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クラス転移で僕のスキルが【万物配送(アー・マ・ゾーン)】!? 〜パシリ確定の最弱スキルは異世界文明を【改革無双】する~  作者: のびろう。
第四章 古代迷宮の死闘と、デジタルチートによる完全攻略

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第二十一話 分断の迷宮と、電脳ハッカー賢者のオタク論破

クロエが指を鳴らした瞬間、王の間の床が幾何学的な光を放って崩落した。

「きゃああっ。」

結衣や沙織たちの悲鳴が響き渡る。

「みんなっ!」

僕が手を伸ばそうとしたが、床に巨大な亀裂が走り、パーティーは完全に二手に分断されてしまった。

僕のすぐ隣にいた由美だけが、僕の腕の中に飛び込んでくる。


「海斗、危ないわ!」

僕たちはそのまま崩れ落ちる床と共に、真っ暗な奈落へと滑り落ちていった。

背中を強打する前に、僕は【EP(エンゲージポイント)】を消費して【万物配送(アー・マ・ゾーン)】を発動した。

空中に展開した巨大なエアクッションが、僕と由美の落下の衝撃を完全に吸収してくれる。


「……助かったわ。」

由美が僕の胸から顔を上げ、分厚い眼鏡の位置を直した。

周囲を見渡すと、そこは冷たい金属と魔力石で覆われた密室だった。

部屋の四隅には不気味な彫像が置かれ、壁には巨大な魔法鏡が設置されている。


『ふふふ、見事な落ちっぷりね。』

突然、壁の魔法鏡が明滅し、クロエの顔がモニターのように映し出された。


『ここは私が特別に設計した処刑部屋よ。』

『あなたたち二人は、ここでジワジワと迫り来る絶望を味わいながら死ぬの。』

クロエが冷酷な笑みを浮かべると、部屋の四隅の彫像からギギギと不快な機械音が鳴り始めた。

彫像の口から鋭い刃が飛び出し、部屋の中心に向かってゆっくりと動き出す。

完全に逃げ場のない、古典的かつ絶望的なデスゲームの始まりだ。


「……悪趣味な仕掛けね。」

由美は焦るどころか、どこか呆れたようなため息をついた。

「海斗、さっきのPCを出して。」

「わかった。」

僕は由美の指示通り、【万物配送(アー・マ・ゾーン)】で最新のゲーミングPCと大容量ポータブル電源を取り出す。

暗い石室の中に、七色に発光するゲーミングデバイスが並ぶ光景はひどくシュールだ。

さらに由美の要求に応え、魔力波を電子信号に変換する特殊な解析デバイスも取り寄せた。

由美は迷うことなくPCを起動し、壁の魔法回路にデバイスを接続する。


「ファンタジー世界のカラクリなんて、要は物理法則と魔力伝導のアルゴリズムよ。」

「私にかかれば、こんなものただのパズルゲームと同じだわ。」

由美の指が、キーボードの上で目にも留まらぬ速さで踊り始める。

画面には緑色のコードが滝のように流れ、迷宮のトラップ制御システムが次々と丸裸にされていった。


『な、何をしているの。』

『そんな奇妙な箱で、私の完璧な罠をどうにかできるとでも思っているの。』

魔法鏡の向こうで、クロエがわずかに焦りの色を見せた。


「完璧な罠、ねえ。」

由美はタイピングの手を止めず、鼻で笑った。


「この迫り来る刃の速度と、部屋の構造、どこかで見たことがあると思ったら……。」

「これ、大昔のレトロゲームである『迷宮探索RPG』のステージ4のボス部屋の丸パクリじゃない。」

『……なっ。』

クロエの表情が完全に凍りついた。


「それだけじゃないわ。」

「この魔法鏡のマルチモニター構成と、赤と黒を基調としたインターフェース。」

「どう見ても、深夜ロボットアニメの司令室を意識してるわよね。」

由美は容赦なく、クロエのトラップに隠された真実を暴いていく。

異世界召喚された勇者が持ち込んだ本でも読んだのだろうか。

魔王軍の幹部が現代のサブカルチャーに精通しているという事実に、僕はただ唖然とするしかなかった。


『ち、違うわ。』

『これは私が独自の美学で構築した、至高の芸術作品よ。』

クロエの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。


「言い逃れは無駄よ。」

「この魔力回路のパスワード、あのアニメのヒロインの誕生日になってるじゃない。」

「設定が甘すぎるわよ、この隠れオタク。」

由美がエンターキーをターンと強く叩き込んだ。

その瞬間、部屋に迫っていた彫像の刃がピタリと停止し、魔法鏡のモニターがエラーの文字で埋め尽くされた。


『ああっ、私のこだわりのシステムが。』

『パスワードまでバレるなんて、そんなのあり得ないわ。』

クロエが魔法鏡の向こうで頭を抱え、床に転げ回っているのが見える。

冷徹な四天王の面影はどこへやら、完全に自分の趣味を暴露されて羞恥に悶えるただのオタク少女だ。


「ふん、オタクならもっとセキュリティ設定を複雑にしなさいよね。」

由美は腕を組み、ドヤ顔で魔法鏡を見つめ返した。

「私という真のゲーマー兼ハッカーを敵に回したのが運の尽きよ。」

「さあ、次はどんな中二病全開の罠を見せてくれるのかしら。」

由美の挑発に、クロエは涙目で魔法鏡を睨み返してきた。


『ば、馬鹿にしないでよ。』

『私のコレクションルームの真の恐ろしさを、その目に焼き付けてあげるんだから。』

クロエが泣き叫びながら通信を切ると、閉ざされていた部屋の扉が重々しい音を立てて開いた。

オタク同士のプライドを懸けた、前代未聞の電脳迷宮バトルは、まだ始まったばかりだった。

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