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ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ
第1章

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第31話 幕間──ある日の休日③


 一通り買い終えた私たちは、ショッピングモールの中に入っているフードコートで休憩をしていた。


「はぁ~疲れたぁ」


「ふふっ、ずっとテンション高かったもんね」


「可愛い服が多いし、藍さん何着ても可愛いし。はしゃぐなって言うほうが無理ですよ……!」


 あかねちゃんの隣の席には、洋服屋さんのブランドロゴが入った紙袋が何個も。


「あかねちゃん、そんなに買って大丈夫なの?」


「貯金してましたから!」


「さすがにその金額は……」


 今日だけで三万円以上は使っている気がするけど、中学生でそんなにお小遣い貰ってるのかな。


「だって、せっかく藍さんが選んでくれたものですし」


「それでも全部買うのは……。何か他に買いたいものが出来たとき困るんじゃない?」


「今まで困ったことないので平気ですよ。お小遣いは、お洋服にしか使わないので」


「そうなの? 流行りのスイーツとか、好きなのかと思ってたけど」


「普段は滅多に行かないですね。相手もいないですし」


 その言葉を聞いて私は少し意外に思った。

 やや暗い表情から察するに、あまり突っ込んだらいけない話だったかな……。

 それなら少し早い気もするけど、本題に入ってしまおう。


「じゃあ、どうして今日は私を誘ってくれたの?」


「もちろん、お洋服を藍さんと買いたいなって思ったからですよ」


「それ以外にも、理由あるでしょ?」


 洋服を買いたかったのも本当だろうけど、それ以外にも引っ掛かるところがあった。

 あかねちゃんをじっと見つめて、正直になるのを待つ。

 すると、十秒もしないうちにあかねちゃんの表情が崩れた。


「……えへへ、バレてましたか」


「少しだけど、考え込んだ顔をしてるときがあったからね」


「やっぱり藍さんは鋭いですね」


 そう言ってあかねちゃんの表情は、より真剣なものへと変化した。

 それに合わせて私も、背筋を伸ばして身構える。



「藍さんは……お兄のことどう思ってますか?」



 服を見てるときに口にしていたから、なんとなく想像はついていた。

 前田くんのために、あかねちゃんは今日の行動を起こしたんだって。


「私にとっては、気が許せる人かな」


「つまり、印象は良いってことですよね……?」


「もちろん。前田くんにどう思われてるかは分からないけどね」


「あたしの感覚ですけど、お兄もすごく好意的に思っているはずです」


 そうやって直接言葉にされると、少し恥ずかしい気持ちにもなる。

 なんて返せばいいのか言葉に詰まっていたら、あかねちゃんが続けて口を開いた。


「お兄って、学校であまり女の人と話してないですよね?」


「そう言われると……そうかもね」


 クラスにいるときは前田くんのことを気にしているけど、いつも一緒にいる友達以外と話している姿は見たことない。

 私の知ってる限りでは、テスト勉強のときに大沢さんと話した一回だけ。



「お兄は、女の人が苦手なんです。昔、私のせいで嫌な思いをして……」



「前田くんが……?」



 そんなこと、全く気づかなかった。私と話しているときは、普通に見えたけど……。もしかして無理させていたのかな……。



「だから、藍さんが友達だって聞いたときはビックリしたんです。新しく人付き合いを増やすようなことも滅多にないし、何より楽しそうに笑ってたので」



 心の中が不安の気持ちで埋め尽くされそうだったけど、私の見ていた前田くんが間違っていなかったと分かってホッとした。


 ただ、あかねちゃんがぼそりと続けた言葉で、再び気持ちが重くなる。



「この人なら、お兄を変えてくれるんじゃないかなって」



 あかねちゃんにも、こんな形で期待を抱かれるのか。

 そんなことが真っ先に頭に浮かぶのだから、つくづく私は弱い人間なんだなと思う。



「答えづらいこと聞いて申し訳ないんですけど────」



 その声色から、聞かれたくない質問がくることはすぐに分かった。



「────藍さんは、お兄のこと好きですか?」



 感じているものを口にしていいのだろうか。

 少し迷ったけど私は正直に話すことにした。



「……好きか嫌いかの話なら、好きなんだと思うよ」



 その二択なら、もちろん答えは好きになる。

 前田くんの前で私らしくいられるのは、好意的に思っている部分が多いからだ。



「でも、それがあかねちゃんの期待してるものかは────自分でも分からない」



 ────その好意が恋愛的な意味で、なのか。



「そう、ですか……」


 私の答えに、分かりやすく肩を落とすあかねちゃん。

 罪悪感が湧くけど、ここで嘘をつくことだけはいけない気がした。


「ごめんなさい、こんなお話を藍さんにしちゃって」


「ねぇ、あかねちゃん。私ってしっかりした人間に見える?」


「そうですね、真面目な人だと思います。けど、ときどき寂しそうな顔もするなって」


「寂しそうな顔……?」


「何か抱えてるように見えるんです。そしてそれを、お兄なら解決出来るんじゃないかなと思って」


 あかねちゃん────いや、前田家の人には見透かされている気がしちゃうな。


「つまり、私のためでもあるし前田くんのためでもあると」


「そういうことです。あたしがこんな相談しちゃったから、藍さんへのメリットは減っちゃうかもしれないですけど……」


「それだけお兄ちゃん思いなら、前田くんの前でも素直になればいいのに」


「あたしが言っても、お兄は本気にしないですし」


「そんなことないと思うけどな。前田くんは、あかねちゃんのこと大好きだよ?」


「でも、藍さんにだけ見せる顔もあるんです。だから……これからもお兄のこと、お願いします」



 克服に付き合ってあげるくらいなら、いいのかなとも思っていた。


 それくらいの仲ではあるはずだ。


 けど、そこに恋愛が含まれるかはまた別の問題なわけで……。


 今まで、誰かを好きになったことがないから分からない。


 誰かに好意を向けられても、受け止められる自信がない。





 だって────私は、私のことが嫌いだから。


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