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 早朝、投稿した折に永井さんに、本日の放課後のギター練習はお休みにさせていただきたいと告げられいく数時間……ギター以外目に入らないというくらいギター好きだった永井さんがそんなことを言うなんて、と信じられないような、どこかぽっかりと心に穴が空いたような感じで過ごしておりました。


 ……だって、信じられませんもの。今まで私との練習を、怪我をした時以外毎日欠かさなかったあの永井さんが、今日に限って練習をお休みしたいなんて……おかしいですもの!!


 ということで(わたくし)は、屋上の出入口の屋根に身を潜めております。


「あの、お姉さま?」

「出歯亀するのはあまりよろしくないと思うんすけど」

「ですが、もしカツアゲなるものを永井さんが受けていたらと思うと……あの子、音楽関係以外ですと気が弱い子ですし……」

「お姉さまは永井さんの何なんですか!?」

「ママみたいなこと言うんすね」


 誰がママですの誰が。私が永井さんの母でしたらあんな状態なのを放置しておくわけありませんでしょうが。

 ……それにしても、いったい誰と待ち合わせているのでしょうか。ずーっと一人でギターを弾いていらっしゃるというのに、一向に姿を見せませんわね。これがもし永井さんに告白しようとしている方でしたら、上から踏んづけてやりますわ。


「いざという時は実力行使でいきますわよ」

「いや私揉め事はちょっと……」

「あっ、来ましたよ二人とも!!」


 加賀理さんの言葉に、私と犬鳴さんがベンチに座ってギターを弾いている永井さんの方に視線が向きますわ。

 さて、こうまで永井さんを待たせたのは一体誰なのか……と見ていますと、そこに現れたのは古川くろこさん、でしたわ……。


 いつもでしたらこの時間は軽音部で、ライブに向けて練習している筈ですのに……はっ!? まさか、私から健司様を奪うだけじゃ飽き足らず、永井さんまでもその毒牙にかけるつもりですわね!?


「姉さま、ステイ、ステイですよ」

「少し様子を見ましょう!」

「くっ、仕方ありませんわね……」


 この場は一端飲み込んでおきますが、もし永井さんにもその魔の手を差し向けようものなら……許しませんわよ、古川くろこ……!!

 ……ですが、遅れて来たということは、約束を取り付けたのは永井さんからということ、となりますわね。少なくとも、私の知る古川くろこは待ち合わせに遅れるような方ではありませんし……。

 ……あの永井さんが自分から声をかけられるようになるとは。感動ものですわ……。


「あっ、きっ来てくださりありがとうございます!」

「ごめんねー待たせちゃったみたいで。あと朝は本当ごめん! 私低血圧で毎朝調子が悪くてね……」

「あっ、いえ大丈夫です! ああいうのはその、慣れてますので……」

「あんま慣れてない方がいいもんだよそれ……」


 ……なんか、普通に友達っぽいですわね。私が健司様に恋をしているから分かるのですが、あの目は恋しているものとは違いますわ。

 となると告白する線も無し……永井さんは色恋の一つや二つあってもいいと思うのですが、現状音楽に恋しているといった雰囲気ですわよねぇ……。


 ……となると、告白の線は無し。永井さんから呼び出しているのでカツアゲ、という線も無し。ということは……確か古川さんってボーカルでしたわね……。


 ……まさか!?


「引き抜き……!? 私を抜いて古川さんを……!?」

「いやそれは無いと思いますけど」

「まず声質が違いますもんね、古川さんの歌声と」


 ……そうですわね。私を引き抜いたとなれば、私の声に合ったピッチ、速度にと色々微調整をしなければならなくなりますものね。

 でしたら……一体何なのかしら?


「それで、私を呼び出すって何の用なのかな? 既に私が知っていることは全部話したし、協力も……してくれるって訳じゃないんでしょ?」

「その説は大変申し訳ありませんでした」

「いやそこまで畏まらなくていいからね!? 永井さんにも譲れないものがあるってことだろうし、気にしてないから!! ……で、話って何?」

「げんっ原作知識のある古川さんに、すっ少し確認していただきたいことがありまして……あの、私原作ゲームの知識全然無いので……」

「確認したいこと?」


 原作知識、確認したいこと……永井さんから話を聞いた際は半信半疑ではありましたが、本当に古川さんも、永井さんと同じ生まれ変わり、なようですわね……古川さんも嘘をついているという様子はありませんし。


「原作? ゲーム? 何の話してんだあいつら」

「シェアワールド、ってやつでしょうか……?」


 空想の世界を互いに共有している、となると永井さんの反応が不自然になります。……ということは、永井さんの言っていたことは本当と言うことになりますのね……。

 ……正直、話半分で聞いていただけにショックですわね。まあ谷野さんとか角田さんとかの存在が、完全にゲームの中の世界であるということを否定しているのですが。


「あっ、はい。その……ファーストライブの時、来る途中で、かっ階段を降りている途中で突き飛ばされたというか、だっ誰かが私の背中を押したかんっ感覚と、わっ私の視界から消えるように動く人影を見たような気がするんですが……これっ、これって原作にもあったりしましたか……?」

「えっちょっとなにそれ!? 大事件じゃん!?」

「大事件じゃありませんの!?」

「えっ誰!?」


 私が聞いていたのだと、偶然ぶつかった程度の言い方だったのですが……不意にで永井さんを階段から突き落としてしまったのでしたら、助けに入るか茫然と見てしまっているかのどちらかの筈です。そんなすぐに消える様に動くことができるのは、故意に落とした人だけですわよね……。


 というか驚きの余りつい声が出てしまいましたわ。不味い、ここにいることがバレたら……ええい、やってやりますわ。


「くっ、クァーッ……クァーッ……!!」

「かっ、カラスみたいですね……」

「いや明らかに人の声だったような……まあいいか。前世の記憶なんて聞かれたって信じてもらえないもんだし」


 よし、誤魔化せましたわね!! なんとか窮地を脱することができたので、盗み聞きを再開いたしますわ。

 いや正直カツアゲとか告白とかじゃないってわかった時点でもう退散してもいいのですが、出ようにも出られなくなりましたので……。


 しかし永井さん、あの時は事故みたいな風に言っておられましたのになぜ隠し事を……多分事情聴取とかでギターを弾く時間が削られてしまうとかそんなんですわね。永井さんですし。


「正直防犯カメラとかちゃんと確認した方が良い案件だと思うよそれ……私にも、永井みちるにもそんなイベントは無かったね」

「そう、ですか……」

「うぅん……私が把握できてないイベント、いやイベントと言っちゃ駄目だねこれ。事件が起きている……とりあえず永井さん」

「はっ、はい?」

「これからは高橋さんとか、友達に送り迎えを頼んだ方が良いかもしれないね」

「あっそれはもう……たっ高橋さんに送り迎えしてもらうことになってますので……」

「…………過保護だね~高橋さんって」


 ……気のせいでしょうか。私達が隠れている方に視線を向けながら仰っていたような……いや気のせいではありませんわね! バレてますわ! あきらかバレてますわこれ!?

 くっ、カラスの声真似は完璧だった筈……なぜバレましたの……!?


「そりゃバレますよお姉さま……」

「思いっきり大事件じゃありませんのとか叫んでましたもん……」

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