49 冬が来る
キャラ紹介
クアモ ルーギルの友人 日本人組みに魔法やこの国の知識を伝えている
「飲まなかったワインは蒸留します」
サクマさんが決定した。
「ワインは酸化防止剤を入れないとお酢になるからです。そして酸化防止剤の作り方など私には分かりません」
そう言われたら大人たちも断らなかった。
センカとヒメコはアルコール製作がしたいから文句など言わない。
センカたちは交代で訓練を休み、ひたすらワインを蒸留した。
ちなみにワインを蒸留してできるのがブランデーらしい。
「もしかしてさ‥ワインをお酢にしたくなくて、ブランデーって誕生したんじゃ」
「そう、なのかもね」
ブランデーだぁと叫んでる大人たちを見て、センカとヒメコはコソコソ話す。
収穫祭の後は町に人が増えた。
「それは冬だけ町で暮らす農民がいるからですよ」
座学の時クアモに聞くとそう返ってくる。
クアモによると、冬は雪で身動きが取れなくなるので、農民の大半は冬だけ引っ越してくるらしい。
「町の空き家や倉庫が全部埋まるのが冬です」
そして冬の間はそこまで魔獣を警戒しなくて良いようだ。
「作物は取り入れましたし、家畜は冬中小屋で過ごします。魔獣がいなくなるわけではありませんが追いはらう必要性が減るのですよ」
しかし、とクアモは続ける。
「冬は退屈ですよね。吹雪の間は外出が全くできませんのでみな鬱々と過ごします。こちらではチェスが人気ですが、皆様の世界ではどう乗り切っているのでしょうか」
センカはうなった。
(確かにマンガもテレビもネットもない世界で仕事もなしにどうするんだ)
「編み物とか?」
「それでしたらこちらの女性と同じですよ」
ヒメコがせっかく提案したのにもうやっていることだった。
「勉強も‥もう基本は教え終わってしまったので、この時間にできることは物語の朗読や礼儀作法の練習くらいでしょうか」
センカたちが来てから、この国の成り立ちとか魔法についてとかたくさん学んだ。
クアモが異世界で困らないよう教えてくれたが、もうネタ切れらしい。
(魔法に関する知識が少なすぎるんだろうな)
「おはなし会とかどうでしょう」
あんまり活躍したくないセンカだが退屈するのは避けたい。
「私たちお互いに知っている物語が違いますよね。毎晩1人ずつ披露するんです」
「なるほど、興味深い」
「僕、トランプくらいなら作れますけど」
オオチ君も手を上げた。
彼は植物紙の研究をしているが、まだ完成には遠い。薄く切った板を用意してもらう。
「絵札は難しいから数字だけにしたい。マークをたくさん描くのも大変なので1つずつがいいかと‥」
オオチ君主導でトランプが作られた。みんな広間のテーブルに集まり作業する。
数は1から9まで。
「板だから持つのも重いし、数は少ない方が良いと思うんだ」
オオチ君の考えにみんな賛同した。
ヒメコはジョーカーの絵を描いている。
どう見ても道化師ではなくてかわいい猫ちゃんだけど。
「1枚だけ違うのが分かればいいんでしょ」
センカが笑うとヒメコはふくれている。ルーギルはそんな彼女を愛おしそうに見守っていた。
2人の仲は、収穫祭から急激に近づいている。
寒い日の外出では、ヒメコはルーギルからもらった手袋をはめ、フードをかぶっていた。
見るたびにセンカはニマニマしちゃう。
そしてとうとう雪が降る。
関東平野で降る雪とは規模が違った。
目が覚めると表は妙に明るいのだ。
「さっぶ」
震えながら窓の外をみると銀世界が広がっている。
「キレイ‥」
センカとヒメコは口をそろえた。
「冬は町の雪かきに当たります。陣営地の整備は春までお預けですね」
中庭ではルーギルたちがシャベルを抱えていた。
雪は積もりに積もっている。整備しない場所を歩くと地面の感触が分からないほどに。
センカたちも加わった。
これはこれで筋肉が痛む。
吹雪の日は建物内に閉じこめられる。音がうるさい。
頑張って作ったトランプは大好評になった。
ババ抜きに神経衰弱にポーカー。5組は作ったのに、全部使用中だ。
センカ考案のお話会も盛り上がる。
「私シンデレラにする」
「じゃあ‥オレは桃太郎でいいか」
「ネズミがカステラ焼く話にしようっと」
みんなでかぶらないように相談だ。




