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ライブ、無事に終われたー……!! 高橋さんの書いた歌詞、聞いてるだけでメンタルごりっごりのごりに削れたけどどうにかボロを出さずに済んだぞ!!
ステージ上から見た感じみんな大満足、って感じだったし……ファンもいっぱい増えたんじゃないかな、これ。ふふふっ……チケットも全部売れること増えてきたし、ゾディアック・クラスタ目当てに見に来る客も増えてきたしで未来は明るい!! あくまでゾディアック・クラスタの、だけれども。
汗びっしょりで後片付けをして、そくさくとステージも楽屋も降りた私達は……観客席……基本立ち見だけど観客席でいいのか? にいた。
来てくれた人達にハイタッチ。次の人が演奏開始するまで、求められたらファンサくらいはしないとね。
「やっぱり凄いですね永井さん! お嬢の力強い歌声もそうですけど、それを支える……どころか突き飛ばすような演奏!! なんというか、殺意みたいなのを感じられて……!!」
「それ褒めてないよね!? まあとにかく、お疲れー……何度も見てるのに本当凄いよね、永井さん達のバンド」
「あ、あはは……あり、ありがとうございます」
犬鳴さんと佳賀里さんに褒めていただきニヤニヤが止まらない……いつも来てくれるんだよね、この二人。ありがたいことですよ本当……。
おかげで高橋さんと私のチケット確定で一枚売れてるからね!! 他にも同級生の子達で私のファンがいるのでその子達が買ってくれたりでぼちぼちそれなりに稼げてるというか、なんというか……。
「……あれ? 高橋さんは?」
「お姉さまですか? 見てませんが……」
「てっきり永井さんと一緒にいるものかと思ってたよ」
私と三人で、高橋さんの行方に首をかしげる。
ライブが終わってから速やかに片付けして先に二人と合流してるもんだと思ってたけど、どうもそうでないっぽい。
高橋さん、どこ行ったんだろう? ライブ終わって、撤収作業全部終わったらそくさくと抜けていったけど……。
「みちる、汗拭かないと風邪引くよ」
「わぷっ。りっ、りんさん……」
高橋さんを探していると、りんさんが後ろからタオルでがしがしと私の頭を拭いてきた。
意外と面倒見良いんだよね、りんさんって……こういうの案外面倒くさがりそうなものなのに。おかげで助かってます、毎日快適に演奏できてます。
「打ち上げどこでするー? かおるん何か嫌いなものとかあったっけ?」
「タコス屋でいいんじゃない? 近いし」
「ひとみんがバイトの賄いで食べてるし、それの付き合いでよく食べちゃってるからちょっとねー……」
「えっなにそれずっるい」
はくりちゃんと岡村さんが打ち上げ先について相談してるのを横目に、私は高橋さんの行方が気がかりになっていた。この二人はどうも高橋さんがどこにいるか興味無いっぽいし……。
……そうだ。りんさんって結構周り見ている人だし、もしかしたら高橋さんがどこ行ったか知ってるかも。
「りんさん、あのったかっ高橋さんがどこ行ったか、しり、知りませんか?」
「ひとみ? ひとみなら……男と一緒にライブハウス出てったのを見たけど……」
「男……? そういえば告白するとかなんとか言ってたような……」
そういえば思い出した。ライブで気持ち良くなってすっかり忘れてたけど、高橋さんなんか告白するとかなんとか言ってたわ。恋愛事全く人生に関わりないから忘れてたわ。
告白、告白かあ……お家柄的に恋愛結婚出来なさそうだけど……まあ学生恋愛なんてすぐ別れるもんだし、そこまで気にしなくてもいいのかな? なら見に行かなくてもいいか……。
って、あれ……? ……なんでりんさもはくりちゃんも私のを見て……。
「ちょっとなにそれ聞いてないんだけど!?」
「ほほう、ひとみがついに告白を……ほほう?」
「あの、その……」
「人の恋路に出歯亀は止めた方がいいんじゃないかな?」
はくりちゃんとりんさんがすっごい興味津々って感じの顔してるんだけど……えっ、この人達ってこんな恋愛事に興味持ってたっけ!? めっちゃくちゃ意外だ……。
いや、花の女子高生としてはこれがまあ普通か……逆に岡村さんはすっごい落ち着いてる感じがするけど。私と同意見っぽいけど。
「……これって上手くいったらうちら脱退するってことになるんかなー?」
「……みちるの面倒を見る人が減るのは少し厳しい」
「えっ……えっ、私!?」
「邪魔しに行ったらそれこそ抜けられると思うよ……」
邪魔、そうなんだよねえ……本格的に邪魔するのは当然として影から見るのも、それに含まれる可能性が普通に……。
って、なんか……古川さんがこっちに手招きしてる……。
次のバンドも準備を終えてMC始めたみたいだし、こそこそと抜け出して……裏口近くにいた古川さんに近付く。
すると古川さんがすっごい急激に顔近づけてきて、もう心臓ドクドクよ。
「裏で告白始まろうとしてるから静かに……って、他の子達も来ちゃったの?」
「てへっ、気になっちゃって」
「私も一応乙女だから……」
りんさん、一応なんて付けなくてもあなたはちゃんと乙女ですよ。
にしてもなんだこの小悪党みたいな笑顔。なにか盗み出すつもりなんじゃないか古川さん。
告白かあ……私としては、そっとしてあげた方がいいような気がするんだけども……まあいいや。私も気になるかどうかって言われたら、全く無縁の世界(気になる男性どころか毎日挨拶する男性もいない)だから気になるし。曲作りのインスピレーションになるかもしれないしね。
「……裏口、一般客使用禁止じゃなかった?」
「まあ……一応ライブやったから、関係者ではあるのかな?」
りんさんの疑問に古川さんが曖昧というか、ちょっとその理屈には無理あるくない? 的なこじつけを付けてきた。
私もちょっと思ったけど、思ったけど!! でもどうなんだろ、普段裏口とかアルバイトの業務でしか使わないからなあ。ゴミ捨てとかね、色々とやることがあるのよね。
なんて利用の是非についてどうかと考えていると、古川さんがそっと音を立てないようにドアを開けた。
これ音が漏れちゃうんじゃないかって心配になるけど、まあ上に建ってるのも店長さんのお店だし多少は大丈夫……大丈夫なのかな? わからん。
ううっ、嫌われたくないし気になるからついつい聞いてしまう私達を許してくれ高橋さん……。
「私……健司様に並べるよう、支えられるよう、沢山練習をいたしましたわ。貴方の横に立ちたい、貴方と並んで演奏したい、と……」
ドアの隙間から、高橋さんの震えた声を聞き取ることが出来た。
そういえばそういう動機だったなあ、と昔を懐かしむ私。最初は完全に初心者だったのに、よくここまで上達すること出来たなあ高橋さん……成長速度おかしくない?
「それが今日、自信をもって貴方の隣に立てると確信をいたしました。……どうか、わっ私と! 付き合ってください!!」
いっ、言ったぁー!! 高橋さん、言ったぁー!!
がっつり告白しおった、しおったで高橋さん!! よう言うた、それでこそ乙女や!!
半年以上の猛練習、そして幾度と踏んだ場数。決して楽な道のりではなかった……それもこれも、こうして告白をする為だったんだ……!!
さあ告白の結果はいかに……!?
「お前の気持ちは嬉しい……」
おっ、これは? ……いや、気持ちは嬉しいってことは……。
「……だが、俺はくろこを支えたいと思ってる。悪いが、お前の気持ちには答えられない」




