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第109話

今回は今までで強大な存在と戦う事に…!

 ウェインとヴァーリはローブの女性、マヤを自分達の客室へ案内し、シャワーを使わせ、服も洗濯に出しておいた。

 シャワー室から出たマヤがヴァーリとファムが分離する様を見た際、ウェインも慌てて説明したが。

 海や市場、アトラクションを堪能して戻って来たエミリア達に、ウェインも緊急の話があると言って、一同はアルテミシア側のスイートルームに集まり、マヤから話を聞く。


「私の呼び声に応えて下さり、ありがとうございます」


「それでマヤさん、厄災と言うのは何の話?」


「はい、その話の為にはまず、私の出自から始める必要があります。私の家系は、創世の神が1人、ティアマトにまつわる一族なのです」


「ティアマト!?あのメソポタミア神話の!?」


 と、アリアが驚きを見せる。


「はい、ティアマトはかつて、自らの子である新しい神々の存在が騒がしく不愉快に感じた原父アプスーを共に打倒し、世界の支配権を獲得しました。しかし、神々は母であるティアマトにさえ剣を向けました。ティアマトは嘆き、狂い、新しい子供として十一の魔獣を産み出し、神々と対決しました。戦いの末、ティアマトは敗れ、神々は彼女の死体を2つに裂き、天と地を造り、これを人界創世の儀式としました。地球の環境が落ち着き、生態系が確立された後に、彼女の死体は不要なものとして追放されました。並行世界でもなければ、1枚の敷物の下にある旧世界にでさえない、世界の裏側…生命のいない虚数世界に。問題はその後です。ティアマトの魂は未だ健在で、討伐された時の恨みを抱き、その怨念も凄まじく強い物なのです。それで我が一族も、ティアマトの復活を警戒して、先祖代々、ティアマトの監視と祈禱を行い続けているのです。しかし、1ヶ月前、我々が監視している空の裂け目から、どす黒い瘴気が漏れ始めたのです。そう、ティアマトがこの世界に復活する兆候が見えてきたと言う事です。悪に堕ちたとは言え、相手は神。生半可な力じゃあ、対抗する事なんて出来ない。その為には、神に届きうる伝説の聖剣、エクスカリバーとデュランダルを持つ、陽光の姫君(シャイニープリンセス)エミリア様と、星空の勇者(ナイト・ブレイブ)アラタ様のお力を借りるしかないのです。この様な話、到底信じられないのも百も承知です!ですが、我々も貴方達に頼るしかないのです!お願いします!どうか力を貸して下さい!」


 と、マヤも立ち上がって頭を下げる。

 この緊張した空気が漂う中、エミリアも立ち上がってマヤに手を添える。


「…頭を上げて下さい。貴方の誠意、ちゃんと態度からも伝わっています。私だって一国の王女です。民の命と暮らしを背負う者として、国の危機を見過ごす事は出来ません。ですので、私も貴方の頼みを聞き入れる事にします。アラタも良いでしょう?」


「分かっている。俺だってお前と同じ考えだ」


「…!ありがとうございます!」


「それじゃあ、お兄様達は万が一に備えて、この島に残って下さい。ティアマトの下には私達が…」


「待ちなさい」


 と、そこにジルティナが待ったを掛ける。


「何、私達抜きで話を進めているのですか?私達だって"天の笛"の理念を達成する前に、世界が滅ぼされる訳にはいきません。ですので、私も同行させて貰います。私のカラドボルグもあれば、ティアマトを討つ事は出来るでしょう」


「確かにそうでしょうけど、私達が信用するとでも思ってるの?」


「言った筈でしょう?お互い余計な気を起こさない限り大丈夫だと」


「…仕方ない。こっちも可能性を上げておきたいし、お互いに邪魔しないって言うなら」


「それで結構」


「それじゃあ、すぐに準備に入りましょう。明日の朝、すぐに出られる様に」


 その言葉と共に、一同も早速準備に取り掛かる事にした。




 "天の笛"の客室

 誰にも見つからない様にやって来たラフィニア、ラーナ、メノウも交えて、ジルティナ達は明日の話をしていた。


「…と言う訳ですので、私が現場に向かっている間、貴方達の方でもこの島に残って、他の者達と連携をお願いします」


「分かったわ。私の方でも怪我人の治療や、結界を張って、簡易的な避難場所を作っておくわ」


「避難誘導なら、私の方でもやっておくから任せて!」


「…ちっ!仕方ねぇ!俺も島に連れて来たメイドと執事と一緒に対応しておくぜ」


「ねぇねぇ、ティアマトってどんな神様!?ミオも見てみた~い!」


「ミオ、隊長達は遊びに行く訳じゃないんだぞ」


「本当に隊長1人で良いの?私達も一緒に行った方が…」


「いえ、相手は創世神ティアマトです。力が足りていない者は寧ろ足手まといになります。そしてこの中で伝説の武具を持っているのは私1人です。何より、こちらも彼女達の信用を損なう真似は避けておく必要があります。ですので、明日は私1人で行ってきますので、皆さんはアルベルト王子達の手伝いを…」


「あ、あの!俺も連れていってくれませんか!?」


 と、ウェインが声を掛ける。


「隊長達がティアマトと戦っている間、マヤさんを傍で守る人が必要でしょう!?ですから、俺を護衛に連れていって下さい!」


「ウェイン?貴方一体…?」


「もしかして、彼女に惚れたとか?」


「なっ…!?」


 と、ケールの言葉にウェインは顔を赤らめてたじろぐ。


「そんなんじゃない!俺は隊長達が戦っている間に彼女に何かあったら寝覚めが悪くなるだけで…!」


「…それもそうですね。エミリア王女達にも了承を取っておきます」


 そう言ってジルティナは部屋を出て、アルテミシアの客室に向かった。


「…珍しいな。お前からあんな事言い出すなんて」


「なんて言うか、その、彼女の事、放っておけなくて。何か、俺が傍にいてあげたいって思えるくらいに」


 と、ウェインも視線を逸らして頬をかく。

 その様子を見ていたケールもこう思った。


(それ、彼女に気があるって事じゃないの?)




 翌朝、島の裏側の海岸

 砂浜に佇むエミリア達を、アルベルト達が見送っていた。


「それではお兄様達も、この島の事はお願いします」


「そっちも気を付けて」


「じゃあ、行ってくる」


「お前こそ頼むぞ、アラタ」


「そちらの首尾はお任せします」


「隊長こそ、ちゃんと戻って来てよ」


「それでは、参りましょう」


 そう言うとマヤは笛を取り出して吹く。

 その音色と共に風に包まれ、エミリア達は空を飛んで行った。


「これは私の里を出入りする為に使われる移動手段で、この風なら里の結界を通過出来るのですよ」


「ジルティナ、貴方も事が終わっても、マヤさんの里に手を出さないでね」


「やる訳ないでしょう。創世神ティアマトの力は大き過ぎて、"天の笛"でも扱いきれない。そして下手したら、この世界を滅ぼされかねない爆弾その物でもあります。ですので、里の者にも、今後のティアマトの動向の監視は続けて貰う所存です」


「見えました!あれが私の里です!」


 と、目の前に目を向けると、そこには周囲が風に覆われた1つの空飛ぶ島があった。


「あれが、ティアマトを祀っている一族の里…!」


「はい、あの島はティアマトの信者を務めていた我が先祖が、監視の任を担った際に、ティアマトの存在を近くに感じながら生活出来る様にと、用意して下さったのです」


「そうなんだ…」


「っと、そろそろ上陸します!」


 と、一同は風の壁を突き抜け、上陸。

 そして目の前の門が開かれると、そこから数人の司祭らしき服を着た者達と1人の老人が現れた。


「ようこそ、おいで下さいました。聖剣に選ばれし勇者と姫よ。私はこの地の神殿で司祭を務めている者です。此度は我々の救援に馳せ参じて頂き、ありがとうございます」


「今は時間が惜しいです。例の裂け目の所まで案内して貰えますか?」


「おぉ、そうですな。では、こちらへ」


 と、司祭もエミリア達を案内していく。

 そして辿り着いた神殿の裏側の断崖にて、空に巨大な裂け目があり、その隙間から黒い瘴気が漏れ出ていた。


「これが空の裂け目…。此処からティアマトが現れるのですか?」


「はい。我が神殿の者達でも抑えてはいるのですが、それでも止められず、以て後半日と言った所です」


「分かりました。私達も何とか討伐して見せます」


「その言葉を聞けるだけで何よりです。まだ時間がありますので、先ずは英気を養って下さい」


 そう言われて司祭の案内で神殿の中に入っていくのだった。

 迫る決戦の時に備えて、エミリア達も食事や装備の手入れ等を入念にやって、心を研ぎ澄ましていくのであった。

ティアマト編、第2話終了。

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