42 化粧水を作ってみよう
「問題はヒメコが全然活躍できてないことなんだよな」
センカを含め、みなそれなりにこの世界の役に立っている。
しかしそれではヒメコが目立たないのだ。
そしてヒメコが目立つ功績を上げなければ、ルーギルはたぶん告白しない。
貴族の告白は即婚約だし、婚姻は全部政略で決定されるのだろう。
何か、何かヒメコの功績を至急上げなければ!
現代日本のチート知識で何とかなるやつが!
ケンカした翌日、センカは空気も読まずにヒメコへ突撃した。
「ヒメコ、欲しい物はない? 他の人のために作りたい物でもいいから」
「‥さあ。ニシカワさんは蒸留装置が欲しいって言ってたけど‥」
ヒメコは空気を読めるけど答えてくれた。
(蒸留装置‥ ガラスとゴムだよね)
センカは考えこむ。
ガラスはある。広間の正面と奥にはガラス窓があるから、ガラスを扱う職人もいるかもしれない。
(ゴムはどうなんだろう?)
前の世界では確かゴムはアメリカ大陸から移って来たような‥
「でも蒸留酒って昔からあったから、ここの技術でも可能なはずで」
センカの独り言に、ヒメコもハッとした。
「化粧水の材料にエタノールがあるけど‥ 蒸留酒でもいいのかな?」
「それだ!」
化粧水、それは異世界転生物でもテッパンなアイテムだから、この世界の文明レベルでも可能なはずである。
その日から2人の蒸留酒造りがスタートだ。
ヒメコはちょっとだけ不満顔だったが、肌荒れが解決するかもしれないので乗ってくれる。
部屋付きメイドのネミがいつものように朝食のパンを持って来た。
「まずは蒸留酒や蒸留器があるかどうかのチェックから」
パンを食べながら計画を話した。実はもうありました、なんてオチは嫌だから。センカは料理長、ヒメコはルーギルにと役を決める。
「ジョーリュウ? 知らんねぇ」
「じゃあ、すごく強いお酒はありますか?」
「ワインは麦酒より強いだろ」
ワイン以上に強いお酒を、料理長は知らなかった。
おそらくまだこの国には蒸留酒がないっぽい。
訓練場に向かうと、ヒメコがルーギルと話している。
お互い距離感を測りかねているようだ。親しい様子には見えない。
「ないって」
ヒメコとセンカはそれだけ確認し合って訓練を始めた。
「ヒメコちゃんたち、ちょっといい?」
ニシカワさんとサクマさんが声をかけてきた。
「昨日の夜、あなたたちケンカしていたけど大丈夫?」
「ここって部屋の壁薄いから、全部聞こえちゃった。ごめんね、でもこれから気をつけて」
ヒメコもセンカも恥ずかしくて下を向く。
まさかそこまで音が通るなんて‥
2人とも無心で剣を振った。
「町にはガラス職人さんがいるから、呼び出してくれるみたい」
10時のお茶でくわしい情報を話し合う。
「でも私、科学はそこまで得意じゃなくて。サクマさんとかニシカワさんとか、理系の人の方がくわしいんじゃないかな」
「じゃあ聞いてみようよ。とりあえずヒメコがリーダーなら構わないから」
ヒメコはあたふたする。
「私にリーダーなんて、無理だよう」
センカは蒸留について夕食時にみんなへ相談してみる。
「魔法でできたよ」
サクマさんの言葉で、センカはテーブルに突っ伏した。
「その手があったかぁぁぁ」
「まあまあ、大量に作るのなら、器具はあった方がいいよね」
サクマさんはツボを使ったらしいが、中が見えないのでどのくらいたまったかは一々確認する必要があったらしい。
「魔力は使い切るし腕は疲れるし、すぐあきらめたんだから」
だったらやはり器具を新調してもよさそうだ。




