第62話 幕間──ランチタイムは素直になって①
「はぁ……」
昨日の電話から、ため息ばかりついてしまっている。
前田くんからあの人と会ったって聞かされて、冷静に考えることができなかったのもあったけど……。
さすがに、あの対応はぶっきらぼうだったと自分でも思う。
別に誰と会おうと前田くんの勝手だし、そもそもあの人と二人で会ったわけじゃない。
何人もいる中の一人に過ぎなかったのに、私が気にしすぎただけだ。
友達と喧嘩なんてしたことないから、こういうときどうすればいいのかが分からないや……。
「はぁ……。私ってホント不器用だなぁ……」
何度目か分からないため息をついたとき、静かな部屋にインターホンが鳴り響く。
今日ばかりは無視をさせてもらおうと思ったけど、数秒後に再び鳴らされて、私はしぶしぶ立ち上がる。
「誰だろ。荷物が届く予定はなかったと思うけど……」
いつもは宅配便の人しか映らない小さなモニター。
しかし今日は、予想外の人物が立っていた。
『藍さ~ん!』
「……あ、あかねちゃん!?」
『えへへ、連絡もしないで来ちゃってごめんなさい』
どうして私の家を……。それより、このままあかねちゃんを家に上げるわけにはいかない。
「ちょ、ちょっと待って! すぐ下に降りるから、どこかお店に行こ!」
『えっ、あたしはお部屋が汚くても別に気にしな────』
「すぐ行くから!!」
汚いとかそういう問題じゃなくて、むしろ逆。
物が無さすぎて、絶対に家族で住んでないと思われるから……。
前田くんが家に上がったときの反応を見て、私は学んでいた。
待たせすぎるのも申し訳ないし、洗面所に駆け込んでサッと身だしなみを整えて。
部屋着から簡単なお買い物に行くときの服に着替えると、小走りで下に降りていく。
「はぁっはぁっ……。お待たせ……」
「藍さん! あたしのほうこそ急に来ちゃってごめんなさい……」
「ううん、ちょっと驚いたけど大丈夫。それより、私の家って前田くんから?」
「はい。お兄が藍さんと喧嘩したって泣きついてきたので、お話を聞きにきました!」
「前田くんが……」
あんな態度を取っちゃったら、さすがの前田くんでも気にするよね……。
あかねちゃんは私を笑わせるために、大袈裟に言ったところもあると思うけど。
「あかねちゃんにまで心配かけてごめんね。私たちの問題なのに」
「気にしないでください! むしろ、あたしから首突っ込んだっていうか」
「前田くん、落ち込んでた?」
「ちょっと元気はなかったですけど……。悪いのはお兄なので」
「いやいや、私が八つ当たりしちゃったの」
「ん~。だったらそこも含めて聞かせてもらえませんか? あたしとしては、藍さんと遊べなくなったら嫌なので!」
年下なのに、あかねちゃんのほうがよっぽどしっかりしてるなぁ。
でも私だけじゃ、夏休みが終わるまで前田くんと仲直りはできなさそうだし、ここは力を貸してもらおう。
「暑いところ悪いけど、ちょっと歩いてファミレスでも入ろっか。私が奢るからさ」
「暑さは大丈夫ですよっ。あたし日傘持ってるので、一緒に入りましょっ!」
そういえば、急いで下に降りてきたから日焼け止めを塗ってくるのを忘れてた。
何もかもお言葉に甘えてしまうけれど、私はあかねちゃんに近づいて、小さくて可愛らしい日傘に入れてもらった。




