52 ガ
「今年は隣町に行けるかもしれない」
のんきに話しているとサクマさんが一本の木を凝視していた。
「どうしたの」
センカがのぞきこむと、木の枝には黄緑色の幼虫が。
「う」
とっさに目をそらす。
しかし、サクマさんはナイフで枝ごと採集していた。
「どうしたんですか?」
「センカちゃん、これ、ヤママユガだ」
ヤママユガ、センカだって名前はくらい知っている。
「糸が採れるんですか?」
「多分」
サクマさんはその木の枝をワサワサかき分け、同じようなイモムシを捕まえながら近くの兵士を捕まえる。
「すみません、この木って城の近くにもありますか?」
「似たようなのはあると思います。クアモさんならくわしいですよ」
サクマさんは育てる気だ。
「ヒメコ、私たちであの木を探そう」
「えええ、私、虫ダメなのに?」
翌日、センカは無理やりヒメコを城から引っぱり出す。
「このままサクマさんがルーギルのお嫁さんに選ばれてもいいの!」
マユガから採れる糸は絹の原料だ。彼女1人に成果をあげられるのはまずい。
強く言い聞かせるとヒメコも渋々馬に乗った。
「こんな木じゃなかったよねぇ‥うぎゃああ」
いろいろ若木を見て行ったら、雑多な幼虫を見つけてしまった。
「も、もう嫌あ」
ヒメコは涙で顔をぐしょぐしょにしたが、センカは毛虫にずいぶん慣れてしまう。
「ヤママユガの幼虫は見つかったから、この木を持って行けばいいよね」
廃村と同じ木を見つける前に同じイモムシを見つけ、それがついている木を切って持って帰った。
「そうそう、この蛾はこれらのニセオークやオオアカシアの葉にいますね」
クアモさんから解説を受ける。
木箱をもらって枝ごと入れ、観察することになった。
「ねえ、虫の世話をしなくちゃいけないんだったら、ハチのほうにしようよ」
ヒメコに泣きつかれ、センカは養蜂用の巣箱も点検しに行く。
「やった、ハチがいる」
「これでハチミツが採れるわ」
護衛としてついて来てくれたルーギルも感心してくれた。
「見事ですね。本当に成功するとは」
設置した10か所のうち、2か所で営巣を確認できた。
「でも採っていいのはもっと後だよね」
「まあ、花が多い場所に巣箱を移動するとかやることはあるし」
蜜蝋を利用したハンドクリームはもうあったので、冬の間は重宝した。
「蜜蝋で何か作るってのより、もっとたくさん採れるように‥安定供給? を目指した方がいいかも」
ヒメコの提案にセンカもうなずく。
「来年の春、この木箱の側にもっと箱を置いてみよう」
時々の見回りを続けていると、5個の木箱に追加の営巣があった。
「こんなに成功率が高いのは、さすがに魔法の影響だろうね」
やっと魔法の恩恵を受けたようだ。
クアモに報告すると喜んでいた。
「魔法の効果はまだ未知のことが多いので、引き続き観察をお願いします。僕が見に行ければ良いのですが、領主様のお仕事で忙しく‥」
彼は城で唯一の学者らしく、文官としても働いているそうだ。
ハチミツが採れる前に、ヤママユガが繭を作る。
「えっとお湯で煮るんだよね」
サクマさんがブツブツ言いながら絹糸を作り出そうとしていた。
「くそ、1個から採れる量ってこんなに少ないの‥ヤママユガの品種改良からやるしかない?」
まだ上手くは行かないらしい。
センカはヒメコを引きずって、イモムシ採取にいそしむ。
「繭の大きい蛾をかけ合わせればもっと大きな繭を作る蛾が誕生するはず」
30個ほどの繭から、6個を厳選する。
それ以外は湯がいたが、デカ繭はツルで編んだ網のカゴに入れ羽化させる。
手のひらくらいの大きさの蛾にはセンカもサクマさんも引きまくった。
ヒメコの表情なんて凍っている。
「ま、まあ、これだけ大きければ糸もたくさん採れるよ」
サクマさんが遠い目をする。
ストックが切れましたのでまたしばらくお休みします。
キリが悪くてごめんなさい。
2章の最後まで行きたかったのですが‥半年後くらいに再開したいです。




