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ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ
第2章

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第49話 湯上がりの相談


「ふぅ……。少し温まりすぎたか」


 エアコンがほどよく効いた静かな部屋に、そんな俺のひとり言だけが響く。

 やっぱり俺一人だとやけに広く感じるな。

 ボーッとしながら、なんとも非日常的だった今日の出来事を思い返す。


 最初は気が進まなかったプールを、なんだかんだ楽しんで。ショーを見た後には、夕食のバイキングで腹を満たした俺たち。

 そして最後は、一日動き回った疲れを温泉で癒すことにしたのだ。


 あかねと母さんは長風呂派だからきっと、まだまだ時間がかかるだろう。

 そんなことを思って、気を抜いたときだった────部屋の扉が開く音がして俺は焦る。


「あっ、前田くん。戻ってたんだ」


「氷川だけか。ずいぶん早いな」


「私は普段からシャワー派だし。少しは広いお風呂を味わったけどね」


「女子って長風呂のイメージがあった」


「それは偏見だよ」


「メガネ、かけなくていいのか?」


「プールほど人は多くないから。キミが前田くんだってことくらいは分かるし」


 風呂上がりだからか、ほんのり紅い頬がやけに色っぽく感じて……。

 見慣れない雰囲気にドキドキしてしまう。


「は~。でも、お湯に浸かると疲れが取れるね」


 そう言いながら、アロハシャツを着た氷川が伸びをすると、チラッと白いお腹が覗く。

 その無防備さが、余計に目のやり場を困らせてきた。


 もう少しガードが固い服のほうがいいんじゃ……と思うけど、これは仕方のないことなのだ。

 南国をモチーフにした施設なだけあって、部屋着として用意されていたのがアロハシャツなんだから。


「あかねと母さんが一緒じゃ、温泉でもゆっくり出来なかっただろ?」


「ちょっと緊張はしたかも。同性でも裸を見られることってあまりないし」


「それは分かる」


「まず私なんて、水着でもなかなかに恥ずかしかったんだから」


「やっぱり、まだ自信は持てないか」


「前田くんから見たら、私のスタイルは自信を持っていいものだった?」


「なんて質問してくんだよ……」


 正直、氷川のスタイルで自信を持てなかったら、今日のプールにいた他の人はどうなってしまうんだろうか。


 普段から薄々感じてはいたけど、氷川はものすごくスタイルがいい。

 締まった細いお腹とくびれ。水着だと、脚の長さや顔の小ささなんかも分かりやすくて。

 バランスの良い綺麗な身体は、まるでモデルみたいだと思った。


 そんなことを冷静に思い出してる自分に、どこか罪悪感を覚える。


「ふふっ。ちょっと意地悪だったかな」


「……最初に水着姿を見たとき、感想言っただろ。俺の意見はあれが全てだよ」


「……そっか」


 そこで氷川に照れられたら、こっちが恥ずかしくなる。

 エアコンは効いているはずなのに、どんどん部屋が暑くなっているような気さえした。


 会話が途切れて、お互いまともに顔を見ることもできず。やや気まずい空気が流れだしていたとき────部屋の扉が勢いよく開いた。


「温泉広かった~!」


 沈黙なんて知らないとばかりに、テンションの高いあかねの声が割って入ってくる。


「はぁ……。騒がしいやつが戻ってきやがった」


「お兄のこと部屋から追い出してもいいんだけど?」


「あ~はいはい。悪かった」


「その言い方、思ってないじゃん」


「それより、母さんは?」


「もう少し入ってるって」


 まあ、風情は台無しになるけれど、タイミングとしてはあかねが来てくれて助かった。

 涼んでいたはずなのに何故か暑くなってきたし、少しだけ頭を休ませるか……。


「飲み物買ってくる」


「お兄、あたしの分もお願い~」


「あとでしっかり金取るからな」


「あっ、私も行く」


「氷川の分なら俺が買ってくるよ」


「ううん、ちょっと歩きたくなったから」


「じゃあ、一緒に行くか……」


 そこまで言われてしまうと、断るほうが不自然になってしまう。

 結局、氷川と一緒に部屋を出てホテルの自動販売機へ。


 昼とは違い、賑やかさが落ち着いた夜の雰囲気はとにかく静かだった。

 これから同じ部屋で泊まるからなのか。俺たちの間には緊張感も走っていて。

 隣を歩く氷川の存在が、頭を決して休ませてはくれなかった。


 ホテル特有の優しい光に照らされるフロアを少し歩けば、一際眩しい光を放つ物体が見えてくる。


 ほとんど会話もせずに、ただ人数分の飲み物を買うだけ。

 ガタンッ。ペットボトルが落ちてくるそんな音だけが大きく響いて。

 お金を払ってボタンを押せば飲み物が出てくる。なんて簡単なシステムなんだろうな。

 けど、その便利さが時には物寂しく感じた。


 結局、いまいち頭のリセットも出来ないままだったな……。


 これ以上ここにいても仕方がないので、部屋に戻ろうとしたとき────ふと、手を掴まれる。



「ねぇ、座っていかない?」



 二人掛けの小さなベンチの前で、氷川からの短い提案。


「別にいいけど……」


「ありがと」


 一緒についてきたこと。そして、ここで俺を引き留めたこと。

 何か二人きりじゃないと出来ない話があるのかと思って、俺は先にベンチに腰を下ろす。

 遅れて氷川も隣に座ってくるけれど、再び黙り込んでしまった。


「えっと、どうかしたか?」


 どこか硬いようにも見えた氷川の表情。

 言いづらいことなのかと構えながらも、背中を押すつもりで俺から話を切り出してみる。


 すると、答えはすぐに返ってきた。



「実は、前田くんに相談というか、お願いしたいことがあって……」


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