43 蒸留と養蜂
キャラ紹介
サクマ レナ 生物専攻の大学生
ニシカワ スズカ 看護資格を持つ主婦 料理が得意
「あれ、今日の男性陣どうしたの?」
その日の訓練に参加した日本人組みは、オオチ君を除けば全員女性だった。
ルーギルもいない。
「三人とも兵士と一緒にブドウ畑をの手入れに行ったようです」
オオチ君は肩をすくめる。
以前見つかったブドウ畑の跡地を管理するらしい。
ワインが飲めるかも、と期待した酒好き勢は必死だ。
「動物に食べられないよう見回りするんだってさ」
夜に出る魔物はともかく、昼に出る小動物や野鳥には負けていられないようだ。
とりあえず、いつもの訓練メニューをこなしていたら、城にガラス職人が訪れた。蒸留装置の注文を聞いてくれる。
サクマさんとニシカワさんからアドバイスをもらいながら、何とか説明ができた。
後は材料を考えなくては。
「ワインはまだ無理だけど、いつものビールでできないかな」
ヒメコが小声で提案して、厨房に向かう。
「麦酒が欲しい? じゃあここじゃない。おいお前、ご婦人方を案内して差し上げろ」
料理長に言いつけられた少年が、近くの小屋に連れて行ってくれる。
麦酒は作るための専用の部屋があるらしい。
小屋に入るとプンと発酵臭がした。
おじさんが一人で作業をしている。
「麦酒なら出来立てがあるよ」
「あの、作り方を教えていただけますか?」
サクマさんが頼む。
「これが大麦を水に漬けたやつ。これから煮こむのさ」
煮こんだ麦を発酵させるとできあがるのだとか。
「今あるのは昨日仕こんだやつ。ひと壺くらいなら持って行きな」
で、とりあえず魔法蒸留を試すことになった。
サクマさんが麦酒の入った壺を傾け、口の部分に別の壺を斜めにくっつける。
「アルコールが気化してこっちの壺に移って、液化するイメージを作って」
理科の実験だ。
「正確性はないけど、いけるはず」
サクマさんが疲れたらニシカワさんが代わり、センカとヒメコの順で壺を回す。
壺の傾きを少しずつ変えていって、ほぼ床と平行になったところで止める。
壺いっぱいの麦酒から、コップ半分くらいの液体が採れた。
味見はニシカワさんだ。
ちょびっと舐めた彼女は首をかしげる。
「多少、濃さは上がっていますけど‥ おいしくはないですね」
「煮こんだのがダメなのかな?」
サクマさんも悩んでいる。
魔法蒸留は疲れるから、器具がそろうまでいったんお預けになった。
「化粧水って蒸留酒の他に何が必要?」
センカはみんなと相談。
「うーん、乾燥ドクダミとかユズの種とか。グリセリンがあればいいけど‥ ないよね。あ、蜜蠟は? ミツバチがいれば手に入るかな」
城の食事でハチミツは出たことがある。つまりは養蜂が行われている、とセンカは思っていたのだが。
「蜜蝋は知ってますが、ヨウホウ? は初めて聞きましたね」
ネミは知らなかった。
城に出入りする女性たちも同じ。
「ハチミツって言ったら木のうろにあるハチの巣からとってくる物さね。巣が見つかったら採ってきてやるよ」
養蜂がまだない。蜜蝋が手に入るかは運任せ。
センカは切りかえた。
「ヒメコ、蜜蝋は一度あきらめよう。まずは養蜂から始めなきゃ」
「私養蜂なんて知らないよう。虫嫌いだし」
ヒメコは青ざめるけど、その程度で許してあげるセンカじゃない。
「大人組に聞いて調べよう」
二人で手分けして情報を集めた。
意外とホテイさんがくわしかった。
「俺子供時代にテレビで見てあこがれたんだよ」
必要なのは巣箱と六角形の網がついた木枠。
職人への発注も全部ホテイさんがやってくれた。
(あれ? これじゃまたヒメコの功績にならないんじゃ)
気がついた時にはもう遅い。
「分蜂の季節は春だから今からじゃ無理だよ」
サクマさんには厳しい意見をもらったが、ハチの巣箱が5つできあがった。城の中庭で薬草を育てているから2つ置いてみる。
「森にも持って行ってみるか」
残りの3つは前線基地の近くに置いた。間伐した林には日光が入るから花も咲いてなくはない。
網なしの、ただの木箱も5つ設置する。
ハチがどっちを好むかなんて分からないのだから。置く場所も少し変えてみながら。
養蜂はまだ道半だ。
誰かがハチの巣を見つける方が早いだろう。
久しぶりに鉄腕ダッシュを見ました。タイミングバッチリですね。




