第113話
新学期の開幕。
アルテミシア学園の方でも、夏休みが明けて、9月の始業式、聖堂での全校集会を終えて、生徒達は教室へ戻り、2年1組の教室でもHRの時間となっていた。
「え~、本日より新学期を迎える事となった。全員、無事に迎えられて何より。今年の9月に行われる文化祭だが、連休の初日と2日目に行われるものとなっている。それ故に、残りの3日間を振替休日の代用として当てられている。去年より1週間早いが、通常通りの授業と平行しつつ、文化祭の準備も進めていく。では、話の続きは放課後のHRに行う」
こうしてHRは終了し、皆授業の準備に取り掛かる。
「今年もやって参りました、文化祭。去年はうちの『執事&メイドカフェ』が好評だったけど、今回はどうなるか」
「今年はうちのクラスも違うものを出すんじゃないかな?」
「そりゃそうだよね」
「それも放課後で…って、どうしたの姉さん?」
と、カイトが悩んでいる様子のエミリアに気付く。
「あぁ、ごめん。実はついさっき、アイラ会長からの話で…」
HR前、生徒会室
アイラはエミリアの前で頭を抱えながら、ある事を話していた。
「エミリア、私達も今年の文化祭が終わったら引退だって、分かってるわよね?」
「えぇ、それが何か?」
「私達3年生が3人共抜けたら、現在の生徒会で残るのは貴方1人になるわよ?」
「あっ…!」
「それで、貴方も新会長就任前に、残り4人のメンバーを急いで見つけて欲しいのよ。期限は文化祭終了まで。それまでに何とかお願い」
「は、はい!直ちに探しておきます!」
そして現在、2年1組教室
「あっ、そうか。ウェイン、学校辞めちゃってるから」
「そうなのよ。だからこっちでも探しておかなくちゃならなくて」
「副会長、会計、書記、庶務の4人を見繕っておかなくちゃならない訳だね」
「そう言う訳だから、貴方達も手伝えるなら、是非手伝って欲しいのよ!お願い!」
と、エミリアも頭を下げて手を合わせてカイト達に頼み込む。
「うーん、仕方ないなぁ…。取り敢えず、僕達も考えておくよ」
「しょうがねぇ奴だな」
「フェリシアにも声を掛けてみたら?彼女も引き受けてくれる筈だよ?」
「本当にごめん。私もちゃんと色んな人に声を掛けてみるから」
「それじゃあ、先ずは文化祭の準備をやっておこう。話はそれからだよ」
こうして、話を終えたエミリア達も、授業の準備に取り掛かるのだった。
放課後のHRで2年1組の出し物を話し終わった結果、去年とは趣向を変える方向となった為、第1候補『演劇』、第2候補『お化け屋敷』、第3候補『展示会』となった。
そして現在、職員会議の結果待ちの状態の為、生徒達も下校の支度に入っていた。
「演劇か~。どんな話でやる事になるんだろうね?」
「どんな脚本になるのやら」
「キャストに舞台に演出と、色々準備しなくちゃならない要素はあるけどね」
「まぁそれについては追々話すとして、姉さん、フェリシアさんはどうだった?」
「あぁ、大丈夫。彼女もちゃんと考えておいてくれるって。ついでにネムも立候補して来たわ」
「カイトも副会長として入ってあげたら?弟として支えてあげなよ?」
「そうだな…。そう言うのは、同じ王女であるサーシャ王女が出来る気がするけど」
「一応彼女にも声を掛けたけど、他国の王女である事に変わりはないからって、断られた。トウヤの方も、フォルソスの件がある都合上、目立つ訳にはいかなくて…」
「世知辛ぇなぁ…」
「それに、今年のユフィの誕生日プレゼントと、お父様とお母様の結婚記念日のプレゼントも考えてないと」
「またレン・ファミリーに相談に乗って貰うのか?」
「去年はそのお陰でまとまったからね」
「レン君、あれからも更に彼女を増やしたらしいですよ?3歳年下の風紀にうるさい従妹に、この国の文化に憧れている東方からやって来た教師に、身長2mの農業女子に、凄腕マッサージ師のヒーラードワーフ少女に、メディ先輩の母方の祖母で同じく若返りの薬で8歳になった現90歳の元看護兵に、甘えたがりな女騎士…」
「アイツ、まだキャラが濃い女達を彼女にしまくってるのか?」
「いや、大丈夫。去年程悩んでいないから」
「と言うと?」
「もう方向性が決まってるのよ。ユフィも14歳になるし、大人っぽい物を選んでも良いし、結婚記念日の方も、去年と同じ方向性で行く事になってるから」
「成程。そう言えば去年の11月でのアルベルト様の誕生日プレゼントがペアのティーセット、1月のアルフォード隊長の誕生日プレゼントも剣を磨く研磨布とすぐに決まってた様な…」
「私の方も場数を踏んだ事で、思考も回る様になってきたって事よ」
「それは何より」
「それじゃあ図書室に寄らない?ほら、演劇の参考に」
「あぁ、それ良いかも」
「どんなジャンルにするのかだけでも決めないと」
「学生レベルで収まる範囲で作っていくと言う都合上、無理のないものにしないとね」
「それじゃあ、授業の予習も含めて、図書室に行きましょうか。文化祭が終わったら中間試験だって迫っているし」
「エミリア~、嫌な事思い出させないでよ~」
「ほら、行くわよ!」
こうして、エミリア達は図書室へ向かう事にした。
夜、女子寮エミリアの部屋
エミリアは紅茶を飲みながら課題をやっていた。
「エミリア~、演劇なんだけど、皆の事だから、アンタを主演にする筈でしょう?」
「まぁ確かに、私もこの国の王女な上に、周りからも絶賛される程の容姿だから、皆も抜擢だって言うわよね」
「どうせなら何やりたい?ありきたりなヒロインとしてのラブロマンス?男装しての活劇?東方をモチーフにした和のテイスト?探偵になっての推理ショー?人魚姫とかになってミュージカル?エミリアのやるメインヒロインなら、何でも大受けしちゃいそうよね~!」
「フィーナ、貴方も私を出しにして楽しんでない?」
「そりゃそうでしょう?私だって見てみたいし、そんな面白そうな物~!」
「それ以前に、まだ正式に決まっていないし、題材だってまだなんだからね」
「そっちこそ、舞台に上がった時、キスも振りで済ませるつもりなんでしょう?」
フィーナの言葉に、エミリアも口に入れてた紅茶を盛大に噴き出す。
「けほっ、けほっ…!フィーナ、貴方何を…!?」
「本命のキス、アラタ以外にあげる気はない筈でしょう?」
「っ!…そりゃあ、まぁ…」
「でしょう~?アンタが彼氏以外の男にあげる訳ないもんね~?」
「フィーナ~!」
と、揶揄ってくるフィーナを、エミリアは追いかけ回すのだった。
翌朝、生徒会室
エミリアはアイラに新メンバー募集の進捗を報告していた。
「…と言う具合で、何とか募集を募っておきました。私が信頼している者達ですから、大丈夫かと」
「そう、ご苦労様。本当に悪いわね、こちらの不手際なのに」
「いえいえ、ウェインが居なくなった時点で察してなかった私達全員のミスですので」
「それで文化祭なんだけど、私達生徒会は例年通り、教師陣と連携しての学園全体の進行の管理と見回りをやっておく事になってるけど、貴方の方は手伝えそう?」
「一応うちのクラスは演劇が通れば、私も時間を調整して手伝えますよ」
「そう…。まぁ忙しくなりそうだけど、そっちも頑張ってね」
「はい、失礼します」
そう言ってエミリアは退室して、教室に戻っていく。
「…って言っても、まだどんな話でやるのか決まってないんだけどね」
「そうよね~。アラタを招待するからには、嫉妬を買う事がない様にしないとね~」
「もう、フィーナったら…。アラタだって器は小さくないし、ちゃんと演技だって分かるし、貴方だって私がちゃんとアラタ一筋だって分かってるでしょう?」
「まぁね~。そう言う訳だから、他の連中についても、ちゃんと言いくるめておきなさい」
「だからそう言う事言うんじゃないわよ、全くもう…」
こう言うやり取りをしながら、エミリアは廊下を歩いていく。
果たして、今年の文化祭はどういう事となるのか、それは今後のお楽しみと言う事としておこう。
緩やかな始まりでした。




