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クラス転移で僕のスキルが【万物配送(アー・マ・ゾーン)】!? 〜パシリ確定の最弱スキルは異世界文明を【改革無双】する~  作者: のびろう。
第一章 泥まみれの異世界と潔癖症の聖女

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第二話 共有される秘密と娯楽に飢えた賢者

翌朝、それぞれのテントから這い出すようにしてクラスメイトたちが顔を出した。

冷たい雨は上がっていたものの、地面はぬかるみ不快指数は頂点に達している。

勇者の豪と取り巻きの一郎は泥だらけの顔をしかめながら大きく伸びをした。


だが、彼らの視線は一つのテントの入り口に釘付けになる。

そこから現れたのは、見違えるほどに美しく清潔な姿を取り戻した神宮寺沙織だった。


純白の聖女ローブには汚れ一つなく、黒髪は朝の光を浴びて艶やかに輝いている。

なによりも、昨日の絶望しきった表情は完全に消え去っていた。

誇り高く自信に満ちた本来の彼女の尊厳が戻っている。

そして彼女の熱っぽい視線は、真っ直ぐに僕へと向けられていた。


「お、おい沙織、お前なんか……すげえ綺麗になってないか?」

豪が一瞬見とれたように声を漏らすが、すぐに咳払いをして誤魔化した。

自分たちの惨めな泥姿と対照的な美しさに、プライドが刺激されたのだろう。


「と、とにかく出発だぞ。」

「俺たちには魔王を倒すっていう使命があるんだからな。」

一郎も慌ててそれに同調し、無理やりに冒険を再開させようとする。


しかし、女性陣の反応は全く違った。

剣聖の剣崎結衣、忍者の服部霞、そして賢者の西園寺由美が、沙織の周りを囲んで質問攻めにしている。


「ちょっと沙織、どうしてそんなに髪がサラサラなのよ。」

「それにすごくいい匂いがするし、お肌もツヤツヤじゃない。」

「この最悪な環境で、どうやって身支度を整えたの。」

結衣と霞が目を輝かせて詰め寄る。

沙織は困ったように微笑みながら、僕の方へ視線を送った。

その視線の動きを見逃さなかった賢者の由美が、分厚い眼鏡の奥の瞳を光らせる。


「……なるほど、相田くんが何かしたのね。」

女性陣の視線が一斉に僕へと集中し、僕は思わず後ずさった。

ごまかしきれないと悟った僕は、小さく手を振る。


「ま、待ってよ、詳しくは今夜の野営で説明するから。」

僕が苦笑いしながらかわすと、沙織と目線が合った。

お互いに小さく頷き合う。

僕たちの間でだけ通じ合う秘密のアイコンタクトだ。


「ふーん、そういうこと。」

「夜、楽しみにしてるね?」

由美が目ざとく僕たちのやり取りを察知し、意味深な笑みを浮かべて茶化してきた。

僕は嫌な汗をかきながら、なんとかその場をやり過ごした。


過酷な行軍が続き、やがて夜がやってきた。

豪や一郎がいびきをかいて眠りについたのを確認すると、女性陣の行動は早かった。

彼女たちは足音を殺し、ひそかに僕のテントへと集まってきたのだ。


「さあ海斗くん、約束通り私たちにも秘密を教えてもらうわよ。」

結衣が身を乗り出してくる。

僕は昨日と同じようにスキルを発動した。


「【万物配送(アー・マ・ゾーン)】、展開。」

テントの中に現代の仮設シャワールームと清潔なタオル一式が出現する。

その光景に由美たち三人は言葉を失い、やがて歓喜の声を上げた。


僕は昨日沙織から得た大量の【EP(エンゲージポイント)】を使って、さらに追加の物資を取り寄せていた。

シャワーを浴びて泥と疲れを洗い流した彼女たちが、すっきりとした顔で戻ってくる。

その目の前に、僕は簡易的な食事を用意した。


「嘘、これ全部現代の食べ物じゃない!」

「信じられない、神様っているのね。」

ペットボトルに入った冷たくて美味しいミネラルウォーター。

甘い匂いを漂わせるチョコレートたっぷりの菓子パン。

そして、油が乗った高級なツナ缶などの缶詰類だ。


「硬い干し肉と泥水スープにはもうウンザリしてたのよ。」

結衣と霞が涙ぐみながら菓子パンにかじりつく。

現代日本では当たり前の食事が、この世界では至高の贅沢品だった。


「海斗くんのスキルは、私たちを救ってくれる神様の力よ。」

沙織がなぜか自分のことのようにドヤ顔をして胸を張っている。

昨日真っ先に救われた第一号としての優越感なのだろうか。


「相田くん、本当にありがとう。」

「これでまた明日から頑張れそうだよ。」

女性陣は口々に僕への感謝を口にした。

その度に僕のシステムに【EP(エンゲージポイント)】が次々と加算されていく。

お腹と心を満たした彼女たちは、満足げな表情でそれぞれのテントへと戻っていった。


だが、夜はまだ終わっていなかった。

深夜、皆が完全に寝静まった頃に、僕のテントの入り口がそっと開いた。

「相田くん、起きてる……?」

そこに入ってきたのは賢者の由美だった。

彼女はいつもの冷静な態度はどこへやら、浮かない顔でもじもじと指を絡ませている。


「由美さん、どうしたの?」

僕が尋ねると、彼女は顔を赤らめながら俯いた。


「お、お願いがあるの……!」

「私、もう我慢の限界で……。」

彼女が打ち明けたのは、異世界の不便さとは少し違う種類の苦しみだった。

現代日本で重度の活字中毒であり、ネットや漫画などの娯楽に囲まれて生きてきた彼女。

この何もない異世界での生活は、娯楽不足による禁断症状を引き起こしていたのだ。


「文字が読みたいの。」

「新しい物語や、情報が頭に入ってこないと、頭がおかしくなっちゃいそうで……。」

僕は彼女の切実な訴えに頷き、再びスキルを発動した。

先ほどの食事提供で十分に稼いだ【EP(エンゲージポイント)】を消費する。

僕の手の中に現れたのは、大容量のポータブル電源と、最新型のタブレット端末だった。


「これには僕の知る限りの電子書籍アプリや、ダウンロード済みの動画が詰まっている。」

「電源もあるから、しばらくは退屈しないはずだよ。」

僕がタブレットを手渡すと、由美の目が限界まで見開かれた。

「あ、あああ……っ!」

彼女はタブレットを胸に抱きしめ、信じられないものを見るような目で画面を撫でる。

久しぶりの現代文明の光が、彼女の顔を明るく照らし出した。


「相田くん、大好き……っ!」

感情を爆発させた由美が、勢いよく僕に抱き着いてきた。

シャワー上がりのいい匂いと、女性特有の柔らかい感触が僕を包み込む。


【対象:西園寺由美からの極大の感謝を検出しました】

【EP(エンゲージポイント)が大量に振り込まれました】


脳内に響くシステム音は、沙織の時以上の莫大な数値を弾き出していた。

「ふふっ、これであの続きが読める……。」

由美は僕のベッドに潜り込むと、タブレットの画面に夢中になり始めた。

満たされた彼女の表情は、見ているこちらまで嬉しくなるほどだ。

そして数十分後。


「スースー……。」

安心しきったのか、彼女はタブレットを握りしめたまま、僕のベッドで無防備にもそのまま眠ってしまった。

寝息を立てる彼女の無防備な寝顔を見下ろしながら、僕は静かに苦笑する。

明日、豪たちがこの状況を見たらどうなるのだろうか。

僕の異世界物流ライフは、思いのほか波乱に満ちたものになりそうだった。

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