第107話
リリネット王国の観光へ。
リリネット王国を訪ねたエミリア達は、リーゼロッテにリリネット城を一通り案内された。
そして現在、リリネットの王都を案内されている所であった。
「どう、エミリアちゃん。街の方もあの頃のまま、賑やかでしょう?」
「えぇ、そうね。城の方も昔とそんな変わってなかったし、街の方もあの頃を思い出させるわ」
「そう言えば、城も街も、何かアルテミシアと似ている気がするけど、国の理念とかが同じだと、城や街の雰囲気も似てくるものなのかな?」
「国の特色が反映されているからよ。国の理念や特色によって、その在り方は千差万別。だからそれらが似ていれば、国全体の外観や生活様相等も似てくるのは明白。それ故に、こうして同じ理念や価値観、倫理観や方針等でお互い同盟を結べるのよ。まぁ、アルテミシアやリリネットみたいな、ちゃんと身分や種族も関係なく、幅広く受け入れ合ってる国があれば、下の身分の者達の気持ちを考えようとしない自分勝手で傲慢な上層階級が治める国もあるし、他の種族や宗教に排他的な国だってある。例えどんな統治の仕方をしても、身分や格差、貧困等の問題が発生してしまう事実に変わりはない。だから、ファルマータでの世界会議による意見のすり合わせだって必要になるのよ」
「確か三権分立も、ファルマータでの世界会議によって制定されたんだっけな。法律を作る立法、法律を執行・運用する行政、法律に基づき紛争を裁く司法による、国家権力を三つに分けて、それぞれ独立した機関に担当させる事で、権力の乱用を防ぐ、政治的自由を確保する制度」
「そう言った話も、今後の民達の生活に必要な事なのです。民あっての国なのですから」
「そう言う言葉が出る辺り、リゼさんもちゃんとしたお姫様なんだね」
「えっ、あっ、その、お褒めの言葉、ありがとうございます、カイトさん…」
と、リーゼロッテは赤くした顔を伏せながら、小声でお礼の言葉を言うのだった。
「こう言う事を自然と言える辺り、カイトも天然たらしな所あるよ」
「本当よね。エミリアと一緒で人たらしの才能あるよ。ここら辺、姉弟って感じがするわ」
と、後ろでハルトマリーとスバルのひそひそ話があったが、まぁ良しとしておこう。
「リゼ、取り敢えず冒険者ギルドと商業ギルドも見せて貰えないかしら?」
「あっ、はい!分かりました!」
「そしたら、手頃なレストランでも行って、そこで食事にしましょう」
と、言いながら、エミリアはリーゼロッテに耳打ちをする。
「折角だから、食事の席でカイトとの親睦を深めておきなさいな」
「エミリアちゃ~ん!…それじゃあ、行きますよ!」
と、リーゼロッテは照れ隠しで足を速めて、一同は冒険者ギルドへと向かうのであった。
こうして、冒険者ギルドと商業ギルドを見た一同は、静かなレストランで食事を取っていた。
「そう言えばリゼ、伝説の武具と異世界関連の調査の進捗はどうなの?」
「はい、私なりに書庫の文献を確認している所で、まだ情報が全然なのです」
「それは仕方ないわね。まぁ兎に角、"天の笛"に先を越されたりしない様に気を付けてね」
「そうですね。こちらもスパイに気を付けながらと言う都合上、迂闊に喋れませんし、現に私も、お父様とお母様、お兄様とお姉様にしか話してませんわ」
「そこら辺は私も聞いてるわ。今回のお互いの国への手続きの時、同盟と言う事で組織の事も話しておいたって。流石にお互いの信用の為に、そう言った話はちゃんと通しておく必要があるわ」
「そりゃそうか。同盟国である以上、そこら辺きちんとしておく必要があるか」
「それでリゼ、街の方ももう十分なら、そろそろ城に戻っても良いわよね」
「あっ、そうですね。私もお父様に心配を掛ける訳にはいきませんし、そろそろ戻りますか」
と、一同も会計を済ませてレストランを出るのだった。
リリネット城、謁見の間
リーゼロッテを送り届けたエミリア達も、挨拶に入っている所だった。
「皆の者、リゼに付き合ってくれてありがとう。お陰でこの子も楽しむ事が出来た」
「いえ、こちらこそ、彼女のお陰で今のこの国を見て回る事が出来て、とても有意義な時間でした」
「そうかそうか。其方達にとっても有意義な時であったか。それは良かった」
「皆さん、今日は私の暇潰しに付き合ってくれて、ありがとうございました。今度、そちらに遊びに行った時にも、是非ともお願いします」
「いえいえ、お安い御用よ。私達もいくらでも付き合ってあげるから」
「ありがとうございます!…所で、その、カイトさん…。良ければ、私と2人で街を回ったりとか…」
「うん、いいよ。僕もいくらでも付き合う」
「ありがとうございます!その時は是非お願いします!」
と、顔を綻ばせているリーゼロッテを見て、エミリア達もひそひそ話をする。
「あれ、デートのお誘いだよね?」
「しかもカイト、全然気づいてないよね?」
「恐らく、友達同士の付き合い程度にしか思ってないんでしょう」
「これはまた、リゼも苦労しそうだな」
「っと、それじゃあ、私達はこれにて失礼します」
「うむ、また来てくれ」
と、エミリア達も退室、アルテミシア王国へ帰還するのだった。
翌日、"天の笛"本部、修練所
ジルティナは様々な属性魔法を付与したソードビットを飛ばし、空中を不規則に漂うボールを、追尾させて撃ち落とす。
「…ふむ。総一郎のソードビットとフェミンのホーミング、確かに使えますね」
「あの2人を取り込んで得た力、問題なく使えてるみたいね」
と、後ろからケールが声を掛けてくる。
「えぇ。あの2人は私から見ても、人格に問題はありましたが、力は本物でしかからね。だから私が有効活用しておこうと思った次第です」
「そりゃあ、下手な相手に使わせるよりは良いか。…所で隊長、また背丈と胸、大きくなった?」
と、ケールもジルティナの僅かな変化に気付く。
「えぇ。こればかりは私の融合の副次的作用な為、致し方ありません」
「確か取り込んだのが男の場合は体格、女の場合はプロポーションに出るんだったわね」
「そうです。お陰で服も軍服だけでなく、オフの服に至るまで、細部調整しなくてはなりませんから。それで急いで新しい軍服を頼んで、今度のオフの日に新しい服を買う事にもなりました。それにフェミンの記憶によると、彼女、あの時無断でファルマータに行ってたみたいです。そのせいで、リーゼロッテ王女を経由して、リリネット王国に我々の事が知られてしまったので、またそこの支部にも警戒態勢を通達しておかなければならなくなりました」
「そうなの。…所で隊長、今度のオフの日は、私と一緒の筈よね?折角だし、私と一緒に街を出かけましょうか?服の新調、私も付き合ってあげるわよ」
「確かに、これと言った用事もありませんし、そうしておきましょうか」
「決まり!それじゃあ、私もとびっきりの服をコーディネートしてあげるわよ!」
こう言った会話をしながら、2人は修練所を出るのだった。
アルテミシア城、エミリアの執務室
エミリア達は、ハルトマリーからある報告を受けていた。
「ダブリスの人達の分離の目途が立った?」
「そう。街の人達の融合が不出来だったのが幸いしてね。それで先生もマーシャとの共同作業の下、肉体と魂の分離の方法を立てられたって」
「分かったわ。私の方でもアルベルトお兄様に話を通しておくわ。…って、カイト?」
と、一同は何かを考え込んで様子のカイトに気付く。
「どうしたの、カイト?何か考え込んでるみたいだけど?」
「いや、今の話を聞いてる最中に思い出した事があって」
「思い出した事?」
「ほら、ウェインも言ってたでしょ?"天の笛"に姉さんの事がバレたのは、向こうの死霊術師が姉さんの魂を調べたからだって。よく考えて見たら僕達、その死霊術師の事、全然知らないよね?」
「あっ、そう言えば、まだ表舞台にも顔を出してすらいない様な…?」
「今の所、本格的に動く気はないみたいだけど、一応警戒はしておきましょう」
こう言う会話をしながら、エミリア達も書類を片付けておくのだった。
"天の笛"本部
ジルティナとケールは1人の団員の私室にノックして入る。
「失礼します。セネリア、明日のオフの日、貴方も一緒に街に出ませんか?」
「…良い。部屋に籠ってる」
と、ベッドの上で座ってる白髪のセミロングのたれ目の美少女が答える。
「全く、貴方は仕事が無い時はいつも部屋に籠ってばっかりで。たまには外に出なさい」
「嫌だよ、人前に出るだなんて。絶対に嫌な目で見られるよ」
「大丈夫よ。貴方可愛いし、ちゃんとおしゃれすれば、皆褒めてくれるわよ」
「ケールの言う通りですよ。それに貴方も少しは運動くらいしたらどうですか?」
「そう言うジルティナこそ、何で私に構うのさ?死霊術くらいしか取り柄が無い私なんかを」
「それは貴方がティナ、私の今の姿の基になった少女に似ているのと、貴方の事、妹みたいに思ってるからです。それであの墓地の近くの小屋で引き籠ってたのを見つけた時から、放っておけなくなったんですよ」
「本当、隊長も面倒見が良いんだから」
「…分かった。美味しい物食べさせて貰えるなら」
「はいはい。貴方こそ、ちゃんと人付き合いを大切にしながら、仕事して下さいね」
と、3人も明日の予定を立てながら話し合う。
"天の笛"も、別に非情な者達ばかりではない事が分かる一幕であった。
"天の笛"の小休止。




