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ラーメン屋さんでデート

 ひかりさんは買い物って事で、帰りは一人バス停でぼんやり。

「たいちー!」

「!!」

 駆けて来るのは穂のかちゃん。

「あれ、学校、終わったの、クラブは?」

 そう、穂のかちゃん、朝は俺より早い。

 穂のかちゃん・まいちゃん、籾ちゃんは朝練で早く出るらしい。

「今日はお休みー!」

「本当、サボりじゃね?」

「ラッキーさん? 何言いますか!」

「ラッキーさんはやめて」

「ラッキーさん、ラッキーさん、ラッキー!」

「犬みたい、ラッキーはやめて」

「やめてほしければ、何か奢って!」

 って、穂のかちゃん、俺の手を引っ張る。

 商店街まで連れて来られて、

「穂のか、何か食べ物がいい!」

 って、まず最初にグイグイ連れて来られたのが「吉●屋」。

「むむ……」

 牛丼は好きだけど、今はちょっと気分じゃなかった。

 俺が首を横に振ると、穂のかちゃんはすぐに次の店に、

 今度は「C●c●一番屋」。

 カレーはちょっといいかな~って思った。

 でも、これも気分じゃない。

 穂のかちゃんは眉を「ハの字」にして、次の店に向かおうとした。

「ちょっと待った!」

 俺は穂のかちゃんを捕まえて、有無を言わさずラーメン屋ののれんをくぐった。

「たたたたいちーっ!」

「いいから、いいから、この店はきっとおいしいって」

 俺はすぐさまテーブル席に腰を下ろすと、カウンターの向こうに立っている店員にオーダー。

「えっと、『はりがね』で2つ!」

「はりがね2つオーダー入りました」

 穂のかちゃん、さっきと打って変わって大人しい。

 どこかそわそわした感じさえある。

「どうかしたの?」

「え、えっとー!」

「こんなお店、初めて?」

「う、うん……」

「俺もね……名古屋の時テレビで見て『はりがね』って頼んでみたかったんだ~」

 すぐに豚骨ラーメンが出てくる。

 ものかちゃんは嬉しいんだか怒ってるんだかわからない顔をしていた。

 すぐに、そんな表情に、昼食の時にひかりさんの表情と重なった。

「嫌いなら、食べないでもいいけど?」

 穂のかちゃん、割り箸を勢いよく割ると、

「穂のか、食べる!」

 真剣な顔ですすり始めた。

 一口食べて笑みが浮かぶ。

 それからは箸が止まらなかった。

 麺をすすっては、スープを飲み、また麺をすする。

 その勢いに圧倒さえて、俺だけでなく店内全員の目をひいていた。

 穂のかちゃん、グッと丼をあおって、スープを全部飲んでしまうと、

「おいしい~」

 そして、まだ手を付けてない俺のラーメンに向けられている。

「食べていいよ」

「たいちー、好き好きー」

「はいはい」

 嬉しそうに食べ始める穂のかちゃん。

 これだけ喜んでもらえると、こっちもすごくうれしいかな。


 夕飯前、俺と穂のかちゃんがリビングでテレビを見ていると、キッチンの方から、

「穂のか~」

「なになにー!」

「ゴハンまでちょっとあるから、これ、いいわよー」

 そんなひかりさんの声に、穂のかちゃんはトテトテ足音をさせながら行ってしまう。

 すぐにお皿いっぱいのおにぎりを持って戻って来た。

 コンビニに売っているのと同じくらいの大きさだ。

 それがぱっと見12~13個はある。

「いただきまーす」

 穂のかちゃんはそんなおにぎりをパクパク食べ始めた。

「穂のかちゃん……」

「何なに~」

「さっきラーメン食べたよね」

「うん」

「おにぎり……よく入るね」

 うーん、見ている間に4つたいらげてしまった。

 丸のみしてるんじゃないかってペースだ。

 俺がじっと見ていると、穂のかちゃんは両手におにぎり状態で固まって、

 でも、そんな頭上に裸電球が光ると、

「別腹!」

「別腹かっ!」

「うん!」

 って、頷くと、また食べ始めた。

 むむむ……びっくりなのは食べるスピードすごいのに、むさぼる感じは全然なんだ。

 ちゃんとモグモグしているのに、喉が上下に動くの見えない。

 どうなってるんだろう?

 ああ、もう、おにぎりラスト3。

 そこにいきなり早苗さんの声。

「神代くんっ!」

「はいっ!」

「君はまたやらかしてくれたね」

「え?」

「今日、帰りに穂のかとデートしてたろう」

「えっと……あれをデートと言うのならデートなんでしょうか?」

「違うと言うのかね?」

 俺は穂のかちゃんに目をやった。

 でも、穂のかちゃんは俺と目が合っても頭に「?」。

 早苗さんもわかったみたいで、今度は俺に着いて来るようにジェスチャー。

 一緒に脱衣所に入って、ドアを閉める。

 残念ながらカギはこの前穂のかちゃんが壊して使い物にならない。

「そこに正座する!」

「は、はい」

「神代くん、君は何をやってるかわかってるのかい?」

「え、えっと……穂のかちゃんとバス停で会って、それから……」

「買い食いは校則違反なのだよ」

「そ、そうなんですね」

「君の通った中学でもそうだったのではないかね?」

「は、はい」

 でも、そんな校則あってないようなものだ、誰だって買い食いしていた。

「神代くんがロリコンとは知らなかったし」

「え、えっと、一緒に買い食いしたらロリコンになるんです?」

「だって穂のかとデートなのだろう?」

「えっと、いっしょにラーメン食べただけで……俺の分も食べられちゃったけど」

「ララララーメンだとーっ!」

 早苗さんの目が怒りに燃えている、コワイ!

 肩が震えて、固めた拳が血を求めている……ような気がする。

「もれるー!」

 って、そんな脱衣所に穂のかちゃん。

 俺と早苗さんの間を通り抜けて、トイレのドアが開いた。

 って、俺の方に向き直って微笑むと、

「たいちー!」

「な、何、穂のかちゃん?」

「ラーメンおいしかった、また連れてってねー!」

 わーん、火に油だ。

 早苗さんの背後に暗黒オーラがゆらいでるのが今ならはっきり見えるっ!

 って、穂のかちゃん、早苗さんを見て、

「早苗ちゃんも一緒しよー!」

 笑顔の穂のかちゃんに押されて(?)、早苗さんの暗黒オーラは引っ込んでしまう。

「そそそ、そうね、こんど一緒に食べに行こうか!」

「やったー! 約束ー!」

 言うとトイレに入ってしまった。

 俺、立ちあがると早苗さんの耳元で囁く。

「早苗さんって穂のかちゃん好きなんです?」

「すすす末っ子だからしょうがないでしょ!」

 俺がじっと見ていると、俺の頭にチョップ。

 でも、力は全然入っていない。

「私だけじゃない、芽衣もひかりも、まいも籾も、みのりも穂のかの事は気にしてるのよ」

「??」

「末っ子だしね」

「ふうん、俺、一人っ子だから、その辺わかりませんね」

「穂のか、可愛くない?」

「うーん、俺の中では『くいしんぼう』ですね」

「ふふ、穂のかは確かにくいしんぼうだ」

 ってトイレのドアがドンドン鳴って、

「早苗ちゃんもたいちーも悪口言ってるー!」

 そんな声に俺と早苗さん、クスクス笑ってしまった。


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