第三十話 大展望露天風呂の完成と、極上スパリゾートの混浴
リビングの劇的な大改造を終えた僕たちは、魔王城の最上階にある広大なテラスへと移動した。
見晴らしの良いこの場所からは、果てしなく続く魔界の荒野が一望できる。
かつては処刑場として使われていたという物騒な場所だが、広さと景観は申し分ない。
「次は水回りだ。」
「女所帯に大きなお風呂がないのは致命的だろ。」
僕の言葉に、ヒロインたちが目を輝かせて力強く頷いた。
美容と清潔さは、乙女にとって何よりも重要な要素なのだ。
僕は虚空に【万物配送】のウィンドウを展開し、莫大な数値が貯まっている【EP】を惜しみなく消費していく。
「セラフィナ、地下のマグマ溜まりから熱源を引き上げてくれるか。」
「由美は地下水脈の確保と、お湯の温度調節をお願い。」
「承知したのじゃ。」
「任せて。」
セラフィナの高度な地属性魔法によって岩盤がくり抜かれ、由美の繊細な水属性魔法が清らかな水をテラスへと導いていく。
そこに僕の現代のポンプ技術と配管システムを融合させ、テラスに源泉掛け流しの温泉回路を構築する。
さらに僕は、現代日本から最高級のオーダーメイド特大檜風呂を取り寄せた。
何人もが手足を伸ばして入れる巨大な浴槽だ。
隣にはイルミネーション機能付きの最新型ジャグジーバスと、本格的なロウリュウ式のサウナテント、そしてキンキンに冷えた水風呂まで併設する。
「……よし、完成だ。」
湯けむりの向こうに広がる魔界の絶景と、檜の芳醇な香りがテラス全体を包み込んでいる。
殺風景だったテラスは、わずかな時間で現代の超高級旅館も顔負けの、大展望露天風呂へと生まれ変わったのだ。
「うわぁ……すごいです、海斗くん。」
「まるで天国ですわ……。」
沙織が感極まったように両手を組み合わせて祈るようなポーズをとる。
「……お湯の成分分析完了。」
「硫黄とナトリウムを豊富に含み、美肌効果と疲労回復効果が極めて高いわ。」
由美も眼鏡を湯気で曇らせながら、興奮気味に報告する。
「うむ、これぞエルフが求めていた至高の美の泉じゃ。」
「アタシも早く入りたいにゃ。」
セラフィナとショコラが歓声を上げる。
「余も入るぞ。」
「お風呂は面倒くさくて嫌いじゃが、このお湯はとても気持ちよさそうじゃ。」
すっかり綺麗に磨き上げられた魔王ヘルヴィも、ウキウキとした様子でドレスのボタンに手をかけている。
「みんな、ゆっくり温まっておいで。」
ヒロインたちが一斉に服を脱ぎ捨てていく。
僕も急いで服を脱ぎ、彼女たちに続いて温かいお湯へと足を踏み入れた。
チャプンという心地よい音が響く。
広大な檜風呂には、僕を囲むようにして絶世の美女たちが浸かっていた。
「はぁ……極楽ですわね。」
「海斗くん、背中をお流ししますわ。」
沙織が僕の背後に回り込み、最新のミストシャワーと高級なフローラルの香りがするボディソープを使って、丁寧に背中を洗ってくれる。
柔らかなスポンジ越しに伝わる彼女の体温と、慈愛に満ちた指先の動きに、体の芯から戦いの疲れが溶け出していくようだ。
「……私も前を洗ってあげる。」
由美が対抗するように正面に回り込み、泡だらけの手で僕の胸板を撫で回してくる。
分厚い眼鏡を外し、お湯で濡れた素顔の由美は、普段の知的な雰囲気とは違う無防備な色気を放っていた。
「ちょ、ちょっと由美、くすぐったいよ。」
僕が苦笑していると、隣からジャグジーの軽快な起動音が聞こえてきた。
「あぁ……この泡、すごく気持ちいいわ。」
「お肌の奥の奥まで刺激されて、細胞が若返っていくのがわかるわね。」
イグニシアとクロエが、色とりどりのLEDイルミネーションに照らされたジャグジーで優雅にくつろいでいる。
強力なジェット水流が彼女たちの豊かなプロポーションを揉みほぐし、至福の表情を浮かべさせていた。
「ねえお姉様、この水流をお尻に当てるとすごく変な感じがするわよ。」
「本当ねリリス、なんだか体が熱くなってきちゃったわ。」
サキュバス姉妹のカルミアとリリスは、ジャグジーの機能を完全に間違った方向に解釈し、怪しい声を上げながら楽しんでいる。
健全な混浴を保とうとしている僕の理性が、大きく揺さぶられる瞬間だった。
「ご主人様、潜水艦にゃ。」
ショコラが猫獣人らしからぬ水への適応力を見せ、お湯の中をスイスイと泳いでは僕に抱きついてくる。
濡れた褐色の肌がライトに照らされて美しく輝いていた。
「海斗、こっちにも来て一緒に温まるのじゃ。」
ヘルヴィが檜風呂の縁に寄りかかりながら、僕に向かって手招きをする。
彼女の銀髪はお湯に濡れて肌にぴったりと張り付き、湯気でほんのりと桜色に染まった頬がたまらなく愛らしい。
僕は彼女の隣に移動し、肩までしっかりと熱いお湯に浸かった。
「どうだい、お風呂は嫌いじゃなかったのか。」
僕が意地悪く尋ねると、ヘルヴィはぷいっとそっぽを向いた。
「魔界の冷たくて泥臭い水浴びが嫌いだっただけじゃ。」
「こんなに温かくて良い匂いがするなら、毎日でも入ってやるぞ。」
素直になれない魔王の言葉に、僕は思わず声を上げて笑ってしまった。
夜風が心地よく吹き抜け、テラスからはライトアップされた魔王城と、満天の星空が見渡せる。
殺伐としていたかつての死の地は、僕たちの手によって世界最高峰のスパリゾートへと見事に生まれ変わったのだ。
お風呂から上がり、僕たちはテラスのデッキチェアで冷たいフルーツ牛乳や炭酸飲料で乾杯をした。
「みんな、本当に今までよく頑張ってくれたね。」
「ここが僕たちの新しい家だ。」
僕が宣言すると、ヒロインたちが一斉に僕に抱きついてきた。
「海斗くんと一緒にいられるなら、どこでも天国ですわ。」
「……ずっと一緒にいるわよ、海斗。」
温かいお湯と、愛する女性たちの柔らかな肌の感触。
これ以上の幸福がこの世界にあるだろうか。
だが、極上のリラックスタイムはこれで終わりではない。
ふかふかのジェラートピケのようなルームウェアに身を包んだ僕たちは、リビングの奥にある巨大な扉の前へと移動した。
そこは、かつて魔王の寝室だった場所だ。
僕は【万物配送】を駆使し、そこを僕の趣味と欲望が詰め込まれた極上のスイートルームへと改装しておいたのだ。
扉を開けると、部屋の中央には特注の超キングサイズベッドが鎮座している。
六人が手足を伸ばしても余りある広さを持つ、シルクのシーツと天蓋付きのベッドだ。
「さあ、お風呂の後は、お待ちかねのパジャマパーティーだ。」
僕の言葉に、湯上がりで色気を極限まで増したヒロインたちの瞳が、一斉に熱を帯びた。
世界平和を成し遂げた英雄と魔王たちの、永遠に続く本当の宴が今、始まろうとしていた。




