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ナンパから助けた地味なメガネ女子の正体は、同じクラスのイケメン女子でした  作者: 結城ユウキ
第1章

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第27話 隣に立つのは、いつもと違う……


「はぁぁ疲れたぁぁ。過去一勉強したわ」


「これで過去一って、お前はどれだけ勉強してないんだよ」


「正直、これでもまだまだ不安なんだけど」


「相変わらず心配性だなぁ。渚なら次も五位以内は確実だって」


「不安なのは僕のことじゃなくて、透也のこと」


「あっ、あはは……。いや~なんとかしてみせるって」


 長時間のテスト勉強を終えた俺たちは、ファストフード店を出たところで身体を伸ばす。

 すっかり日も落ちていて、店の看板や車のライトが街を眩しく彩っていた。


 急遽、氷川たちが混ざって行われたテスト勉強会も有意義な時間になったと思う。

 まあ、ちょっとした揉め事はあったけど……。

 あれ以降、大沢や今野も自分の力で問題集をやっていたみたいだ。


「藍、気をつけて帰ってね?」


「困ったことがあったら連絡して」


「ありがとう。キミたちも気をつけてね」


 相変わらず、二人の発言の節々には氷川信者らしさを感じるような……。

 それでも、和やかな空気で終わったようで俺もホッとする。


「じゃあ、俺たちは電車だから。また明日な」


「あぁ、また」


「またね、遊介」


 こっちも切り上げると、夜の街の人混みへ消えていく星野と二階堂を見送る。

 そうして店の前には、俺と氷川の二人が残った。



「……せっかくだし、一緒に帰ろっか?」



「その姿なのに大丈夫なのか?」



 大沢や今野がいたこともあって、今の氷川はイケメン女子モードの格好だ。


 学校の皆が知っているこの姿────そんな氷川と一緒に歩いてるところを見られたら、色々と面倒なことになる気もするのだけど……。


「今日くらい大丈夫でしょ。ちゃんと勉強会をしたって口実もあるんだし」


「口実って……。まぁ、氷川がいいなら俺もいいよ」


「じゃあ、決まりだねっ」


 テスト勉強の疲れからか、家までの足取りがいつもより重い。

 そしてそれは氷川も同じなのか、両手を頭の上で組んで身体をぐっと伸ばしていた。

 なんとなく気まずさを感じた俺は、勉強会のときに言えなかったことを口にする。


「その……悪かったな。余計な口出しして」


「ん? あ~、全然気にしてないから大丈夫だよ。キミがあんな行動するなんてちょっと驚いたけど」


「それは自分でも思うよ……」


 冗談めいたようにからかわれると、俺は苦笑を浮かべることしか出来なかった。


「なんで今日、あの二人とテスト勉強することになったんだ?」


 だが、大沢を止めた俺の行動がらしくなかったように、氷川がクラスメイトと寄り道するのもらしくない。

 これも、勉強会の間ずっと気になっていたことだった。


「う~ん。ちょっとした気まぐれかな」


「気まぐれ?」


「深く知ったら、意外と接しやすかったりするのかも……なんて思ってね」


 そう言う声音は、どこか寂しさを帯びてる気がした。



「最近、キミと話してるときは楽しいなって感じたからさ。今、他の人ともう一度向き合ったら楽しく話せるのかなって」



 希望が込められた話の内容とは裏腹に、氷川の表情は暗いまま。


「そう思ってたんだけど、ダメだったね。やっぱりあの期待されるような視線が耐えられないや……」


「そっか……」


「だから、キミがあそこにいてくれて助かったよ。おかげで少しはいい時間になったからね」


 相変わらず綺麗な顔で笑う氷川を見ると、なんて声をかければいいのか分からなくなる。


 ……本当にそう思っているか?


 つい零れそうになった言葉を、咄嗟に飲み込む。


 氷川は、そのままでいることを求めてきた。


 俺が変に気にかけるのだって、望んでいないはずだから。




 それからは、勉強会の愚痴を聞いて笑い合ったりして、最初の気まずさが嘘のようにいつも通りの時間が過ぎていく。


「前田くんたちがいてもあの状態だったんだよ? 私たち三人だけで勉強してたらもっと酷かったって」


「星野だってモテるほうだけど、ほぼ見向きもされてなかったしな……」


 ああやって話すと、普段の氷川の苦労がよく分かった。

 特に大沢は、言い争ったのもあるけど強烈に印象に残ってる。


 逆に今野は少し控えめな感じもしたし、何か噛み合えば仲良くなれそうに思うけどな……。


「前田くんが止めてくれなかったら、私の課題は一生進まなかったよ。だから、キミたちのグループに入れてもらって正解だったってわけ」


「氷川に上手く利用されたってわけか」


「ごめんって。あんなにしっかり助け船を出してくれるとは思わなかったけど」


「あれは……気が向いただけだ」


「ふふっ、やっぱり優しいね。前田くんは」


「……そんなんじゃない」


 イタズラな笑みを浮かべながら氷川が俺の顔を覗き込んでくる。

 至近距離で目が合った瞬間、急に自分の呼吸が浅くなった気がした。



 夜風が当たったったことで、顔が熱くなってるのを実感したけど────これはきっと、夏の入り口が呼び込む暑さのせいだ。


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