5章の20
そして
「正解っ」
まるで決めポーズのように、びっと人差し指を突きつける。
「……!?」
晴道の代わりに吃驚する珠希。動揺を露わにし、一之瀬そして晴道を見る。
一之瀬は元の軽い口調に戻って説明した。
「セルの久澄調が、あんな間抜けな死に方するわけないだろー。あれはどう見てもリコンビナントの護衛反射だ。おまけに『創造者』なんて言いながら死ぬなんて、リコンビナント以外考えられないよ。そうだろ、三小田」
いきなり水を向けられ、びくっと身じろぐ更紗。しかし言いにくそうに肯定した。
「……ああ。奴がミラの盾になった時、私も違和感を覚えていた。恐らく晴道の発現抑制の騒動に紛れて身代わりと入れ替わったんだろう」
千景を腕に抱いたまま、ぎっと眉間にしわを寄せる。
「奴は研究者であると同時に変異種だ。発現強度は低いが洗脳の遺伝子を持っている。自身の遺伝子を極限まで解析、リコンビナントへ自動発現させるメソッドまで開発していてもおかしくはない」
それを肯定するように、一之瀬が発した。
「セルの技術は俺たちの予測よりも進んでるみたいだな」
がくっ、と、黒服の少女は膝を折った。
「私が撃ったのは……身代わり……」
悄然と呟く。
晴道は珠希を見降ろした。彼女の頭の中を駆け巡る失意は見るだけで感じ取れる。つられてこちらまで辛辣な心境になる。彼女は悪を――――久澄調を断罪に処すことを、何よりの目的としていたはずだ。彼女が一番初めに断罪銃を向けた罪人は、久澄なのだから。
「嘘だろ……おい」
珠希の隣に、匍匐前進してきたミラが現れる。
晴道とオルタの三人はそろって落胆していた。当然だ。行動の全てが徒労だったと知らされたのだから。
全て――――
突如珠希は立ち上がった。
「それならせめて、この二人に対する断罪を許してください! そうでないと、この島に来た意義も完全に無くなります!」
「って、言い訳の手段に俺たちを使うなよ!」
突っ込んだ晴道を、珠希は「黙れ!」と言わんばかりの凄まじい目で睨みつけた。
そして一之瀬に向き直り、
「彼らは利己的な正義を掲げる罪人です。現に萩原千景はそれを押し通すために強硬手段に出ました。危険分子であるのは明らかです。よって今の時点で断罪を執行するのが妥当だと思われます!」
と、一気にまくしたてる。
一之瀬は集中砲火を浴びた後、しばし顎に手をやって、考えるそぶりを見せていた。
「正義ねー。そんな言葉一つで、罪人が罪人であることを選んだ意図を語るには無理があるんじゃね?」
的を外れた言葉が返された。
珠希はすぐさま言い返そうとしたが、一之瀬はすかさず加えた。




