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私の身の回りで起きた事故だと思ってたのががっつり殺人未遂事件だったこと。しずるお姉さま……? に復讐の協力を持ち掛けられたこと。父親は私をうまく利用したいけど、ほぼ無理だろうからと始末したがってること。足立山さんが雇われだから私の面倒を見てくれてるわけじゃなかったこと。
なんか、前世も今世も合わせたところで精神年齢ガキのままな私が抱え込むには重い。あまりにも重い……!! 誰かにこれらを打ち明けて、少しでも気分を軽くしたい……!!
かといって学生であるバンドメンバーに話すわけにもいかない……。
「……バンドやってる場合じゃなくない?」
ライブハウス『TRITONE』で、昨日の出来事を店長さん達に話したところ、店長さんが困惑した顔でそう言った。私にもたれかかりながら電子タバコを吸っている秋さんも同じように頷いている。
私も話していて、薄々そうじゃないかなとは思ってたけど……やっぱりそうだよねぇ。私も薄々そうじゃないかとは思ってた。
殺人未遂の御家騒動とライブを両立するなんてまず無理! 両立難易度がイカれてるってレベルじゃないもん!! ただでさえ学業とライブ両立出来てない状態なんだから!!
ライブやってる場合じゃねえな私!!
「というか、命狙われてるってなんで言ってくれなかったの? 私ならみちるのこと、ずっと守れたのに」
「そっ、それは……そのぉ……」
じっとり、と私の事を見上げながら頬っぺたをツンツンしないでください秋さん。貴女の守るって言葉の中身は監禁っぽそうなのがちょっと……怖いんだよなあ。
いや、アリか……? 今でさえ足立山さんに養われてるような状態なんだし、それが秋さんになったところで……駄目だ飽きて捨てられる可能性考えたら、今の手に職が付いた状態の方が幾分かマシだ。
「……でさ、実際のとこどうすんの?」
「どっ、どうっって……?」
「いや、永井財閥って馬鹿みたいな金持ってる大企業でしょ? それこそ人殺したって普通にもみ消せるレベルの。どう復讐するってのさ」
「エブスタイン島?」
「流石にあそこまでじゃないけどね」
えっそんなに? そんなにとんでもない企業なの? 人殺してももみ消せるって何それ怖い……。
店長さんはこういう時くだらない嘘を言ったりしない。良くも悪くも素直で、気休めを言う事も大袈裟に言って脅かす事もしない。つまりは……そういうこと? えっ、ガチでヤバいグループじゃない永井財閥。本当に現代日本の企業?
というか私に聞かれても困るんだけど……あくまでやるって言ってるのはお姉さまだし。どうやってやるかなんて全然聞いてないし……。
まあ、私は私がやれることをやるしかないんだけどさあ。いやでも本当どうやって復讐するつもりなんだろうちの姉は。
まあ、私と違って勉強はできて私より頭のいい人だろうから多分なんとかするでしょ。うん、多分。
「そっ、それは……あねっ、姉を信じるしか……無い……?」
「……自分でも信じられないこと言っちゃ駄目」
ううっ、秋さんなんなのその、異様な察知能力の高さは。そりゃ昨日今日あったばかりの、体感だと赤の他人と変わらない姉を信じられるかって言ったらNOだけどさ!!
ただまあ、じゃあ今の時点で私に何が出来るかって言ったら何もできる事が無いんだなこれが。だって父親の顔すら知らないもん。見たことはある筈なんだけど覚えてないもん。通り魔的犯行すらできないもん。私がやっても確実に返り討ちに遭うからやらないけど。
「手が回らなくなりそうってなら、休んでも大丈夫だからね」
「あっ、はは……こっこのくらいなら、……大丈夫ですので」
「大人でもキツいと思う」
店長さんはそう心配してくれるし、秋さんは私の事抱きしめてくれる。
確かにこうして言葉にしてみるとやること一杯だぁーって感じがするけれども……今のところは全然何も起きてないからなあ。
正直まだ全然始まってすらいないから何もやってないも同然だし、確かに未来のこと考えると忙しくなりそうだなとは思うけど……このくらいならまだ全然大丈夫ではある。たまーに殺しにかかってくるけどまあ、しんどいのはそのくらいだし。
「まあ復讐に関しちゃ手伝うつもりはないけどね」
「じっ、自分のケツくらいはじっ自分で拭けますから……」
「言い方が不良」
秋さんそこは大目に見てくれてもいいんじゃない? というか不良ばっかだからなえうちのバンドメンバー、みーんな酒に煙草にだからね未成年なのに。メジャーデビューは諦めてるからいいんだけどさ。……いや、良くはないか?
実際、こうして話したとはいえ店長さんにも秋さんにも、ゾディアック・クラスタのみんなにも復讐を手伝わせるつもりはない。
あくまで私が、私の手で解決するつもりだ。みんなに迷惑をかける訳にはいかない。
みんなに……迷惑を……。
「……明後日のライブくらいなら多分大丈夫な筈……」
「……十一月には文化祭もあるけど、本当に大丈夫そう?」
「……あっ」
「みちるのとこの文化祭、十一月開催。余裕無いね」
「あっ、ああっ……どっどどっ、あっ」
わっ、忘れてたぁ!!!! 一応ライブの日は決行辞めてほしいって伝えたけど文化祭ライブはすっかりすっぱり忘れてた!!
どっ、どどどどうしよう……時間足りるかこれ? 明後日のライブは問題ないにしても文化祭の方も練習するとなると時間が……時間というより私の体力が持つかどうか……昔と違って身内が無理させない系の保護者なのが、なのが……!!
というか何この切り詰めまくったスケジュール!? 対バンライブのすぐ後に文化祭ライブ!? ああーもうどうすればいいのこれ……なんでいつもこう詰め詰めなスケジュールで私は動いて……前世の悪癖だなあこれ。
「……大丈夫かねぇこの子」
「だっ、大丈夫です……ライブだけは、必ずやり切りますので」
店長さんにすっごい呆れられてる。正直無理で無茶なんだけど、無理ですと言う事は出来なくなっちゃってるからそう答えるしかないのよ。
それに何より、優先順位は何よりもまずライブだからね。
「相変わらずだねぇ……」
「みちるのそういうところ、大好き」
店長さんは付ける薬もないと言わんばかりにあきれ返って、秋さんは私を抱きしめながら、そう笑った。




