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子豚令嬢は食べられたくない  作者: しののめ


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4

 ーーー。


 ーーーーー。


「豚になるがいい!」


 タチアナが杖を振った。


 ああ、やっぱりーー!!


 なんやかんやあって、結局、私はこの場面に辿り着いてしまった。


 だいたい、どうして豚になる魔法!? ひと思いに殺すとかないの? 人を豚にして人に食べさせるとか、人の心がないよね!?


 というか今の言葉、ひとという単語が多すぎる……!!


 ここまで考えるのに、およそ0.1秒。死ぬ前には、時が止まったように感じると誰かが言っていた。ーー死んだこと、あるのかしら??


 ここまで考えるのに、およそ0.2秒。

 ああ、私はこのまま、また豚になってトンテキにされてしまう……あ、そういえば前回のサイアス様は、私を美味しくいただいていたような気がするけれど、今世は豚を苦手と言われて全く召し上がられないのは何故でしょう?


 0.5秒。そして私に呪いの光が届くーー直前。


 私の前に鏡のような障壁が現れた。それはタチアナが放った魔法の光を、真っ直ぐに跳ね返す。


「え?」


 反射された光がタチアナに直撃した。

 同時に目も眩むほどのまばゆい光が辺りを包んだのだった。


⭐︎


 光が収まり、まばゆさにチカチカしていた視界が元に戻る。そして。


「ぶひ」


 私の目の前に、子豚さんが一匹。つぶらな瞳で私を見上げていた。ーータチアナの姿はどこにもない。


「これは一体……」


 状況が理解できず呟くと、足音が近づいてくる。


「呪い返しが決まったようだな」


 その声はサイアス様のものだった。彼は私の隣に立つと、冷酷な瞳で子豚さんを見下ろしながら続けた。


「タチアナは魔法使いで、しかも意外と慎重だった。呪い返しを仕掛けるにも、機会を窺う必要があった。そのためには、彼女を油断させる必要があると思ってね」


 そして私に向き直ると、


「結果的に君を囮にするような形になった。どうか、許してほしい」


と彼は胸に手を当て、深く頭を下げた。本当に申し訳なさそうな空気が全身から滲み出ていて、逆にこちらの方こそ申し訳ない。私は首を横に振った。


「そんな許すなんて……私のためにしてくださったことですもの」


 ということは、つまり。


(この子豚さんはタチアナということ?)


 私が目でそう問いかけると、サイアス様は頷いた。


「この呪いは解呪の方法がない、非道な魔法だ。禁呪と言っても過言ではない。そんな呪いを使用したんだ。失敗すれば必ず報いを受ける。ーーつまり彼女は二度と人間には戻れない」


 呪いを返された子豚さんが、私をつぶらな瞳で見つめている。庇護を求めて、ぷひともう一度鳴いた。


(か……)


 まんまるお目々が、私を見つめている。


(可愛い……!)


 私の中で眠っていた母性本能が、突如として花開く。そうだ。こんな可愛い豚さん、一匹で野に放っては可哀想だ。


 ーー豚なら、愛せる。


(飼おう)


 行き場のない子豚さんの保護を決心した私が、ふらふらと豚さんに近づいて行こうとするのを、


「やめなさい」


とサイアス様の腕が制する。


「これは豚は豚でもただの豚ではない。呪われし豚だ。愛玩動物には向いていない」

「ですが……」


 私が後ろ髪引かれる思いでいるのを察したサイアス様が、私に頭にポンと手を乗せた。


「飼うなら他の豚にしなさい。可愛い子豚なら他にもいる。私と一緒に選びに行こう」


 そしてサイアス様は子豚さんに向き直った。


「この豚は、王子の元へ連れて行こう」

「え?」


 にこり、とサイアスは綺麗な顔で微笑んだ。


「因果応報だろう?」


と。


 子豚さんが悲しそうな瞳で見ていた。




⭐︎続きます⭐︎


妙なテンションのお話ですが、リアクションやブックマーク、評価くださりありがとうございます!

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