東京魔術特区の学校生活(前編)
「魔法対策課...」
誰かがその言葉を呟いた。
「あれが『アセット級』...」
「おいおい、初めて本物を間近で見たぞ!」
さっきまで恐怖で支配されていた周りの乗客たちが、スマホのカメラを雫へと向け始める。配信を始める奴もいれば、SNSへと動画をアップロードし、いいねや金を稼ぐ。
そいつらにとって神楽雫は『いいネタ』になるだろう。
「クズばっかだな」小さく言葉を吐く。
実力社会か...
彼女...雫は初めから、まるでそんな奴等が存在しないかのように振る舞った。
...ただ、やはりバカばっかだ。
誰かがフラッシュを焚いた。
刹那、フラッシュを焚いた人が「ズバンッ」という音と共に倒れていた。さっきの閃光とは違う光が瞬いた。
「パチパチッ」とその男から静電気を食らったかのような音がした。
(あれは、魔剣の効果か?)
そんなことを思っていると「はぁ...面倒だなぁー」と目の前の少女は零した。彼女にカメラを向けていた人たちは、一斉にカメラを下に向け、そっぽを向いた。
なぜかわからない...だけど彼女は悲しそうに見えた。
「えー皆さん、魔法対...魔法襲撃...おさま...」
「ザーザー」とノイズ混じりのアナウンスが放送される。どうやら障壁は消えたようだが、まだ完全には復旧されていないらしい。
「とりあえず皆さん、次に止まる駅で降りてください」彼女の淡々とした声が車内に響く。
(アセット級の天才か...)
「まぁ...ぼくには関係のないことか」
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結局30分以上の遅刻か...
遅延証明書を片手にドアを開ける。
周りを見る限り、ぼく以外にも遅れてる人は数人いるようだ。いつもなら遅刻にうるさい教師も今日ばかりは、疲弊しているような気がした。
「ふぁー」っとあくびをしながら、いつも通りの席に座った。
少し時間が経ってから
「パンッ」と手を叩かれた
「──ほら、お前ら席に着けー」教室にひとつの声が響いた。
「授業が始まる前に、お前らにひとつ連絡がある。前から話していたが転入生が入ってくる」
「がらがら」と教室のドアが開いた。
姿が見えたと同時に教室が一気にうるさくなる。
(なんか嫌な気がするんだが)
そう考えた次の瞬間には「おいおい嘘だろ...」
「雫様だー!きゃー」っと言った声が聞こえてくる。
「転校してきた、神楽雫といいます。皆さんよろしくお願いします!」
(うん...まぁなんか、そんな気がしていたよ...)
「じゃあ神楽、とりあえず窓際の席に座っといてくれ」
「はい」彼女が短く答えた
雫がぼくの隣の席に座る。
「よろしくね。あなたの名前は?」
ぼくは少し躊躇って
「如月零呼び方はなんでも良いよ、というかなんで名前を」
「如月くんって、階級はいくつなの?」
いや、ぼくの質問は無視なのかよ...
「はぁ...」と溜め息をついた。
この世界の実力には、幾つかの階級に別れている。
一般的な高校生が属している『ライセンス』から始まり、高校卒業レベルの『アドバンス』アドバンス10人と同等またはそれ以上のレベルを兼ね備えた『エージェント』や『オペレーター』さらに上の『マスター』そして、
目の前の彼女が冠する『アセット』
まぁざっとこんな感じだ。ちなみにマスターには3、2、1とあって、数字が小さいほど強いらしい。
あとは『ゴースト』...要は未登録だ
「多分ライセンス級?」
「まぁ、そんなものよね」
「なんだ?嫌みか」
「気になっただけだから気にしないで!」
(こいつ人との関わりかたを知らないのか?)と内心で思うのであった。
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となりに座っている少女が話しかけてくる。
「ねぇ...授業は何をするの?」
気だるそうに「今日は実技がメインなはずだ」
「実技?」
小首をかしげる神楽雫。『アセット』である彼女が学校の実技を理解できるはずもない。
「大雑把に言えば魔法の精度や威力を上げるための授業だよ。」
「楽しそう」そう彼女がぽつりと吐いた。
その表情は本当に楽しそうにしてた...気がする。
「そりゃよかった」
ぼくはその言葉に対して生返事で返し、演習場に向かった。後ろからなんか着いてきている気がするが、まぁ気のせいだろう。
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演習場にはアーティファクト、
対防魔結界が張られているため基本的に壊れることはない...と思いたいが、「どうなんだろうな」と小さく呟いた。
「今日は今の実力を測るところから始めるぞ」そう先生が話すと同時に
「はーい、俺が一番乗りで測りたいでーす!」
「いや、ここは俺だろ」とふざけながら言うクラスメイトたち。
「わたしも測りたいです」小さな声で誰かがそう言った。
見なくともわかった...ぼくの後ろからその声が聞こえてきたからである。
「神楽か、確かにアセットの実力を見れる良い機会だな。前にでてきてくれるか?」
その声を聞き、雫が前へとでる。
「これ、どこに撃てばいいですか?」
首を傾げて尋ねる雫に、教師はひきつった笑みを浮かべながら
「あそこの魔術式が展開されてる場所に撃ってくれ。魔法でも魔術でも構わない」
「わかりました」雫がそう小さく頷くと共に
人差し指が前に出された。
ぼくはその現象をどう表せばいいか。
音もなく放たれたそれは、魔術式とぶつかった瞬間「パリンッ」と音を発して消失した。
『魔法』と『魔術』、混同されがちだがこの世界においては別物だ。『魔法』は自身の体内にある魔力を使用して、力を行使するもの。
それに対し『魔術』は、あらかじめ構築した魔法式に環境の力を利用して放つ技だ。
そう今朝の事件で使われてた障壁電術は周りの魔力を利用した高度な魔術。そして今、雫が放ったのはただ純粋な『魔法』それを理解し驚く人、その威力に驚くもの、「ただ魔術式が壊れただけじゃん」と言葉を吐く人もいる。
そして何よりも「衝撃がなかった...」そう零した。雫は周囲の驚きをものともせず...こちらに戻ってくる。
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思ってみればこれが神楽雫との出会いだったのかもな。
雫の日記
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どうしてか分からないが彼が気になった。
「よろしくね。あなたの名前は」そう呟いたのだが返事が返ってくるのに、少し間が空いた気がした。「如月零」そう零が返してきた。
「...というかなんで名前を」そう喋っていた気がするけど、それを答える前にわたしの口から
「あなた階級はいくつなの?」といつの間にか発せられていた。なぜ聞いたか理由は分からないけど、聞いた方が良いと思ったのかな?
「多分ライセンス級?」と疑問符混じりの返答が返ってきた。わたしはその返答に疑問を持ったけど詳しくは聞かないようにした。
(人には人の過去があるもんねっ!)心の中でそう呟いた。
(仕事が関係ない高校生活だもん!楽しみだな~)後から聞いた話だけど、このときのわたしは楽しそうにしていたらしい...よ?




