47 ヒメコ 恋心
ヒメコ視点です。
ヒメコには悩みがある。
全部上げればキリがないが、目下の悩みは好きな人がふり向いてくれそうにないこと。
(もしルーギルさんが、もし私のことも少しは意識してくれてるのなら)
時々、ヒメコは寝る前にそんなことを想像してはため息をつく。
「センカはルーギルさんのこと、どう思ってる?」
一度センカに聞いてみた。
もし両想いだったらあきらめようとして。
「観賞用」
センカはカラッと答えてくる。
ヒメコはさらに苦しくなる。
(さっさとあきらめられたら楽なのに)
センカは魔獣と戦っている。
サクマさんはフワフワパンを作り出すことに成功した。
ニシカワさんは食生活改善だけじゃなく、看護師の経験を活かして衛生指導も行っている。
アダチさんは森に埋もれていた果樹園を発見して、タジリさんはプレハブ方式の建築を伝えている。
ホテイさんは前線にログハウスを作ったしオオチ君は植物から紙を作る製法を模索している。
何もできていないのはヒメコだけ。
治癒魔法は頑張っているけれど、回復がゆっくりすぎて本当に効いているのか不安になっちゃう。
(何で私には何もないのよ)
せっかく異世界に来て素敵な人と出会えたのに。
心が痛い。
「同情しないで! ルーギルさんはセンカのことが好きなんだからつき合えばいいじゃん!」
センカとまたケンカした。
センカは多分ヒメコの気持ちに気がついている。
ヒメコとルーギルさんを二人きりにさせようなんて無駄なことを計画していた。
これ以上センカが変な気を回さないように。
これ以上ヒメコ自身が傷つかないように。
(告白しよう。で、フられちゃえ)
もう振られたと言えばセンカだっておせっかいはしないはず。
「ヒメコ、欲しい物はない? 他の人のために作りたい物でもいいから」
翌朝、ヒメコの決心など何も知らず、センカは無神経に思いつきを口に出していた。
「化粧水の材料にエタノールがあるけど‥ 蒸留酒でもいいのかな?」
「それだ!」
適当に話を合わせていたら、化粧水を作ることを勝手に決められてしまう。
(まあ無理に恋愛させようとするより、こっちの方がマシかもね)
ヒメコも告白の決意がすぐに揺らぐ。
タイミングがまったくつかめない。告白するなら2人きりの時にしたいけれど、そんな瞬間はまったくないのだ。
(センカが頑張っても無理だったものね)
とにかく化粧水作りを進めたけど、功績は全員の物になった。
そして秋祭りが開かれる。
収穫祭で中庭は大盛り上がり。
みんなでお酒を飲んで料理を食べていた。
歌を歌った後、ルーギルさんはセンカの隣りにそっと寄りそっている。
見ていられなくてヒメコは城に入った。
(もう寝ちゃおうかな)
まだ暗くなるまでに時間はあるが、特にやることもない。
暗い廊下を歩いていたら通路を兵士がふさいでいる。
「あ~れ~ ヒメコさんだぁ」
男はかなり酔っぱらっているようだ。
「おやすみなさい」
男をさけて通り抜けようとしたヒメコだが、肩をつかまれてしまう。
「放してください」
「いいじゃん~ オレと一緒にいようよ~」
ヒメコは恐怖で固まった。
顔も名前も知らない男に、ここまでしつこく絡まれたのは初めてだ。
「む、無理です」
大声を上げたいのにかすれ声しか出ない。
逃れようとするも、逆に肩を抱かれてしまう。
(どうしよう‥ 誰か助けて)
「いや」
泣き出しそうなその時、兵士はヒメコから引き離された。
「何をしている!」
ルーギルさんだった。
「祭りで酔っているとは言え、嫌がる女性に無理強いはやめろ」
兵士はアタフタとその場から立ち去る。
ルーギルさんと、2人切りだ、
ヒメコの心臓はバクバクになった。
「申し訳ありません。祭りで浮かれた者が出たようです。ヒメコ殿はどちらへ?」
「えっと、もう寝ちゃおうかなって」
ルーギルさんのきれいな瞳がヒメコを捕える。
「それなら‥少しだけお付き合いいただけませんか?」
ヒメコはブンブン首を振る。
「も、もちろんです」




