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神託はガセ?

 早退した時間のバスは、普段と違ってガランとしていた。

「あの、ひかりさん」

「何? 太市さん」

「例の試練の事だけど……本当なの?」

「何が?」

「消えちゃうって辺り」

 俺とひかりさんが席に着くと、バスがゆっくりと走り始める。

 バスが加速するのに体を揺らしながら、

「消えませんでしたね……でも、ですね」

「でも……何です?」

「この神託はみのり姉さんが言い出したんです」

「うーん……みのりさんって神通力使えるんですよね?」

 学校の先生もみのりさんの事を言っていた。

 と、ひかりさん今にも噛みつきそうな目で俺を見ながら、

「太市さん、わたしの裸、見ましたね……」

「え、そっち!」

「だってわたし着替えていたらいきなり太市さんの目の前にテレポートしたんですよ、あれはみのり姉さんの神通力だと思うけど」

「俺、裸見てませんって」

「見ましたね?」

「じゃ、見ました」

「エッチー! 今度からラッキーさんって言いますっ!」

「俺、どう言ったらいいんです?」

 苦笑いしながらいうと、ひかりさんはコロコロ笑っていた。

「みのり姉さんの神通力は本物だから……神託も本当だと思ってたの」

「ひかりさんは信じていたんだ」

「うん、ええ」

「でも、それが本当なら……」

「本当なら?」

「どうしてひかりさんは消えなかったんだと思います?」

「神託はガセ……って言いたいの?」

 俺はふふんと笑うと、

「あのですね、ひかりさんは今回の神託というか試練というか……正直勝負ですよね」

「勝負……そうね」

「だってひかりさん、パン食べるまではすごい怒ってたし」

「お、怒ってた?」

「そう見えた……で、そこなんですけど」

「?」

「神託あって、俺がこっちに呼ばれたんですよね」

「そうね」

「それからひかりさん……米神荘の七姉妹はパンを食べなくなったんですよね」

「そう……ね」

「神託の内容って何です?」

 ひかりさんはちょっと困った顔をして、

「ほら、最近ゴハンを食べなくなったって言うでしょ」

「あ、テレビなんかで言いますね」

「お米の消費が減っているって」

 俺はコクコク頷くと、ひかりさんはため息一つついてから、

「お米離れ……それってお米の神さまにとっては……わかるでしょ」

「でもって、お米の神さまが宿ってるひかりさん達姉妹に試練……なんですか?」

 なんだかバカらしい……でも、みのりさんの神通力を見たら今回の神託・試練もちょっと頷ける。

「家のみんなはあんまり気にしていないみたいだったけど……」

「?」

「わたしは神託の前から、ちょっと気になってたんです」

「えっと、何が?」

「お米離れ」

 ひかりさんは力なく笑うと、

「このままどんどんお米離れが進んじゃうと……」

「あの、ひかりさん、本気で言ってます?」

「!」

「そりゃ、お米離れは進んでるかもしれないけど、ゴハン食べないなんてないでしょ!」

「それは……」

「で、ちょっと聞くけど……俺ってパン屋の息子だから、今回の神託の試練としてこっちに呼ばれたんですよね……ネットで選ばれたみたいだけど」

「はい……」

「で、聞きますよ……ひかりさんてパン屋さんはパンばっかり食べてるとか思ってません?」

 何度も小さく頷くひかりさん。

 俺は重いため息をつくと、

「俺、家じゃ朝も昼も夜もゴハンですよ、パンなんてたまにです」

「えー!」

「何でそんなに驚くんです?」

「だ、だってパン屋さんなのに!」

「外国人だったらパンを三食食べるかもしれないけど……俺、普通に日本人ですから」

「そ、そんな……パン屋さんなのに三食パンを食べないなんて」

「パン屋でパンを食べる方がきついかも」

「そ、そうなんだ……」

 ひかりさん、一度は納得したみたいだけど、すぐに俺に厳しい視線で、

「だってわたしに毎日パンを! やきそばパンを!」

「それってお弁当忘れたからですよね」

 一瞬はしょげるひかりさん、でもすぐに、

「あれはお姉ちゃん達が食べてたんです」

 俺は笑いながら頷いた。

 ひかりさんはすぐに、

「穂のかとラーメンデート」

「うーん、穂のかちゃん、多分なんでも釣れますよ」

「むー!」

「俺、テレビで博多ラーメンを注文するの見て、一度食べてみたかったんです」

「し、信じます、でも!」

「でも?」

「まいにはケーキで、籾には回転焼き」

「ケーキってまいちゃんのお店のケーキですよね、籾ちゃんもたまたまです」

「早苗姉さんにはクレープ」

「あれは最初は穂のかちゃんの機嫌取り用だったんですけどね」

「どれもお米じゃないし!」

「お米のファストフードとか甘いものって、何があります?」

「……」

「おにぎりとかお団子ですよね、今回たまたまなかっただけです」

「そうなの……」

 黙り込むひかりさん、俺はそんなひかりさんをジッと見ながら、

「今回の試練、俺って最初から負けてたのかもしれませんよ」

「え? 最初から?」

「ええ……」

「?」

「家でも三食ゴハンって言いましたよね」

「はい」

「でも、家のゴハンより、米神荘のゴハンの方がずっとおいしいですよ」

「!!」



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