第十七話 湯上がりの密会と、魔王軍サキュバスの強襲
王宮の巨大温泉施設でヒロインたちとの至福の時間を過ごした僕は、あてがわれた豪華なゲストルームのベッドで一息ついていた。
獣人国の危機を救ったことで、僕の【EP】は依然として莫大な数値を保っている。
ふかふかの枕に頭を沈めていると、控えめなノックの音が部屋に響いた。
「海斗くん、起きていらっしゃいますか。」
扉の向こうから聞こえてきたのは、甘く艶やかな沙織の声だった。
「ご主人様、アタシも一緒だニャ。」
続いてショコラの可愛らしい声も聞こえてくる。
「開いてるよ。」
僕が答えると、そっと扉が開き、二人の姿が目に飛び込んできた。
思わず息を呑むほど刺激的な光景だった。
沙織は純白のローブの代わりに、僕が以前プレゼントした黒いレースのランジェリーの上に薄いネグリジェを羽織っているだけだった。
湯上がりの白い肌が黒いレースと対比して際立ち、ほのかに上気した頬が色っぽい。
ショコラもまた、お気に入りであるシルクの紐パンと小さなキャミソール姿で、褐色の肌に水滴を光らせている。
「夜分遅くにごめんなさい。」
「でも、わたくしたち……海斗くんにもっと綺麗にしてもらいたくて。」
沙織がベッドの端に腰掛け、恥じらいながらも熱を帯びた視線を送ってくる。
「アタシもニャ。」
「お風呂のお湯もよかったけど、ご主人様の手でマッサージしてほしいニャ。」
ショコラはベッドに上がり込み、僕の膝の上にすりすりと頭を擦り付けてきた。
僕は苦笑しながらも、【万物配送】のウィンドウを展開した。
【EP】を消費し、現代の最高級ボディクリームとアロマオイルを取り寄せる。
「わかったよ。」
「二人とも、もっと綺麗にしてあげるからうつ伏せになって。」
僕が言うと、二人は嬉しそうにシーツの上に身を横たえた。
僕は手にアロマオイルを取り、両手で温めてから沙織の背中へと滑らせた。
「あっ……。」
「海斗くんの手、すごく温かくて気持ちいいですわ……。」
沙織の滑らかな背中から腰にかけて、丁寧にオイルをすり込んでいく。
指先がガーターベルトのレースに触れるたび、彼女はビクンと肩を震わせて甘い吐息を漏らす。
「ご主人様、アタシもニャ。」
ショコラが待ちきれない様子で尻尾を揺らすので、僕はもう片方の手で彼女の褐色の太ももを揉みほぐした。
獣人の引き締まった筋肉と女性らしい柔らかさが同居する、極上の感触だ。
「んニャァ……そこ、すごくいいニャ……。」
僕の指先から伝わる愛情と現代美容アイテムの効能が、彼女たちのステータスを物理的にも精神的にも限界突破させていくのがわかる。
肌のツヤは極限まで高まり、魔力回路も活性化している。
「海斗くん、わたくしの前の方も……お願いできますか。」
沙織が仰向けに寝返りを打ち、豊かな双丘を強調するように胸を反らせた。
「アタシのお腹も撫でてほしいニャ。」
ショコラも仰向けになり、無防備な姿を晒してくる。
僕は二人の柔らかな肌を堪能しながら、深い夜のスキンシップを満喫した。
この甘く淫らな時間が、僕たちの絆をさらに強固なものにしていくのだ。
だが、僕たちが極上の夜を過ごしている頃、遠く離れた荒野では残酷な現実が進行していた。
僕の索敵ドローンが捉えた映像を、翌朝キャンピングカーのモニターで確認した時のことだ。
荒野をトボトボと歩く二つの影があった。
僕たちと別れて魔王城を目指していた勇者豪と、その取り巻きの一郎だ。
彼らは連日の疲労と空腹でボロボロになり、武器を持つ手すら力なく垂れ下がっていた。
「くそっ、なんで俺がこんな目に……。」
「魔王さえ倒せば、全部元通りになるんだ……。」
豪がブツブツと呪詛のように呟きながら歩いていると、突然彼らの目の前にドス黒い魔力球が着弾した。
「なんだっ。」
爆発の土煙が晴れた後、そこに立っていたのは妖艶な姿をした魔族の女性だった。
背中には巨大な蝙蝠の羽が生え、豊満な肉体を露出度の高い黒いレザーで包んでいる。
その顔立ちは、僕が餌付けしたリリスにどこか似ていた。
「見つけたわよ、人間のゴミ虫ども。」
「私が四天王の一人、サキュバスのカルミアよ。」
リリスの姉貴分である第二の四天王カルミアが、嗜虐的な笑みを浮かべて豪たちを見下ろしていた。
「してんのう、だと……。」
「ちょうどいい、俺の聖剣の錆にしてやる。」
豪が残された力を振り絞り、聖剣を構えてカルミアへと突っ込んでいく。
だが、カルミアは全く動じることなく、指先で軽く投げキッスを放った。
ピンク色の魔法陣が展開され、魅了の魔法が豪を直撃する。
「ぐはっ……な、なんだこれ……体が動か……。」
聖剣が手から滑り落ち、豪は地面に崩れ落ちた。
一郎も恐怖で腰を抜かし、一歩も動けなくなっている。
カルミアは豪の頭をピンヒールの踵で踏みつけた。
「弱いわね。」
「こんな奴らに、私の可愛い妹分のリリスがやられたの。」
「いや、そんなわけないわね。」
カルミアは豪の顔を蹴り上げ、冷酷な声で問い詰めた。
「吐きなさい。」
「リリスを倒した本当の強者はどこにいるの。」
「素直に答えれば、命だけは助けてあげるわ。」
恐怖と屈辱で涙と鼻水まみれになった豪は、あっさりと僕たちの情報を売り渡した。
「お、俺じゃない……。」
「相田海斗っていう荷物持ちが、見たこともない巨大な鉄の車に乗って……獣人の国の方へ行ったんだ……。」
「巨大な鉄の車……。」
「なるほどね、そいつらがリリスを捕まえているのね。」
カルミアは満足そうに頷くと、豪をゴミのように蹴り飛ばした。
「待ってなさい、リリス。」
「お姉ちゃんが今すぐ助けてあげるからね。」
カルミアは巨大な羽を羽ばたかせ、猛スピードで空へと飛び去っていった。
残された豪と一郎は、荒野の中で惨めに泣き叫ぶことしかできなかった。
録画データを確認し終えた僕は、キャンピングカーのリビングで静かに息を吐いた。
すでに僕のレーダーには、獣人の国に向かって高速で接近してくる強大な魔力反応が捉えられている。
「どうやら、また新しいお客様が来るみたいだね。」
僕が呟くと、隣にいたリリスが画面を見て青ざめた。
「嘘、カルミアお姉様だわ……。」
「どうしよう海斗、お姉様に見つかったら私、殺されちゃうわ。」
完全にこちらの生活に馴染んでポンコツ化したリリスが、僕の腕にしがみついて震えている。
「大丈夫だよ。」
「僕がリリスを守ってあげるから。」
僕は彼女の頭を撫でながら、【万物配送】の防衛兵器リストを開いた。
次なる敵はリリスの姉であり、強力なサキュバスだ。
だが、現代のテクノロジーと僕の物流チートの前には、どんな魔族だろうと敵ではない。
新たなる迎撃戦の準備を整えながら、僕は不敵な笑みを浮かべた。




