5章の11
くの字に折れた白衣が視界を斜めに通り過ぎた。
どさっ、と、白衣の影が芝生の地面に倒れた。
晴道は足元を見る。
驚愕に震える瞳を、微笑みが迎えてくれた。
「久澄」
彼の左胸には、穴が開いていた。そこからは血が出るでもなく、しかし明確なる命の侵蝕を示すかの如く、黒い闇が覗いている。
断罪銃の銃創だった。
断罪は遂げられた。晴道がそう理解するのを待たず、久澄調の身体が崩れ始める。
その最中、彼の唇が動いた。
く り え い た ー
呟かれた言葉が晴道の思考を揺さぶった。
創造者?
「久澄っ!?」
しかし問いを発する間もなく、その名の人物は消失した。
人物――――?
その時、がしゃ、と金属の擦れる音が立った。
導かれるように顔を上げた瞬間、銃口とピタリと目が合った。
混乱に溢れた思考では反応が追いつかなかった。
あぁ。さっきの音は断罪銃の弾倉を交換した音だったんだ。
そんなしょうもない認識が巡る間に、二呼吸分の猶予はとうに過ぎ去っていた。
「消え去りなさい、晴道」
金色の銃を手にした少女が、静かな死刑宣告を言い渡す。
罪を断つという名を持つ銃が、三度目の火を噴いた。
だが、断罪を否む少女はとうに反応していた。
守るよ。
銃声と同時、すさまじい爆発が起こった。まるで怒りそのものが爆弾と化したように、尋常でない勢いの爆風が吹き荒れる。
「っ……!」
晴道は耐えきれず、膝をついた。身を低くしても、地をはいずり回る暴風が容赦なく身体を引き倒そうとする。土煙に侵され視界もままならない。
こつっ、と膝に硬質な感触を覚えた。
「?」
土煙に巻かれながら、自分のすぐ前の地面を見る。そこには、思ってもみなかった物が転がっていた。
芝生の深緑に映える金。土煙の中でも異様なまでに存在感を主張する。
「断罪銃」
晴道は思わずその銃を拾い上げた。ずしりとした重みが両手にかかる。銃身の発する熱は、発砲の直後のせいだろう。
爆破の衝撃で珠希の手から弾け飛んだ。そう察するに難くなかった。
とっさに手にしてしまったが、晴道はこの銃をどうしていいかわからなかった。
「撃てって言うことなのか……?」
と、
「……裁かれるべきはどっちだよ」
静かな声が、すぐそばから聞こえた。
「千景?」
見回すが、姿は窺えない。
「撃ったよ、あいつ。罪人を〝死なせないため〟に、四堂ミラを。さすが早撃ち? 銃を取り換えてから一瞬も無かったよ。それで沖田くんの気も引き付けられたし、後はまた銃を変えて、バンって……なにそれ」
「……」
「仲間、撃ったんだよ? 正義とか喚きながら。なに? 役目のためなら仲間が傷ついてもいいの?」
その声は、次第に震えを増していった。
「千景っ……」
「っ、殺すためにある正義って何なの!?」
晴道の両手ががしりと掴まれた。




