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ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ
第2章

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第51話 旅行の最後はお揃いで


 朝食のバイキングを食べ終え、レジャー施設も悔いが残らないように見尽くして。


 そんな旅行の最後に寄るのは────



「う~ん、いっぱいありすぎて困るよねぇ」



 沢山のお土産が並んだ棚を、険しい顔で物色するあかね。

 そう。帰りのバスに乗る前に、俺たちはお土産を買いに来ていた。


「お前が真剣になるなんて珍しいな」


「お兄、失礼すぎ。あたしだって感謝を伝えるときは真面目に考えるから」


 自分や友人へのお土産はもちろんだけど、何よりも父さんへのお土産を考えてなくてはならない。

 こうして楽しめたのも、父さんが宿泊チケットをくれたからで。そのことをあかねも分かっているからか、いつになく真剣だった。


「氷川は何か決まったか?」


「うん。私は結構あっさり決めちゃうから」


 その手には、小さな箱のお菓子が三個ほど。

 優柔不断な俺やあかねと違って、確かに氷川には迷いがなかったみたいだ。


「チョイス良いな。俺もあいつらに買っていくか……」


「星野くんと二階堂くん?」


「ああ。夏休みが終わるまでに会うだろうし、その時に渡そうかと思って」


「ふふっ。仲良いよね」


「普通だろ。あいつらとは旅行とか行ったことないし」


 そんな言葉を口にすると同時に、氷川との距離はものすごい速度で縮まっているんだと、改めて実感する。

 花火大会のときには、これからもこういう関係を続けていきたいとは言われたけど……。

 このままだと、いつか学校の人間にバレるんじゃないかとも不安になる。


「あっ、このウクレレ良くない!?」


 きっと、俺の感覚を狂わせてるのは、こいつをはじめとした俺の家族なんだろうな……。


「……お前、本当に父さんのこと考えてるか?」


「考えてるよ! お部屋に置いたらオシャレになるかなって」


「氷川。何か言ってやってくれないか……」


「えっと……。私だったらちょっと困るかも……?」


「むぅ……。藍さんがそう言うなら」


「でも、お菓子じゃなくて記念に残るものはいいと思うよ」


「記念ねぇ……」


 こういうところで買った記念品って、時間が経つと邪魔な置物になる気がして、俺はあまり買ったことがなかった。

 修学旅行とかでも、木刀を買うやつの気持ちが分からなかったし。


「じゃあ、この変な人形は?」


「お前が変だと思ってる時点で無しだろ」


「文句ばっか! お兄は何かないのさ」


「父さんへは無難にコーヒーに合いそうなお菓子でいいんじゃないか。ウクレレとかはお前が自分用に買えばいいだろ」


「……お兄、たまには良いこと言うね」


 じゃあ、どうしてそこで不満げな顔をするんだよ。

 もう少し俺の心が広ければ、ああいうのが可愛いと思えるんだろうか。

 妹が欲しいと嘆く世の男子たちに聞いてみたい。


「氷川は何か記念品は買わないのか? ウクレレとか」


「いやいや、ウクレレは……」


「あかねの前じゃ、やんわり否定するだけだったのに」


「だって、ハッキリ言ったらかわいそうじゃん」


「あははっ、冗談だよ。ごめんごめん」


「もう……」


 とはいえ、氷川がすぐに決めたというお土産の全てが消耗品で。

 記念に残るものを買わないのかは気になったまま。

 そんな俺の考えがバレバレだったのか、心を読むように氷川から答えが告げられる。


「私は、旅行の記念品とか見ると寂しくなっちゃうんだよね」


「寂しく?」


「今日が終われば、この思い出は過去のものになって。楽しかった時間が戻ってくることもない。それを思い返すのって、ちょっと寂しくならない?」


 物憂げな表情で、そんな想いを吐露する氷川。

 思い返すと寂しくなる……か。

 その考え方は、きっと経験してきた過去から生まれたものなんだろう。

 俺にはあまり共感できそうにないが、それでも一つだけ言えることはあった。



「また行けばいいだろ。別に今日で会わなくなるわけじゃないんだし」



 出会って数ヶ月だけど、寄り道をしたり家でバーベキューをしたり。こうして泊まりで旅行だって行くくらいだ。

 きっとこの先も、様々な時間を積み重ねて。

 寂しいと感じるよりも前に、楽しい思い出がどんどん増えていくはずだ。


 目を見開いていた氷川は、少しの沈黙の後。吹き出すように笑みを浮かべた。


「ふふっ。やっぱりキミは優しい。そんなだから私は甘えちゃうのかも」


「甘えられてた感じはしないけどな」


「じゃあ、もっと甘えさせてもらわないと。キミとの思い出は、これからもずっと大事にしたいし────」


 そう言うと氷川は突然、軽い足取りで駆け出していってしまう。

 何も説明されないままで、いまいち状況が飲み込めない中。とある一角を物色している姿を遠くから眺める。

 少しして再び駆け足で戻ってきた氷川は、あるものを差し出してきた。


「これ。お揃いにしない?」


「これって、亀のキーホルダー?」


 このレジャー施設の名前が刻まれたプレートと、水色の亀がぶら下がったキーホルダー。

 氷川の手元を見ると、そっちではピンク色の亀が揺れていた。


「見かけたときに良いなって思ってたんだ。これを見れば、キミのさっきの言葉も思い出せるし。記念にピッタリでしょ?」


 記念品なんて、そんな買うタイプでもないけれど……。

 泳ぐように揺れる亀を見ていると、自然と口角が上がってきた。


「そうだな。これなら良いかも」


 氷川とのお揃いは、これが初めてというわけではない。

 初めての寄り道で、ゲームセンターに行ったときに取った小さなぬいぐるみ。

 部屋に飾ってあるそれにも、思い出は詰まっていて。

 そしてこの亀のキーホルダーも、今日のことを鮮明に思い出させてくれるのだろう。


「良かった。気に入ってくれて」


「これでいつでもこの旅行を思い出せるな」


「でも、さっきの言葉も期待してるから。これからも楽しいこと、いっぱいしようね」


 二日間の長いようで短かった旅行は、どこかハプニングも多くて。距離感に戸惑うこともあったけれど。

 それでもやっぱり氷川との時間は心地好いと、改めて思わせてくれるものになった。


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