第4話 ギルド依頼に初挑戦!
「そろそろ、次の人いいですか?」
「あ、はい! よろしくお願いいたします」
先輩冒険者との一悶着のあと、次にステラのジョブ判定が始まる。
「ステラです。えっと、名字はありません」
「ステラ……さんですね。簡易測定機に手をかざしてください」
ステラは窓口のお姉さんの言われるがまま、水晶に手をかざす。
「ええっ!?」
―――――――――――――――――
名前:ステラ
HP:F
MP:S
筋力:G
耐久:F
敏捷:F
魔力:E
魔耐:S
使用スキル:
〈炎魔法〉〈水魔法〉〈木魔法〉
〈土魔法〉〈風魔法〉〈雷魔法〉
〈氷魔法〉〈光魔法〉〈無属性魔法〉
〈神聖魔法〉
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「これは……、すごい! 普通ならスキル2〜3個あればいいところ、属性魔法のほとんどに加えて、回復・補助の神聖魔法まで使えるとは、もしかしたらウェリーズ支部初の、レアジョブ『賢者』の誕生かも!?」
窓口のお姉さんの大声に、周辺にいる冒険者から、ザワザワとどよめきが上がる。
「おおー!? 賢者だって! すげえな、ステラ!」
「うーん? でも、なろうヒロインに『賢者』はあまり見かけなかったような……」
攻撃魔法と回復魔法の両方を高度に使いこなす、名誉のジョブ『賢者』であるが、ステラはあまり嬉しくない様子。
「落ち着け、声が大きいぞ」
窓口のお姉さんをたしなめて、ハンスはステラのステータス表を指差す。
「ほら、ここを見ろ。確かにスキルは異様な数で、複数の属性魔法と神聖魔法が使えるが、魔力が『E』でしかない。これじゃあ、大魔法ぶっ放はできないから、攻撃と回復の二刀流登板は難しいだろうな」
「な、なるほど。という事は……」
「パーティーでは、おそらく回復と補助がメインになるだろう。『僧侶』が妥当なところだな」
検討の結果、ステラのジョブは『僧侶』に決まった。
「メタルさん! わたし、なろうヒロインあるあるの『僧侶』になりましたー」
「おー、良かったなあ」
無邪気に喜ぶステラに、メタルも嬉しそうに笑う。
「お2人とも登録したばかりですので、『エコノミークラス』からのスタートになります」
「エコノミークラスって?」
冒険者ギルドでは、冒険者の実力によって、3つのクラスに分けられる。
新人および素人、一般冒険者のクラス『エコノミークラス』。
本格的な職業冒険者に与えられる称号、『ビジネスクラス』。
そして、一流の名を冠する『ファーストクラス』が冒険者の頂点、最上級クラスとして君臨する。
「エコノミークラスでは、薬草採取や危険度の低いモンスターの討伐の仕事しか受けられません。まずは実績を積んで、色々と融通が利くようになるビジネスクラスを目指して頑張って下さい」
「よーし、さっそく薬草採取だ! 行くぞ、ステラ!」
「はい、メタルさん!」
「ちょーっと、待った!」
初仕事に飛び出そうとするメタルを、ギルドマスターが呼び止める。
「どうした、ギルマス?」
「急に馴れ馴れしいな? さっきは君を『無職』と呼ばわってしまったが、それはあくまで判断基準がないための暫定処置だ。しばらく活動をしてもらい、その働きぶりで君のジョブを決める事にするから、そのまあ、腐らずにやってくれ」
「分かった! 『大江千里の道も一歩から』ってやつだな!」
「誰だ、それは?」
*
無事(?)に冒険者資格を手に入れたメタルとステラは、ウェリーズ王国の首都からほど近い山林に向かった。
「薬草は根っこから取らずに、根元を切るだったかな?」
「あ、でもその草は根がポーションの材料になる物なので、根っこから取りつつ、数を取りすぎないようにした方が良いですよ」
メタルとステラは相談しながら、林の中で薬草を集めて行く。
「ステラは薬草を見分けるのがうめえなあ。あっと言う間にカゴいっぱいになったぞ!」
「わたしは辞典とかをいっぱい読んで、勉強してましたので。えっへん」
「でも、さすがに疲れたんじゃないのか。そろそろ休憩するか?」
メタルの提案に、ステラはふるふると首を振り。
「いえいえ。青いお空、白いお雲、緑の木々と大自然の中での草むしり。わたしは今とーっても楽しいのです。まだまだ元気に頑張れますよー」
今まで城に閉じ込められていたステラは、外での作業を心の底から楽しんでいるように見える。メタルはそれを微笑ましく眺めながら、くるくる働く彼女に負けないように薬草を探す。
「そういうメタルさんも、薬草の仕分けが早いですね。ぱぱぱぱぱーって」
「おいらは食える奴と食えない奴を覚えてるだけだからなあ。思った以上にたくさん採れたし、ギルドで報酬を貰ったら、美味いもんいっぱい食いに行こうぜ」
「はい!」
そうして、和気あいあいと作業をしていた、その時。
ピョンピョンと白い毛玉のような生き物が、2人の目の前に現れた。
「ふわっ!? メタルさん、あれは!」
「ホーンラビットだな」
見た目は可愛いが、一瞬の突撃力と尖った角が厄介な、ファンタジーでは定番とも言えるモンスター、一角兎である。
ホーンラビットは、的が大きいメタルを目標に、鋭い角を向けて襲いかかる。
「メタルさん、危ない!」
スヒュ!
メタルは剣を抜く動作を見せると、一瞬でホーンラビットは爆散した。
「ふわあっ!?」
「たしか、ホーンラビットは角が討伐証明だったな」
何事も無かったかのように、メタルは散らばったホーンラビットの角と毛皮、肉と魔石をひょいひょいと拾い集めて、マジックバックに放り込む。
「メタルさん、今のは剣術スキルですか? あ、でも、スキルは持ってらっしゃらないという話でしたね」
「ああ、スキルじゃねえなあ。ただ剣を抜いただけだ」
ステラは、ふわあと息をつき。
「わたし、メタルさんが剣で戦うところ、はじめて見ました」
「そういや、そうかな?」
「わたしと初めて会った時、片手で岩を砕いてましたよね? もしかしてメタルさんは相当お強いのでは」
「まあ、なろう主人公を目指すなら、これくらいはなあ」
すると、仲間がやられた事に気づいたのか、林の中からぞろぞろとホーンラビットの群れが現れる。
その総数、およそ二十!
「おっ、団体さんのお出ましだな」
「わたし、援護します!」
ステラも、剣を構えたメタルの横に並び立つ。
「これが、ステラの初陣だな! よろしく頼むぜ!」
「はいっ!」
十匹程度のラビット達が、2人に向かって襲い来る。
「ふんっ!」
ヒュヒュン!
メタルが繰り出す剣は、X型の光芒を放ち、四、五体の角兎を一瞬で切り裂く。
「どすこいっ!」
ドガガガッ!
さらにメタルの回し蹴りが、丸太のような脚から放たれ、跳んで来たラビット達をまとめて薙ぎ払う!
ドンッ!
メタルは大地を揺らすような震脚からのダッシュで、一気に残りの敵を仕留めるべく、群れに向かって肉薄する。
「わたしも、行きます!」
ステラはバンザイの格好をしながら呪文を唱えると、彼女の周囲に火の玉が次々と発生する。
炎自体は、ピンポン玉くらいの小さなもの。しかしその数は、指数関数的にどんどんどんどんと増えて行く。
「! ステラ、ちょっと待っ……!」
「行っけえ、〈ファイヤーボール〉!」
ステラが腕を振るうと無数の炎弾が、ホーンラビットの群れを、四方八方から一斉に攻め立てる。
ドドドド、ドドドド、ドドドドーン!
今までラビット達がいた場所が、まばゆい爆炎に包まれる。これは明らかなオーバーキル。
そして。
「うわうわ、うわうわ、うわわーっ!!」
近くにいたメタルは、炎に巻き込まれないように火の玉をかわしまくるが、何しろその数が多すぎる!
小さい流れ玉の1つが、メタルの尻に直撃すると、何とメタルの全身が炎上した!
ボワッ! メラメラメラーッ!
「うわあーっ!? 熱っちい、熱っちい!」
「きゃあーっ!? きゃあぁぁぁぁぁ!!」
燃え盛る炎を消そうと、地面を転げ回るメタル。水、水、お水ーっ! と、慌てて魔法で水をかけるステラ。
ようやく火は消し止められ、黒焦げになったメタルは地べたに突っ伏す。
「〈回復〉!」
ステラが神聖魔法を唱えると、ピンク色の輝きがメタルを包み、火傷がみるみる癒されて、ようやくその場は落ち着いた。
「……あー、びっくりしたー。あやうく焼豚になるとこだったぜ」
のそっと起き上がるメタルに向かい、ステラはダッシュで駆け寄り。
「ふわあああーん! メタルさん、ごめんなざーい! わたしの魔法のせいで、とんでもない事に……」
「あ? いや、これは」
「ううう……、わたしは、ミドリムシより役に立たない娘です……」
「いやあ、ステラは別に悪くねえんだ。実はおいら『魔耐』が無さすぎて、普通の奴より魔法属性ダメージが2倍入っちまうんだ」
「ええっ!?」
ギルドの簡易測定機で表示された項目のうち、魔法攻撃に対する抵抗力を示すのが、魔法耐久力、略して『魔耐』。
通常攻撃に対する防御力で、肉体の鍛錬で上昇させることができる『耐久』とは違い、『魔耐』は魔法に関する素養が、そのまま能力値となるものである。
そして、メタルは魔耐が『G』なので。
「土魔法とかで岩をぶつけられたりするのは、物理攻撃だから耐えられるけど、炎とか雷魔法とかといった、エネルギーで攻撃するタイプの奴は超苦手なんだ」
「まさか、メタルさんにそんな弱点があったなんて」
「まあ、ドラえもんのネズミ、忍者ハットリくんのカエルみたいなもんだな」
あと、オバQの犬とか、ウルトラBの黒猫とか。
「だから、ステラが気にすることは何もねえんだ。アシガーラではステラよりもよっぽど酷い目に遭わされた事があるし、その分HP(体力)は鍛えてあるしな!」
わははわははと、メタルはあっけらかんと笑う。そんなメタルに。
「分かりました。では、もしメタルさんに魔法攻撃が来たら、わたしが守りますね!」
「ありがとう。ステラが仲間でいてくれて本当に嬉しいぜ!」
さっきのミスで、完全に見捨てられると思っていたのに、メタルからありがとう、嬉しいとまで言ってもらい、ステラは心がキュンとするのを感じる。
その時。
ドドドドド、ドドドドド!
「ふわっ? なに、何の音ですか?」
メタルはその音の鳴り響く方に、聴覚を研ぎ澄ます。
「大物の足音だ。どうやら、山の主がおいでなすったようだな!」
【スキル辞典】
〈ファイヤーボール〉:初級炎魔法スキル。火の玉を飛ばして、炎熱ダメージを与える。『なろう』でも毎度おなじみ、みんな大好きな魔法の1つ。




