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5章の6

「まもるためだよ」

「まもる?」

 怪訝に繰り返した珠希。

 千景は言った。

「自分たちの命と意思を、まもるためだよ」

「……」

 対峙した少女たちは、互いに強い視線で見つめ合っている。

 それに載る意思はしかし、根本から質を違えている。

 珠希は唇を開いた。

「あなたの後ろにある命は、今や守るべき命ではありません。そしてあなたの意思とやらも完全に間違っています」

 淡々と発し、千景の言葉を真っ向から否定する。

「真に正しいのは、オルタの掲げる正義ただ一つです!」

 言い放つと同時、珠希から射撃を仕掛けた。

 右腕一本で照準を定め、反射としか思えない速度で引き金を引く。

「だから〝それ〟からまもるんだよ!」

 千景は血液チューブを放った。

 一挙に三本。空中で軌道が修正され、三方向から珠希へ迫る。

 爆発。

 時間にしてほんの一瞬。細胞傷害の銃弾は爆破の衝撃で軌道を曲げられたのか、またも誰にも命中しなかった。

 珠希は悔恨滲ませた瞳で千景を睨みつけた。

「さぁ、そこを通してよ。私と沖田くんは橋を渡るんだから」

 要求は完全に脅迫と化している。千景は新たに取り出したチューブを掲げ、珠希へと突き出した。

 ぎり、と珠希は歯を軋ませた。

「……罪人がまた……社会を歪ませる」

 それを阻まんがために、自分は存在しているのに。珠希の絞り出すような呟きは、その痛切な想いを直に伝え来た。

 ちくりと胸が痛んだ。

 変異種は、存在自体が罪である。

 しかしその定義はオルタが勝手に定めたものだ。オルタの理念に異論を抱く晴道に、頷く義務は無い。

 珠希に罪人であると言われようが、関係無い。例え今ここで千景と〝罪〟を紡ごうが、そこに真の罪悪感を覚えることはないのだ。

 正しいのは俺たちだ。

 俺たちの意思だ。

 だから珠希、そこをどいてくれないか。

「――――どこまで間違っているんだ」

 呆然とこぼされた呟きが晴道の耳朶を突いた。

 発したのは、珠希では無い。珠希自身も怪訝そうな顔で声の主を振り向いた。

 更紗だった。

 彼女は珠希とは全く違った方向を見つめながら呆然と立ち尽くしていた。

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