手料理
神社を出てすぐ、俺と籾ちゃんのお腹が鳴った。
「うーん、お腹すいたね」
ちらっと昨日バイトしたメイド喫茶に目をやる。
神社よりも遅くまでやっているのは、昨日体験済みだ。
「あ、でも、ここで食事は」
俺は籾ちゃんの手を引いて、メイド喫茶のドアを開いた。
すぐにまいちゃんがトコトコやってきて、
「お兄さんいらっしゃい~、籾ちゃんも一緒なんだ~」
すぐに席に案内される。
まいちゃんトレイを抱いて、
「ふふ~、籾ちゃんとデートですか~、写真を早苗ちゃんに転送しようかな~」
「まいちゃん、俺の敵?」
「ふふ~、優しくしてくれる人の味方です~」
って、俺、籾ちゃんにちらっと目をやると、緊張の面持ちだ。
どうかしたのかな?
まいちゃんがお冷を取りにカウンターに戻ったのに、
「籾ちゃん、どうかしたの?」
「兄さんはご存じでは!」
「?」
「今、ここの店長は病気でいないんです」
「知ってるよ、昨日バイトしたから」
「店長の料理はいいんです、最高なんです」
「あー、だね、ケーキ、すごくうまい」
「その店長がいないんです」
「知ってる、だから料理はやめておけばって言ったよ」
「それなのに兄さんはここに食事に入ったんですよ」
って、まいちゃんがお冷を持ってやって来る。
「まいは料理はダメなんです、わたくしもダメですが」
「ああ、そうなんだ、なんとなくわかるよ、米神荘の料理はひかりさんが全部やってるからね」
「だから……」
籾ちゃんはまいちゃんに気を使ってか、しゃべるのをやめる。
俺はグラスを置いたまいちゃんの手を捕まえて、
「お兄さん、どうしたんですか~」
まいちゃんを強引に座らせると、俺はにやりと笑ってから、
「厨房借りるよ、俺のオムライス、食ってくれるよな」
「げっ!」
籾ちゃんは嫌そうな顔をする。
「きゃーん、あたしアレ、食べてみたかったんです~」
もう瞳が☆になってるまいちゃん。
「ど、どうしたの、まい!」
「お兄さんのオムライス、店長級なの~」
「そ、そうなのか!!」
まず、ドアに「CLOSE」の札を下げてから厨房へ、
「一人前食べると家に帰ってからゴハン入らないからね、3人で分ければちょうどいいかなって」
「きゃーん、早くはやく~、お兄さんのオムライス~」
「まい、本当においしいのか?」
「お客さんにも~、好評だったよ~」
「客にも好評なのか!」
「ほら~、写真あるよ~」
まいちゃんがスマホを出して、その画面を覗きこむ籾ちゃん。
驚きの顔で俺を見ていた。
「兄さま、料理も出来るのですね!」
「俺、両親共働きだから、それくらい出来ないとね」
って、急に頬を赤らめる籾ちゃん。
「ああ、わたくしの腐の部分がうずきます、料理の出来る男子が好きな男子の家で料理!」
その男×男な妄想はすごい嫌だ。
ああ、なんだろ、籾ちゃんが俺をうっとりした瞳で見つめている。
まいちゃんの乙女の瞳は気分いいけど……
籾ちゃんの腐女子妄想注視は嫌だな……
「あ、そうだ、これも食べてくれないかな?」
俺、ちょっとここの店長さんにライバル意識。
ケーキを作る時間はちょっとなかったんだけど、ホットケーキは余った材料でちゃちゃっと作っちゃったぜ。
うん、今回のポイントは「生クリーム」。
ここで食べたケーキの生クリームの味にどれだけ迫れるか!
レシピはノートがあったのでマネできる。
でも、あの味を出すためには、メモをマネするだけでは出来ないと思ってる、そんなもんだ。
まいちゃんがオムライスを食べている間、籾ちゃんがホットケーキ。
「きゃーん、たまごふわふわでおいしい~」
「兄さんやりますね、ちょうどいい、絶妙な甘さです」
って、二人はそれぞれ半分こするとバトンタッチ。
まいちゃん完全に固まって、
「クリームの味~、すごいおいしいです~」
籾ちゃん、オムライスを一口しただけで涙して、
「兄さん、どうしてこんなふわふわにできるんですか!」
おお、なんかすごい好評でうれしい。
でも、二人で全部食べちゃったぜ。
俺、米神荘に戻るまでハラペコ。




