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無能王子はなろう主人公になりたい!  作者: マックロウXK
第一章 旅立ち編

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第5話 ヌシにスクリューなパイルドライバー

 ドドドド、ドドドドドッ! 

 ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴゴーッ! 


 大地を震わせるような強い足音が、どんどんどんどん迫り来る。

 そして。


「来たぞ!」


 ドガガガガガガガーッ!!


 林の木々をなぎ倒し、現れたのは巨大な白い塊!

 真一文字にしゃにむに、メタルとステラに向かって砲弾のように突っ込んで来る! 


「やべっ!?」


 メタルはとっさに、ステラをお姫様抱っこすると、その場で5、6mほど跳躍する!


「ふわあっ!?」


 白い塊のようなものはメタル達の足元をくぐり抜け、ドゴォ! と岩壁にぶつかって止まる。

 しかし、直撃した壁は粉々に砕かれ、その一撃の破壊力をまざまざと表していた。


「どうやら山のヌシは、イノシシのようだな」

「ふわわわ……」


 メタル達は空中から眼下を見ると、岩を砕いた山のヌシは、頭を振って体勢を整えている。

 その姿は、白く巨大な魔猪(まっちょ)であった。

 メタルはドスッと着地するとステラを降ろし、山のヌシと対峙した。


「作戦を立てるぞ。ステラは奴の足止めをしてくれ。その間においらが奴に接近する」

「足を止めるにはどうしたら?」

「アイツの足元にトゲトゲみたいなのを設置できればいいが、できるか?」

「できますが、ドキドキしてます。不安です!」

「おいらが付いてる、心配すんな!」

「はい! 安心します!」

「トドメもステラに任せるから、おいらの指示に合わせてくれ。頼んだぞ!」

「はい!」


 山のヌシは前足の蹄で地面を搔き、突撃の予兆を見せた。


「行きます、〈ランドスパイク〉!」


 ステラが魔法を唱えると、白猪の周囲の地面が剣山のような多数の棘状に隆起する。

 一瞬、突撃体勢に入っていたヌシは、出鼻をくじかれた格好になり、動きを止める。

 そこへメタルはダッシュジャンプで、魔猪に飛びかかり。


「ふんがあッ!」


 メタルは、白い岩塊のような猪の胴体をガッシリ掴み、高々と担ぎ上げて錐揉み回転しながら高くジャンプし。


「どすこーいっ!」


 ザンギェフッ!(効果音)


 猪の脳天を盛大に地面に叩き付け、旋回式パイルドライバーを山のヌシ相手にお見舞いした。


「ええーっ!?」


 メタルが繰り出した大技に、ステラは目を白黒させる。メタルはステラが作り出した地面のスパイクに魔猪の脳天をぶっ刺して、身動きを取れなくする。


「今だ! どてっ腹に魔法を食らわせろ!」

「は、はいっ! 〈アイスニードル〉!」


 ドドドドドドドドドドッ!


 ステラが魔法を唱えると、鋭く尖った氷柱(つらら)が、マシンガンのように射出され、猪の無防備な白い腹にまとめて突き刺さる。


 シュウウ……。


 微動だにしない山のヌシ。そして巨木が倒れるかのごとく、メキメキメキメキ……ズズンッと倒れ伏した。


「わ……、わたしたち、勝ったのですか?」

「おう!」


 メタルはステラに向かって、拳を突き出す。


「えっ、えっ?」

「グータッチだ。戦いに勝ったら、コレをやるんだぜ」


 誘われるがまま、ステラは包帯を巻いた小さな拳を、おそるおそる岩石のようなメタルの握り拳にコツンとぶつける。


「やったな、ステラ!」

「はいっ! えへへへへ……」

「さてと」


 メタルはさっそく猪に近寄ると、腹を裂き、内臓を取り出し、皮を剥いで、肉を部位ごとに解体していく。


「いやあ、この脂の乗り具合! まるまる太って、うまそうだ!」

「ふわあ、すごい! 霜降り肉ですねー!」


 メタルの旅に付き合って数日、すっかりステラも魔物食に慣れており、メタルが握る肉塊を興味しんしんと見つめている。

 さらにメタルは内臓の中に手を突っ込み、黄色い石のような塊を取り出す。


「おっ、なかなかデカい魔石もあったぞ」

「これが、魔石なんですね。実物をまじまじ見るのは初めてです」


 魔石とは、魔物の身体の中に存在するMP(マナパワー)が過飽和状態になる事で生成される結晶体であり、例えるなら尿管結石のような物である。

 今メタルが持っている黄色の魔石は土属性。炎属性なら赤色など、属性ごとに色が違っており、この世界では魔石のエネルギーを動力源とする様々な魔道具の材料として利用されている。


「あー、でもこれって、全部冒険者ギルドに渡さないといけねえのかな? まあ、取りあえず残さず持って帰るか」


 と、メタルは解体した山のヌシを、無造作にマジックバックに放り込んで行く。


「素材がいくらになるか、楽しみですね!」

「豪華な夕飯が食えるぐらいになればいいなあ」


 こうして、メタルとステラの初めてのギルド依頼は、大成功で幕を閉じたのであった。



 *



 太陽が西に傾きかけ、時が夕方に差し掛かるころ。首都の商業エリアに戻って来たメタルとステラは、カランコロンと冒険者ギルドの扉をくぐる。


「お願いします! どうしても今日中に100匹分必要にゃんです!」

「だから時間も無いってのに、そんな大量に獲れる訳ないだろ!」

「そこをにゃんとか!」

「しつこいぞ!」


 冒険者ギルドは基本的に騒々しいが、また一味違った騒動が起きている感じがする。


「ん? なんだか騒がしいな」

「ケンカ、とかでしょうか?」


 メタルとステラは疑問に思いつつ、ギルドのカウンターの列に並ぶと、自分たちの順番が回ってきた。


「お疲れ様です。メタルさんとステラさんですね」

「依頼を達成して来たぞ!」


 メタルは、まずは元々の薬草採取の依頼の分の、薬草の束をカウンターに並べる。


「はい、間違いありません。きれいに採取されてますので、報酬については満額で支給させていただきます」


 受付嬢の言葉に、ステラはホッと胸をなでおろす。


「それから、ついでにこんなものも取って来たけど」


 メタルはマジックバックから、他の種類の薬草を取り出して並べる。


「これは、オトギリソウと幻惑草、チカラグサとホコリ茸、他にも色んな種類が揃ってますね。これらは依頼外になりますので、素材の買い取り額でお支払いします」

「それから」

「まだ、あるんですか?」

「ちょっと大物だから、カウンターに乗らないかもしれねえなあ」


 言いつつ、メタルはマジックバックに手を突っ込むと、白い毛皮をズルズルと引きずり出して行く。


「えっ? 何、なに!? ちょっと、ちょっとーーっ!!」


 どどーん!


 メタルが取り出したのは、山のヌシの毛皮。カウンターに乗り切らず、デロンと床まで垂れ下がっている。


「あと、肉とか内臓とかもあるけど」


 どちゃどちゃどちゃ、と血まみれの肉や内臓や魔石などをカウンターに乗せて行く。


「ぎゃあーっ! ここに出さないで! マスター、マスター!!」

「また、お前さんたちか」


 ギルドマスターのハンスは、受付嬢に連れられて、呆れたように現れる。


「白くてでっけえ猪を捕まえたんだけど、素材とか高く買い取ってもらえんのかな?」


 と、メタルがニコニコしながら言うと、ハンスは急に真剣な顔になり。


「これ、どこで捕まえた?」

「ん? ここから西へ行った山とか林の中だけど、どうかしたか?」

「マスター、これは……」

「白い毛皮、通常個体の3倍はある巨体、汚い目ヤニ。間違いない、賞金首(バウンティ)モンスターの『コッオトヌシ』だ!」


 賞金首モンスターとは、通常の魔物よりも強力で、なおかつ尋常ではない被害をもたらす個体に対して、ギルドが識別名称(バウンティネーム)を付けた上で、懸賞金をかけられたモンスターの事を指す。


「これまで、幾人もの冒険者を返り討ちにして来た『コッオトヌシ』が……」

「まさか、エコノミークラスで、コレを討伐する者が現れるなんて……」


 やにわにざわめき立ち、異様な雰囲気につつまれるギルド内。

 メタルはすかさず、間髪入れず、待ってましたと言わんばかりに!


『おいら、何かやっちゃいました?』


 あまりにもギラギラしたドヤ顔で言い放たれ、ギルドの中はシンと静まる。

 しかしメタルは拳を握り、ジーンと感動しながら。


「言えた……。人生で1番言いたいセリフを、適切なタイミングでついに言えたぞ!!」


 ステラも瞳をウルウルさせながら。


「まさか、そのセリフをライブで拝聴することが出来るなんて……」

「ステラ……、今おいら『なろう主人公』だよな!」

「はいっ! メタルさんは、りっぱな『なろう主人公』です!」


 どどーん!


 やったぞーっ! と周囲を置きざりに、大盛り上がりをするメタルとステラ。


「ちなみに、人生で2番目に言いたいセリフは『あれ? おいら、ダンプカーに轢かれたはずだが』なんだけど」

「「知らねーよ!」」

「「ダンプカーって何だよ!」」


 我に返った観客たちに、総ツッコミを受けるメタル。


「で、賞金首っていうことは、賞金がもらえるのか?」

「あー、『コッオトヌシ』には60万マドカの懸賞がかかっていた」

「どどーん! そんなにもらえるのか? やったぜ!」

「だが、お前さん達に懸賞金を渡すことは出来ない」

「どどーん!? なんでだ、ギルマス! 横領するつもりか、横領ーっ!!」

「人聞きの悪い事言うな! 規定だ、規定!」


 ハンスの説明では、懸賞金がかかるほどのモンスター相手に、実力不足の冒険者が挑むのは危険すぎるため、賞金首モンスターにはビジネスクラスからしか挑戦出来ないようになっており、エコノミークラスには懸賞金が出ない規定になっているとのこと。


「分かった! 決まりなら、しょうがないな!」

「話が早くて助かるよ。『コッオトヌシ』の素材の買取額には、少し色をつけてやるから。あと、肉と内臓は持って帰れ」

「なんで? 食わないのか?」

「食うか! お前、どういう食生活してるんだ!?」


 美味いのに、もったいないなあと言いながら、メタルはコッオトヌシ肉をマジックバックにしまい込む。


「それから」

「まだ、あるのか!?」

「これが最後だ。ホーンラビットを20匹ほど捕まえて来たんだけど」


 ピクッ!


「ホーンラビット、20匹ですって!?」


 突如、若い女性の声が上がる。

 そして、ドドドドドとダッシュでこちらに向かって来ると、ズザーッとベッドスライディングでメタル達の元に滑り込んで来る。


「あ、あの! そのホーンラビット20匹、私に売ってもらえにゃいでしょうか!」


 セリフを噛んだのか? と思い、メタルたちがその女性を見ると、明るい茶色のボブヘアーの上から猫の耳が生えた、赤い長靴をはいたメイド服姿の女の子だった。


「な、長ぐつをはいた猫耳娘だーっ!!」


【なろう辞典】

『おいら、何かやっちゃいました?』:正式には、「俺、何かやっちゃいました?」。『なろう』では、冒険者ギルドなどで主人公の新人らしからぬ活躍に周りが驚愕し、自分の強さに無自覚な主人公が言うセリフ。そして、『なろう』を代表するセリフの1つ。


『ダンプカー』:物語の起点となる車両。『なろう』では、だいたいこれに轢かれて、主人公が異世界に転生する。死神のような存在ではあるが、これが無ければ『なろう』は始まらないとも言える。

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― 新着の感想 ―
まるで将棋だな( ˘ω˘ )
もうこの猪、どこかの映画にでてきた猪にしか見えません。 なろう展開を、食い気味にウエルカムすると、相手が引いて、逆に解決してしまうというね。なかなか面白い展開ですよね。
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