表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/68

5章の19

「あんたたちオルタは、オルタにつかない奴はみんな敵だっていう理念で動いてるんじゃないのか? だから俺や千景はセルでもないのに断罪を宣言されたんだ」

 視界の端で珠希が顔を険しくする。

 一之瀬は即答した。

「そうだよ。その通り」

 すんなり肯定された。

 は? と晴道は勢いを削がれる。

「じゃあ何で」

「なぜ止めるのですか」

 晴道の問いに、珠希が言葉を割り込ませた。

「一之瀬さん。これが命令違反と見なされるのは不服です。私や更紗さん、ミラさんはオルタの理念に従い、社会的脅威となる道を選択した沖田晴道と萩原千景を断罪に処そうと判断したのです」

 自分の上司を見据えながら、珠希は詰問する。

「あなたの主張は、部下の私が言うのも何ですが、こじつけが過ぎていると思います。おまけに、あなた自ら現場に現れて断罪を阻むなど。一体何を目論んでいるのですか」

 ともすれば、問いと共に障害銃まで突きつけてしまいそうな剣幕だ。

 珠希のきつい視線を受ける一之瀬は、しばし無言で佇んでいた。一転して表情を消した彼が何を考えているのか、晴道には想像もできない。

「一之瀬さん」

 たまりかねたのか、珠希は苛立ったように彼を呼んだ。

 ぼそっ、と一之瀬は呟いた。

「大それた口を利くのは、自分の仕事を果たした後にしろ」

 先程までとはうって変わり、腹の底から発したような、暗い響きの声だった。

「っ!?」

 珠希は吃驚に目を見開く。

「おい! 珠希の断罪を止めたのはてめぇだろうが!」

 代わりにミラが反論したが、一之瀬は彼女に目も向けず、

「【セル】はどうした」

 ふっと顔を流し、誰もいない方向――前庭の奥へと問いを投げる。

 珠希は一之瀬の横顔を見据える。

「リコンビナント開発室長・久澄調は、命令通り断罪に処しました」

「残りの二人は?」

「……」

 悔しそうに、珠希は俯いて目を細める。

 残りの二人とは、高柳と香田のことだ。珠希は彼らを殺さなかった。殺したのは、彼らのサンプリングを終えた久澄だ。

 一之瀬は、きっとその事実を知った上で問うているのだろう。一体どうやって知ったのは定かではないが、詰問の様子からそう取れる。

 ふー。一之瀬は息を吐いた。

「……二人を殺したのは久澄だ」

 たまりかね、晴道は代わりに答えた。ぱっ、と珠希が顔を上げる。

 そして晴道は思わず口走った。

「久澄も死んでないんだろ」

 言い切った瞬間、晴道はぞくりと悪寒を覚えた。

 一之瀬の無感情な瞳が、こちらをまっすぐ見つめていた。

「晴道!? どういう意味ですか!」

「……」

 晴道は無言に落ちた。

「何でそう思う」

 威圧的な声が響く。晴道の予測を肯定も否定もしないまま、一之瀬はその予測の理由を問うた。

 晴道は気圧されながらも、自分が確かに見たモノを吐き出した。

「あれはリコンビナントだ」

「……」

「断罪銃の弾丸を受けた後、あれは言った――『創造者クリエイター』って」

 そう、それはリコンビナントが呟き続ける単語の一つだった。自分の生みの親、久澄を求めて発す言葉だ。

「そんな、たったそれだけの根拠でそのような判断に至ったのですか!?」

 案の定、珠希は食いかかる。

 しかし晴道は彼女を差し置き、じっと一之瀬の返事を待った。

 表情は窺えない。しかし、わずかに細められた切れ長の双眸から、射るような視線が放たれているのは確かだ。

 値踏みでもされてるみたいだ。視線に射ぬかれつつ、晴道は思う。

 突如、一之瀬は人差し指を擡げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ