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5章の16
爆発は起こらなかった。
「っなんで!?」
千景は絞り出すように喚いた。
「なんで止めるの!?」
徐々に、彼女を縛る力が弱まる。縄をほどくように、四肢の束縛が消えていく。
「何で……何で、沖田……くん」
束縛が緩んでいくに伴い、千景の声が切れ切れになる。目を細く開き、虚ろな顔で空を仰ぐ。
晴道は銃を下ろし、千景へと答えた。
「それは……罪だから」
「……」
千景は目を閉じた。その瞬間に彼女の身体が地面に崩れ落ちる。
晴道は慌てて駆け寄り、力無く横たわる千景を抱きかかえた。
「千景……」
聞こえただろうか。俺の意思。
眠るように目を閉じている少女へ、晴道は切ない視線を送る。
裏切ったと思われただろうか。途中から常軌を逸していたとはいえ、千景は意思を貫き通すために行動し続けていたんだから。
意思……正義。
怒りが千景を変えた。殺さないという俺たちの正義は、千景の中で憎悪に塗りつぶされてしまった。
殺意に隠れ、見失われてしまった正義。
それなら俺が正せばいい。
もう一度千景に取り戻させればいい。
俺たちは、同じ正義を……想いを持つ同志なんだから。
「……」
晴道は小さく微笑んだ。
しかしそこへ。




