第106話
リリネット王国来訪の一方…。
エミリア達は現在、魔導列車に乗ってリリネット王国に向かっていた。
リリネット王国は、人々が心穏やかに過ごせる様、あらゆる面での整備や開拓が行われている国である。
アルテミシア王国と同盟を結べているのも、お互いの理念が共感し合えるものだからである。
そしてエミリア達も列車を降りた後、駅でリリネット城の手配した馬車に乗って城へ直行。
そこから城の兵士の案内の下、謁見の間へと入室した。
「よくぞ参った、エミリア王女一行」
「国王陛下、お招きいただき、感謝します」
と、エミリアとアラタも代表として前に出て、エミリアはカーテシー、アラタはボウ・アンド・スクレープでお辞儀をする。
「良い、面を上げよ。…では、先に述べた通り、再びお互いの国を気兼ねなく訪ねられる様にする為の、警備、公益、外交等の諸々の手続きが、ようやく完了した。これでお互い、昔の様に気軽にそれぞれの城へ来訪出来る様になった」
「陛下のご配慮の数々、私からも代表して、感謝を申し上げます。では、私の方でも国に戻り次第、父によろしく伝えておきます」
「うむ、よろしく頼む。後、折角だから、この城が7年間でどう変わったかも見ていきなさい。リゼも城を案内したくて仕方がない様だから」
と、リリネット国王の傍らで控えていたリーゼロッテが駆け出し、エミリアに抱きつく。
「エミリアちゃん!」
「うわっと…!」
「久しぶりに来たんですもの!折角だからゆっくりして下さいな!」
「もう、リゼったら…。それじゃあ、城を案内して貰えるかしら?」
「はい!」
「後、王女たるもの、ちゃんと慎みと言う物を持ちなさい」
「あぅ、気を付けます」
そんな中、リーゼロッテはカイトの視線に気づき、エミリアとこそこそ話をする。
「…あの、エミリアちゃん。聞きたい事があるんですけど。カイトさんって、お胸が大きい方がよろしいのでしょうか?ほら、エミリアちゃん達を見てると…」
「…あぁ、成程。大丈夫よ。カイトはそこら辺気にしないし。何より、リゼも十分魅力がある事は確かだから」
「そうなのですか。安心しました」
「ほらほら、気を取り直して案内」
「あっ、そうでした!」
と、リーゼロッテは扉へ足を進める。
「では皆さん、お城を案内しますね!」
「よろしくね、リゼ」
「あっ、そうだ、お父様。折角だから街の方も案内してもよろしいでしょうか?」
「はっはっはっ!仕方のない子だ。構わん、行って来なさい。後、必ず我々の目の届く範囲にいる事」
「はい、ありがとうございます!と言う訳で皆さん、早速行きますわよ!」
「もう~落ち着きなさいな」
「それ程までに嬉しかったんだろう」
「カイトもちゃんとエスコートしてあげなよ~!」
「何で僕なの!?」
と、一同は謁見の間を退室していくのだった。
"天の笛"本部
フェミンと総一郎は現在、ある事に関する話をしていた。
「ねぇ、総一郎君~?君さぁ、こんな話に興味ない?」
「内容によるけど、一体どんな話?つまんない物だったら、僕は乗らないよ?」
「下剋上。ほら、ジルティナ隊長、カラドボルグを持ち出していたにも関わらず、この前の決闘でエミリア王女に負けたでしょ?流石の私もついていく気が無くなっちゃってさ~。総一郎君だって知ってるでしょ?私は元々、組織に忠誠を誓ってる訳じゃないって。だからこれを機に組織を乗っ取っちゃおうかな~って。君だって元々私と同じ考えでしょう?」
「うん、そうだね。僕も元々忠誠を誓ってる訳じゃないし、いいよ、乗ってあげる」
「ありがとね~」
「…で、どうするのか、手立てはあるの?」
「それはね~」
それから、ジルティナが通路を歩いていると、後ろから総一郎が声を掛けてくる。
「ジルティナ隊長~!」
「…総一郎?一体どうしたのですか?」
「実は新しい戦略を考えたんですけど、見て貰いたくて」
「分かりました。では、これから見てあげますので、修練所に向かいましょう」
そう言って2人は修練所へと足を進める。
そして総一郎も付かず離れずの距離を保っていた。
(…良し、隊長は完全に油断してる。これなら…フェミン、今だ!)
<OK!>
と、総一郎の腹からフェミンが飛び出し、ジルティナの背中目掛けて突っこんでいく。
(さぁて、隊長さん!これからは私が貴方の代わりにこの組織を…!)
と、その時、ジルティナがすぐさま振り向き、フェミンの頭を掴んで、足元へ叩きつける。
「がはっ…!」
「何でだ!?不意打ちは完璧だった筈!?」
「貴方方の考えそうな事など、私には最初から分かり切っていました。そう、初めて会った時から、いずれ謀反を起こす可能性は見えていたと言う事です」
そしてジルティナは2人を影のロープで縛って修練所へ転移、そして2人を転がしていく。
「さて、貴方方は組織への反逆行為を行いました。これから体罰の時間と参りましょう」
状況が悪くなったのを悟った総一郎はすぐに起き上がってソードビットを展開。
ジルティナの真上から降り注がせ、その場に土煙が舞っていく。
そしてジルティナの周辺をソードビットとホーミング弾が飛び回って襲ってくる。
これをジルティナは冷静に対処しながら防ぎ、土煙も晴れていく。
そこから総一郎が突き出した剣をジルティナも防ぐ。
「ふむ、奇襲としては及第点と言った所でしょうか」
「その上から目線、本当に気に入らないなぁ!」
ジルティナは総一郎を大きく弾き飛ばし、光の刀身の突きを繰り出す。
総一郎も突きを受け流し、大きめのソードビットを飛ばすが、ジルティナも叩き落す。
そしてジルティナが頭上を見上げると、ソードビットと魔力弾で埋め尽くされていた。
「流石のアンタでもこればかりはしょうがないだろ!?」
「だからこのままやられて、貴方のその地位を私に渡しなさい!」
「…はぁ、舐められたものですね。この程度で私に勝った気でいるなど」
ジルティナは刀身に魔力を帯びさせ、剣を地面に突き刺す。
そしてその場を中心にドーム状の魔力が展開、ソードビットと魔力弾を全てかき消す。
その余波で地面に仰向けに倒れている2人に、ジルティナは静かに歩み寄る。
「これで分かったでしょう?貴方達が私の足元にも及ばない事が。別の世界に来た高揚感と、元の世界に無かった力を得た優越感でいい気になってた様ですが、貴方達の力など、所詮はこんなものなんですよ。言っておきますが、今の私はまだほんの序の口程度しか力を出していません。貴方方の世界にも、こんな言葉がある筈でしょう?"井の中の蛙"と。今の貴方方は正にそれです。因みに、私だけでなく、他の幹部や双性者上位陣だって、これくらいの力はちゃんと備わってますし、あの陽光の姫君と星空の勇者だって、もう既に本気の私と同じレベルの強さに達していますよ。…さて、お喋りももうここまでにして、貴方方に相応の罰を与えましょう」
団長の部屋
ジルティナは総一郎とフェミンの処罰を報告していた。
「…と言う訳で、あの2人は一旦、魔力封じの拘束具を付けた上で、結界が施された牢に投獄しました」
「そうか。ご苦労だったな」
「いえ、礼には及びません。当然の事をしたまでです」
「やはり人間である以上、こう言う事は起こり得て当然と言う事か」
「そうですね。このままにしても、また同じ事をやるだけなのは目に見えてますし、もう融合の素体として使ってもよろしいのでは?能力は引き継げる筈でしょう?」
「そうだな。では、他の者にもそこら辺の指示を出しておいてくれ」
「はっ!では、私はこれにて失礼します!」
そう言ってジルティナは部屋を退室していった。
「…全く、これだから人間と言う者は気に食わないんだ。そう、何時の世も、どんな世界だろうと、それは変わる事はない」
総一郎とフェミンも、結界が張られた牢の中で、拘束具に繋がれていた。
「…まさか、あれが真の強者と言う奴か。完全に見誤ったよ」
「そして私達も、謀反に失敗。これから処刑される身となった次第だよ」
「あ~あ、結局僕らの人生碌な物にならない事に変わりはなかったってか」
「そうだね~。まぁ、好きにやらせて貰えた分だけでも良しとしておこうよ」
「それもそうだね。そんじゃあ、ここらが僕らの幕引きと言う事で」
そう言いながら、2人は牢の中で諦めの雰囲気を出しながら黄昏ていく。
こうして、"天の笛"の不穏分子は排除されるのだった。
"天の笛"も一枚岩じゃない。




