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私以上に目つきの悪い、RPGとかバトルもののアニメで女幹部をやってそうな目が、じろりと私を見る。
ううっ、怖い……顔に大きな傷があるのもそうだけど、目つきが怖い……!!
「元気そうっすねーしずるお嬢様」
「……あんた、そんな口調だったっけ?」
足立山さんが私の頭に顔を乗せて、しずる……だっけ? お姉さま? お嬢様? に話しかけると、その目は少し狼狽えたというか、困惑したように開いた。
えっ、もしかして本家で働いてた時ってちゃんと話してたの足立山さん? と疑問に思って二人の会話を聞いていると……
「まあ、もうケイお嬢様とは上下関係は無いっすからねー」
「だからってそんな割り切れるもんじゃないでしょ。というか、メイド辞めて四年は経つのになんでまだメイド服着てるのよ」
「まーまー、細かいこと良いじゃないっすか」
すっごいぽろっとさらっと、他愛ない雑談のように爆弾的発言が投下された。
えっ、どういう……辞めて四年!? 四年って……結構な時間よ!? というかどういうこと? メイド辞めてるってことは、じゃあなんで足立山さんは私のお世話をしてるんだ……?
「はあ……えっと、その子、凄い困惑してるけど説明してあげなきゃいけないんじゃない?」
「説明? もうやってるっすよ?」
「……いや……えっ……!? せつっ……えっ……!?」
「全く聞いてないよって顔してるけど?」
「あれぇーっ!?」
いや足立山さんは驚く権利無いよ!? 私聞いてないもん、聞いてないもん全く!!
確かにね、思い返してみたら本家の方に連絡入れてるとこ見た事無かったけど!! なんか砕けた話し方してるなーとも最初の方は思ったけれども!! まさかもう辞めてるとは思わないじゃん!!
ほら、名前なんだったか忘れたけどお姉さまも呆れて何も言えなくなってるよ足立山さん!!
「よくやるわね……何の得にもならないのにそんなの置いて」
「お金入れてくれてるし家事手伝ってくれてるしで、金銭的な面でも全く損した事はないっすよ? むしろプラスになっちゃってるっす。……ウチは好きでお嬢と暮らしてるからいいんすけどね、渡さなくても……」
「えっ、あのっ……ええっ……?」
「……あんた、惚れた相手を駄目にするタイプの人間ね。というか働いてるの、この子が?」
お姉さまが呆れのため息と一緒に吐き出した言葉に、私も少し同意した。
足立山さん、思っていた以上にヤバい人だったっぽい……まさか私に何も伝えず私の事家に住まわせてたなんて……しかも発言的にどろっどろに甘やかしたいタイプ!! いやありがたいけどね、あの家で私の趣味に理解を持ってくれたの足立山さんだけだったし!!
私の保護者、というか同居人のまさかの秘密に驚いていると、お姉さまが本を閉じて、私の方をじっと睨みつけた。
「あっ、あのっ、何か……?」
「あんた、私の名前わかる?」
「えうえっ!? あっその、そ、あえっと……」
なんだっけ、何だっけ……この人の名前何だっけ……!? この病室に入る前に聞いたっきりだから全然思い出せない……!!
ううっ、怖いぞこの人……りんさんみたいなタイプと全然違う、普通に怖いタイプの人だ……!! もう帰りたい、『TRITONE』に帰りたい……。
蛙を睨む蛇のようにじっと見つめられてどう答えればいいのか、素直にわからないって答えたら殺されるんじゃないかとびくびくしてると、不意にお姉さまがうんざりしたように息を吐いた。
「……でしょうね。あたしもあんたの名前を知らないし、あんたもあたしの名前を知らない。……血が繋がってるってのに、おかしな話よね」
「えっ、あっ……そうなんですか……? ……そっ、そうですか?」
「そっくりっすよー、お嬢としずるお嬢様は。お嬢の肉つき良いバージョンがしずるお嬢様っすから」
「あたしが標準的なだけでその子が痩せすぎてるだけだからね!!」
……確かに、言われてみれば私に似てるような気がしないでも……いや健康的な肉つきしてるなお姉さま。髪もさらっさらだし、骨ばってるところが全く無い。胸もちゃんとある……。
本当に同じ人間か、この人……?
「というかちゃんと食べさせてんの? えっと……名前なんだっけ」
「あっ、みっみちるです。永井みちる……食べ物はその、まっ、毎日食べさせてくれています。ただ……わっ、私が毎朝吐いちゃうだけで……」
「そう。あたしはしずるよ、覚えておきなさい……って毎日吐いちゃうの!?」
「あっ、足立山さんは悪くないです! あのっ、私が悪いんです!! 私の問題が原因ですので、はい!!」
「お嬢その庇い方は不味いっす! その言い方だとウチがDVやってるみたいじゃないっすか!!」
えっ、そうかな……? うわっお姉さま、えっと……しずる、だっけ? がすっごい目で足立山さん睨みつけてる。すっごい怪しんでる。
でも本当だよ、足立山さん悪くないよ。私の前世が悪いだけで。こんなことなら記憶引き継がれなきゃよかったよ本当に。
「……まあ、今回みちるを呼んだことには関係ないから一端置いておくわ」
「そのまま廃棄してほしいっす、冤罪っす!!」
大丈夫だよ足立山さん、貴女かDVしてないってことは私の体が証明……食事を抜くタイプのDVもあるか……。
うぅん、確かに私の体の状態ってそういう風に訴えられたらそれで終わりなくらいではあるのかな? 実際のところはただ毎日吐いてるだけなんだけどね。
一端言葉を切ったしずるお姉さまは、じっと私を睨みつけて、口を開いた。
「あんたさ、見た所特に怪我はしてないようだけど、何か変な事起きなかった?」
「へっ、変な事……ですか……? そっ、そういえば……駅のホームでつき、突き飛ばされたり、おさっ押されて階段から落ちたり……くらい、ですかね? あっ、でっでも怪我とかは全然してないですよ! ねっ捻挫くらいなものですから!!」
「ですかねじゃないし、加害者が原因の捻挫は全然で片付けちゃいけないわよ!! ……はあ、あんたも面倒な事に巻き込まれてるわね」
私の横で足立山さんがすっごい目で見てくる……こう、自分を態セルにしろ的な感じの目を。心配してくれるのはありがたいけどここはスルーじゃスルー。前世のこと考えたら全然マシだからねこれでも。
というか、あんた”も”……? まるでその口ぶりだと、お姉さまも同じように誰かから被害を受けたみたいな。
そう疑問に思っていると、私達が入って来てからずっと見せていなかったベッドの下……布団の中に隠していた足を、外へと出した。
その足を見た瞬間、私と足立山は言葉を失った。
「……私も、あいつにやられてこの様よ」




