表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/71

第61話 今は妹の言葉に甘えよう


 俺の部屋の椅子に、腕を組んで座るあかね。

 目を瞑って時折うなずきながら話を聞く姿は、頑固おやじかと突っ込みたくなるけれど……。とてもそんな空気じゃない。


 今はあかねに、氷川を怒らせてしまった経緯の説明をしているところだった。

 もちろん複雑な事情があるから、ときどきそれらしい嘘も混ぜながらだけど。

 例えば、氷川と五十嵐の関係については、あくまでも中学時代に酷い喧嘩をしたとだけ伝えてある。


「う~ん、それお兄が関わる必要あった?」


「俺の自己満足ではある……」


 氷川の中学時代の傷を癒すことが出来れば……。

 もしかしたら、学校で本当の自分を見せられるようになって。氷川自身も楽になるんじゃないか。

 この一連の俺の行動は、そう思ったがゆえの完全に余計なお節介だ。


 ただ、学校での氷川の姿に関してはあかねが知らない部分だから。そういう俺の目的も話せないんだけどな。


「お兄、いつからそんなでしゃばりになったのさ……」


「でしゃばり言うな。少しは俺が気にかけたっていいだろ」


 しかし秘密ばかりじゃ話も進まないので、俺はもう一つの目的をあかねに伝える。


「ある程度の和解をしておいたほうが、学校でも過ごしやすいだろうしな」


「学校違うんでしょ?」


「その五十嵐が俺の友達の彼女なんだよ……」


「うわぁ、ややこしくなってきた……」


 今後、氷川が王子様を演じることなく、普段の素を出していくのを目指すのであれば……。

 この一件は解決しておかなければならない問題になるはずだ。


「誰の彼女なの? あたし知ってる?」


「星野だよ。前に遊びに来たことあっただろ」


「やっぱそっちか。渚くんには、椿ちゃんがいたもんね」


「今日はその二人も一緒だった」


「えぇ~! じゃあ、あたしも行きたかった……。久しぶりに椿ちゃんに会いたかったのに」


「お前、宇佐美にはやたらなついてたもんな」


 あかねの反応を見たら、やっぱり来てもらえば良かっただろうかと少しだけ後悔した。

 こいつがいたら、俺もあんなに不器用に探ることはなかったし……。

 一人で突っ走りすぎたなと、改めて心の中で反省する。


「っていうか、なんで藍さんと星野の彼女に繋がりがあるって分かったわけ?」


「花火大会のときにたまたまデートしてるあいつらと会ってな……。その後に氷川から話を聞かされたんだ」


「修羅場じゃん。でも、それなら星野たちも話してるよね? お兄だけが抱える必要も……」


「いや、向こうは二人とも氷川だと気づいてなかったみたいだから。それはないと思う」


「えっ、星野も気づいてないの?」


 その指摘に、口が滑べらせたかと一瞬ヒヤッとした。

 我が妹ながらこいつはたまに鋭いからな。

 普通に知り合いと出会ったら、確かに気づかないのはおかしい。けど、あの日には気づかなくても仕方がない言い訳がある。


「花火大会のときは氷川もオシャレをしてただろ」


「いやいや、顔一緒だから気づくでしょ。鈍感、馬鹿すぎ」


「すごい当たりが強いな……」


 それが正論といえばそうなんだけど……。

 普段の氷川と学校の氷川が、同一人物だと見抜けなかった俺にも刺さるからやめてほしい。


「それにしたって、喧嘩した相手のこと忘れるかなぁ」


 あかねの至極ごもっともな疑問に気まずさを感じて、俺は苦笑いでスルーさせてもらう。

 都合の悪いところは隠して、あかねには申し訳ないけど。こればかりは俺が話したらダメだから。


「まっ、パパッと話をまとめるなら、二人を仲直りさせたい。あとは星野の彼女だから、五十嵐って人が問題児じゃないか探りたい……。そんなところ?」


「まあ、そう思ってくれていい」


「なに、その歯切れの悪さ」


「いや、あってる。あってるから」


 五十嵐を探りたいという点はあってる。


 ただ、氷川と五十嵐を仲直りさせようとは微塵も思ってない。

 そもそもイジメてきたやつと仲直りなんてのがおかしな話だし。

 それでも俺としては、氷川には一度でいいから五十嵐と話してみてほしいと感じていた。


 そのためにも今日のことを謝って、氷川に許してもらわないといけないな。


「全部一人で勝手に解決しようとカッコつけてたら、藍さんを怒らせちゃったんだ?」


「言い返せないな……」


「はぁ……。そもそもお兄が女子に探りを入れるなんて無理!」


「……そこまでハッキリ言うことないだろ」


「普段は人に興味ないくせに、近しい人が困ってたら一人で力になろうとする。お兄の昔からの悪い癖」


「俺はそんな善人じゃない」


「それと乙女心も分かってなさすぎ」


「乙女心……」


「勝手に異性と会うなんて……。しかもそれが喧嘩相手とか藍さん傷ついたと思うよ?」


 あかねからの怒涛の攻撃……いや口撃に、俺はノックアウト寸前。

 まあ、人を知ろうともせず、人付き合いから逃げ続けてきたツケが回ってきたってことだな。


 ただ、幸運なのは反抗期の妹が協力しようとしてくれてるとこだろうか。



「お兄はまずどうしたいの?」



 呆れたような声色だけど、そこにはいつもの茶化す様子はなくて。


 だからこそ俺も真剣に答える。



「……俺がした勝手な行動を氷川に謝りたい。そのあとで氷川としっかり話したい」



 電話を切られたあとに一人だったら、頭が真っ白になったまま、この言葉すら口に出来なかっただろう。


 友達を怒らせたのは初めてだったから動揺していた。

 その気持ちを妹に向き合わせてもらうとは、なんて情けない兄なんだか。


「しょうがないなぁ。あたしが藍さんと話してきてあげる。家に来てくれなくなったら嫌だし」


 だけど今回は、その言葉に甘えさせてもらうとしよう。

 立ち上がって胸を張っているあかねが、今だけは頼もしく見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ