ事だけどねぇ…」
「此処にいましたか」
と、背後からジルティナが3人に声を掛ける。
「貴方達3人に任務の通達です」
「おっ、やっと来たか」
「やった~!」
「それで、今回の任務とは?」
「今回貴方達にやって欲しい事は…」
冒険者ギルド、会議
エミリア達はミザリーに呼び出されていた。
「来た来た~!ごめんね~、学校終わりに呼び出しちゃって」
「いえ、それは良いですけど、今回は一体どんな御用で?」
「うん、それなんだけどね~、エミリアちゃん達にはアラタ君と一緒に行ってほしい所があるの~」
「行ってほしい所?」
「油断するなよ。この人の場合、碌な事が無い」
「ちょっとアラタ君?流石にそれは心外だな~?私だって、そんなつもりはないよ?」
「まぁまぁ、私達を呼んだって事は、私達なら出来ると見込んでの事でしょう?」
「まぁそれもそうだね~。今週の土曜日の朝早くに出張に行ってほしくてね~。この国の東にある未開拓地にあると言われる伝説の剣の話を確かめて欲しいの。ほら、万が一奴らの手に渡ろうものなら、確実に厄介な事になり兼ねないから」
「やっぱり厄介事じゃないか。全く、アンタと来たら…」
「まぁまぁ、そう言わないでよ~。メンバー編成とかはそっちに任せるから」
「まぁ、それが本当なら、確かに不味いですね。分かりました、行ってきます」
「本当助かるよ~!それじゃあ、よろしくね~!」
未開拓地、村付近の荒地
ウェイン達もラフィニアと合流していた。
「…と言う訳で、これがこの村で仕入れた情報よ」
「成程。確かに戦力アップには持って来いの案件だ」
「だが、その情報、確かなんですよね?」
「いいじゃんいいじゃん!私達だって暇してたんだし」
「まぁ、そう言う訳だから、そっちの調査よろしくね。私も此処を離れる訳にはいかないから」
「仕方ない。こっちも仕事で来てるし、その場所に向かいますか」
そう言ってウェイン達も目的地へと足を進める。
こうして、伝説の剣を巡る戦いが始まろうとしていた。
新たな戦いが始まる…!




