4章の4
巻き起った爆風が体を真下に押さえつける。
「!」
「たガッ」
リコンビナントの短い断末魔が爆風の向こうで聞こえた。
衝撃の残渣に空気がびりびりと震えた。
その震えを感じつつ晴道は、上にのしかかっていたリコンビナントの姿が消失していることに気付いた。
「な……何だ」
徐々に振動が静まり、静寂が舞い戻る。
突如起こった事態が理解できないまま、晴道は身を起こした。
と、その時、近くでかしゃりと音が立った。コンクリート片を踏みつけた音だ。
晴道はその方向を向いた。
闇はまだ、完全に満ちてはいない。かろうじて残された視覚が、その人物の姿を認めた。
「……」
「……」
二つの無言が、視線と共に交錯する。
誰だ?
晴道は眉をひそめた。
瓦礫の影から現れたのは、一人の少女だった。
晴道は彼女の顔に見覚えがある気がして仕方がなかった。そしてそれを裏付けるように、彼女の来ている服は晴道の通う高校の制服だった。
少し装飾の入ったセーラー服。薄暗い視界でも、見間違うはずがない。
晴道もまた制服姿。故に少女も同じ疑問に晒されているのか、怪訝そうな顔でこちらを窺い見ていた。
先に何かに思い当ったのは少女の方だった。
「もしかして、二組の沖田晴道くん?」
「え? そう……だけど」
「やっぱり!」
彼女はにこっと笑顔になると、軽い足取りでこちらに近づいてきた。
わずかに吊った目に、きりっとした眉。少し癖のある髪を耳のあたりで小束に結っていて、歩む度にふわふわ揺れる。
少女は晴道の前まで来ると、立ち止まって視線を擡げてきた。
「……」
彼女のまなざしは、珠希とはまた違った意味の力強さを持っていた。
「私は萩原千景。クラスは二年六組だよ」
「えぇと、萩原さん」
「千景でいいよ」
「じゃあ……千景。……」
何から問うていいのかわからない。
咲浜アイランドにいる理由。半壊した第一病棟で何をしていたのか。爆発現場の真っただ中でどうして平常心を保っているのか。
晴道が心の中で唸っていると、彼女の方から問うてきた。
「沖田くん、確か交通事故で入院してるって聞いてたけど、この病院だったの?」
「ああ」
事実に首肯する。
そしてその後、何やら怪訝そうに視線を流した千景の言葉に目を見張った。




