第30話 幕間──ある日の休日②
少し遠出をして、大きなショッピングモールに来た私とあかねちゃん。
私は手を引かれるがままに、色々な洋服屋さんを見て回っていた。
あかねちゃんが目星をつけてたお店なだけあって、フリルのついた可愛い服が多い。
ロリータ服専門店とかじゃなくて安心はしたけど……。
「う~ん。さすがにこれは短くない?」
「そんなことないです! あたしだってそれくらいですよ」
「あかねちゃんは着なれてるじゃん……」
今、私が手に持っているのは────超がつくほどのミニスカート。
これ、お尻の少し下までしか布がないような気がする……。
「……上だけじゃダメ?」
「ダメです! せっかくコーディネートしたんですから、試着してください」
一緒に渡されたトップスだけなら……とも思ったけど、あかねちゃんの勢いには勝てそうにない。
仕方なく試着室に入って、カーテンを閉める。
「着れたら、ちゃんとカーテン開けてくださいね~?」
「分かってるよ……」
正直、着たふりをして出ていこうとも思ったけど通用しなさそうだ。
渡されたコーデを見て、私は覚悟を決めた。
着ていた服を脱ぐと、まずはトップスから。
不馴れな服に変な神経を使っていると、かなり時間がかかってしまって……。
ミニスカートを履いて、ようやく終わったそのとき────目の前の鏡に映る自分の姿に絶句した。
こんなの恥ずかしすぎるし、メガネだって合わなすぎる……。
「藍さ~ん、着れました?」
戸惑っていると、カーテンの向こうからあかねちゃんの声が聞こえてくる。
やっばり、着た姿も見せないといけないよね……。
一つ深呼吸をすると、私は意を決してカーテンを開けた。
「ど、どうかな……」
「わぁ~藍さん顔良すぎ……! 似合ってます!」
顔は変わってないはずなんだけど……。
それより、足が涼しくて落ち着かない。こんなの、ちょっと風が吹いたらスカート捲れるじゃん。
「落ちついた雰囲気の女の子が、こんなミニスカートを……背徳感ヤバい……」
「あかねちゃん、何か変なこと考えてない?」
「へっ? あ~そんなことないですよ~?」
とんでもないことを言った気がしたけど、深く追及はしないでおこう。
「でもでも! やっぱり藍さんは、可愛い系も似合うじゃないですか」
「私としては、違和感がすごいんだけど……」
改めて鏡で見ても、自分では似合ってると思えない。
そもそも、こういうのが似合うと思ってたら、学校の変装でもイケメン女子になってないし……。
「他にもどんどん着ていきましょ! 気に入ったのがあったら言ってくださいね」
「ほどほどによろしく……」
学校の私を知らないあかねちゃんには、まだまだ解放してもらえなさそうだった。
「大人っぽくするのもありだなぁ。何でも似合うから迷う……」
最初の試着から、モデルにされ続けること三十分。
ファッションショーのごとく着ては脱いでを繰り返し、私のメンタルにはかなりのダメージがきていた。
「藍さん、気に入った服とかありました?」
「暗い色の服に慣れてるから、落ち着くのはそういう系かな」
「落ちついた色……。う~ん、お兄はどういうのが好きなんだろ」
「えっ、なんで前田くん?」
突然出てきた名前に言葉に驚いて、つい聞いてしまった。
「あっ……それは、その……」
けど、しどろもどろなあかねちゃんの反応を見ていたら理由はすぐに分かった。
「仲の良い藍さんが変わったら、お兄も自分のダサさを意識するかなって。少しはマシになって、あたしのお兄として相応しい格好をしてもらおうと思っただけです」
「ふふっ、あかねちゃんって可愛いよね」
「なっ、なんですか。急に……」
早口で必死になってる姿が可愛くて、思わず笑みがこぼれてしまう。
「あかねちゃんは、どれが一番いいと思った?」
「えぇっと……これですかね」
そう言って、あかねちゃんが手に取ったのは────真っ白なワンピース。
背中に大きなリボンがついていて、裾のところがレースになっているものだった。
「じゃあ、それ買うよ」
「いいんですか?」
「せっかく選んでくれたんだし。今日の思い出ってことで」
自分だけなら絶対に買わないものではある。
けど、この機会に少しだけ冒険してみるのもいいのかなと思った。




