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ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ


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第7話 初めての寄り道


「よっ、おはよ」


「おはよう、遊介」


 教室に入ると、先に来ていた星野と二階堂が気づいて声をかけてきた。


「おう」


 気だるげな身体をなんとか動かして、俺は自分の席に座る。

 学校があるってだけで憂鬱だ。他のやつらはなんでこうも朝からテンションが高いのか。


「今日もカッコよすぎ~」


「ホント、王子様すぎてヤバいんだけど」


「ねぇ、今日のお昼は私と食べて!」


「あっ、ズルい。私も藍と食べたい」


 教室の一角に出来た人だかりからそんな声が聞こえてきて、思わずその方向を見る。


 人だかりの中心にはキラキラオーラを放つ者が────そう、氷川藍だった。


 あのイケメン女子と、俺が放課後に会ってる地味なメガネ女子が同一人物とは、秘密を知った今でも思えない。


「相変わらず朝から凄いな~」


「なんだよ、急に」


「いや、遊介が気になってるみたいだったからさ」


 氷川の周りに出来た人だかりに視線を送る星野。

 俺、そんなに分かりやすかっただろうか。気を付けないとな……。


「そりゃ、あれだけ集まってたら誰だって気になるだろ」


 氷川と秘密の約束を交わしたものの、普段の学校生活に変化は無い。

 話すことはまず無いし、そもそも俺が近づける雰囲気じゃないからな。


「大変そうだよね、氷川さん。僕らとは違う次元って感じ」


「でも、あれだけ人気ありゃ逆に気持ちいいんじゃね?」


「僕だったらストレス溜まっちゃうかも……」


「ストレスか……」


 性格的に、ものすごいストレスが溜まっているのは事実だろうな。

 けど、俺と帰りながら素を見せるだけでそのストレスは発散出来てるのだろうか……。

 俺は氷川のほうをマジマジと見ながら、そんなことを考える。


「やっぱ遊介、氷川さんのこと気になってんだろ?」


「うんうん、最近よく見てる気がする」


「こんなところで勘弁してくれ……」


 確かに見てはいたけど、勘違いだけはやめてもらいたい。周りのやつらに聞かれると、何を言われるか分からないからな……。


 




「なあ、普段のストレス発散って何かしてるのか?」


「どうしたの、急に」


「いや……氷川の話を聞いてからだと、教室での騒ぎが大変そうに見えてな」


 水曜日の帰り道、隣を歩く氷川にそんなことを聞いてみる。

 朝から帰るときまで沢山の人に囲まれ続けているその状況が、やはりどうにも気になったのだ。


「それはもう大変だから、王子様みたいに連れだしてくれてもいいんだけど?」


「……悪い、それは無理な話だ」


「あははっ、冗談だよ。キミにはもうナンパから助けてもらってるもんね」


「あれはそういうのじゃない」


「私の中ではそういう扱いなんだよ。結構嬉しかったんだから」


「その話はもういいだろ。それよりも氷川のことだ。気晴らしとかしてるのか?」


 このタイミングで、またあのときのことを掘り返されるとは……。

 思い出すほど一気に顔が熱くなってくるから、強引に話を戻す。


「う~ん。気晴らしってよく分からないんだよね。休みの日に本を読んだりするのが、気晴らしなのかな……」


「氷川って、真面目すぎるくらい真面目だよな」


「キミが不真面目すぎるんじゃなくて? キミはどんな気晴らしをしてるのさ」


「俺はゲームが一番の気晴らしだな。あとは寄り道して遊んだり────」


「いいね、寄り道! ちょっと憧れなんだよね」


 食い気味に入ってくるくらい、表情と一緒に声色も明るくなる氷川。

 思わぬところに食いついてきたもんだから、俺も少し意外な気持ちになった。


「寄り道したことないのか? 結構、誘われてそうなものだと思ってたけど」


「よく誘われるし、カラオケも一回行ったことあるよ。でも、全然楽しくなかったんだよね。気が休まらなくて……」


 苦笑を浮かべながら話されたそんな経験を聞いて、俺も同じような苦笑を浮かべる。

 教室での様子を見てたらそりゃそうだよな……。


「それ以来、寄り道とか一切する気にならなかったんだよね……。けど、キミとなら行きたいかも。どこかオススメないの?」


 微笑みかけてきたその表情を見て俺は考える。

 氷川が行ったことなさそうなところで、楽しめそうなところ……。

 するとすぐに、いつも星野や二階堂と遊びに行ってる場所が思い浮かんだ。


「ゲームセンターとかどうだ」


「ゲームセンター? 私、行ったことないかも」


「マジか」


 今どき、ゲームセンターに行ったこと無い人がいるなんて……。あまりの驚きに言葉が詰まる。


「そんな大したところじゃないし、氷川の好みかも分からないけどな」


「キミと行けるだけで楽しいし。今から行こうよ!」


「電車で二駅隣だけど、大丈夫か?」


「もちろん、楽しみっ」


 そうして俺たちはいつもの帰り道から外れ、駅の方向へと向かうのだった。


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