単位制
次の日のお昼、教室の片隅で俺とひかりさんは固まっていた。
なんていうか、今日もお弁当は一つなのだ。
「え、えっと、お弁当、ちゃんと太市さんの分も作ったのよ」
引きつった笑みのひかりさん。
その俺の分の弁当っての、実は俺もちゃんと見ていた。
今日の朝の弁当は大1(穂のかちゃん用)に普通4だった。
普通の4つはひかりさん、まいちゃん、籾ちゃん、俺。
「でも、どうしたんです?」
「ちゃんと持って来たと思ったんですけど……」
って、言ってから急に青冷めるひかりさん。
「何かあったんですね?」
「え、えっと……芽衣姉さんがいきなり電話呼び出しで……」
「その時渡しちゃったんですね?」
「はい」
ショボンとするひかりさん。
「それならしかたないです、俺、今日も購買で買ってるし」
そう、お弁当あるのをすっかり忘れて、いつもの調子で購買で買ってしまった。
買った後で気付いたけど、やきそばパン、穂のかちゃんにあげたら喜ぶかな~なんて思っていたり。
俺はそんなやきそばパンの袋を差し出しながら、
「今日も半分こします?」
「むむむ……」
紙袋の中を覗き込みながら、ひかりさんは難し顔をしている。
事情が事情なんだから、今日の失敗は気にしないでいいのに。
でもでも、なんでやきそばパンに嫌そうな顔をしてるのかな?
俺がそんなひかりさんをじっと見ていると、
「お兄さ~ん!」
「兄さんっ!」
まいちゃんと籾ちゃんの声が聞こえた。
窓の外に目をやると、下校する生徒の中に二人の姿が見えた。
手を振っている二人に、こっちも手を振り返しながら、
「あの、ひかりさん」
「?」
「二人は帰っちゃってますけど」
そう、まいちゃんと籾ちゃんだけじゃない。
たくさんの生徒が校門を出て行く。
昼休み始まったばかり、午前の授業終わって10分そこいらだ。
「1年は何かあるんです?」
「あ、まいと籾は早く終わるんです」
「?」
「二人は4年コースなんですよ」
「え?」
「太市さんやわたしは普通科で3年卒業、3年コース」
「4年コースって何です?」
「太市さんのいた所には単位制の高校ってなかったんです?」
「あったかも知れないけど、知らないし」
「まいと籾は単位制コースで4年、5年で卒業するんですよ」
「そんなのがあるんだ」
俺は驚きながらも、
「えっと、二人はこれから何してるんです?」
「アルバイトですよ」
「え、禁止じゃないんです?」
「別に、七米高はアルバイト禁止じゃないですよ、風俗とかはダメですけど」
「そりゃ、風俗はダメでしょうけど……アルバイトいいんだ」
「太市さんの高校はダメだったんです?」
「うん、俺の通っていた高校はダメだったよ」
「普通科の生徒は午後も授業あるし、単位制でもコマがギッチリで夕方まで授業でしょ」
「はい、ですね」
「だからアルバイトしてても、時間が短いんですよ」
「ですね」
「でも、4年コースになると授業が午前だけ、午後だけになるんです」
「空いた時間はアルバイト……そんなにアルバイトしてていいんです?」
「え?」
「だってほら、アルバイトばっかりして勉強さっぱりって……」
俺は前の学校でアルバイト禁止の理由をなぞった。
するとひかりさんは頷きながら、
「4年コースは社会勉強でアルバイトも単位になるんですよ」
「え、アルバイトでも単位になるんです!」
「そうなんですよ、この間テレビでもやってたんですけど」
「そ、そうなんだ……二人はどんなアルバイトしてるんです?」
「まいはメイド喫茶で、籾は神社の巫女さんですよ」
「ひかりさんっ!」
俺は速攻、ひかりさんの手を捕まえ、ギュッと握った。
「俺、二人のバイト先に行ってみたいっ!」
「え、えーっと!」
「行きたいっ!」
「わ、わかりました」
メイド喫茶……聞いた事はあるけど、行った事は一度もない。
漫画やアニメで見る「いらっしゃいませご主人さま」一度味わってみたいぜ。
巫女さん衣装もなんだかそそられる。
「今日の放課後、絶対ですよ、約束ですよ!」
俺はNOと言わせない勢いで言う。
ひかりさんは「とほほ」顔で頷いてくれた。




